2021年3月21日

質の高い睡眠こそ、パフォーマンスを上げる!巨人・桑田真澄コーチ、青学・原晋監督が徹底討論

 スポーツと睡眠における研究の第一人者である早稲田大学スポーツ科学学術院准教授の西多昌規さんは、高反発マットレスで知られる「ライズ TOKYO」との共同研究もなども行っています。スポーツと睡眠にはどのような関係があるのか、質の高い睡眠とはどんなものなのか。

 プロ野球・巨人軍のコーチに就任した桑田真澄さんと、青山学院大学陸上競技部 長距離ブロックの原晋監督をゲストに迎え、「スポーツにおける睡眠・コンディショニングとは」と題したオンラインカンファレンスが開催されました。

良い選手は睡眠時間の確保も上手

 睡眠とコンディショニング。多忙なビジネスパーソンにとっても、ランニングや筋トレで体を鍛えている人にとっても気になるテーマでしょう。

 寝ることには現役時代からこだわっていたという桑田さん。日米を問わず、トップの選手たちは、よく練習して、よく食べて、よく寝るという印象があったと言います。

「食事をしてすぐ寝てしまうと、目覚めが悪い、起きたときに体が重いという経験が何度かあったので、食事と就寝の時間をなるべくあけるようにしていました。あとは入眠しやすいように半身浴をしてからベッドに入るということもしていましたね。アメリカは、東西で時差がありますし、移動の時間も長いのですが良い選手は移動の時間でも上手く眠っている印象があります。練習のときもグラウンドで眠そうにしているのは、レギュラーではない選手だったりするんですよね」

▲写真左から、桑田さん、原さん、西多さん

 就寝前の入浴をすると入眠しやすく、質の高い睡眠につながると、西多さんも推奨します。

「人間は体の深部体温が急激に低下するときに眠気が強くなります。ですから、入浴で深部体温を少し上げてから、ベッドに入れば自然と眠くなるのです。このとき、体は放熱する必要があるので、必要以上に厚着をしたり、体が深く沈んでしまうようなマットレスを使っていると熱が逃げにくくなってしまいます。当然、体が冷えていると体は熱を生む方向に向かうので入眠はしにくくなります。眠る前に冷たいものを飲んだり食べたりするのは、おすすめできません」

 原さんは学生たちに、睡眠をしっかりととること、規則正しい生活をすることが長距離選手としてのパフォーマンスアップに不可欠だと指導されているそうです。

「練習で追い込んだ体をしっかりとリカバリーするためにも睡眠時間を十分にとるようにと学生たちに言っています。合宿中であれば朝練の後や、午前練習の後に、仮眠をとったりもしています。あとはなるべく寝る前にスマートフォンを見ないこと。ブルーライトを浴びると交感神経が優位になって眠れなくなってしまうよといったことも伝えていますね」

 陸上競技部 長距離ブロックの学生たちが生活する町田寮には、原さんお気に入りの高反発マットレスも導入。睡眠の質を高めることにも気を遣っています。

「1日の睡眠時間はおよそ8時間。1日の3分の1にあたる時間です。この8時間の質を高めることはとても大切だろうと思うんです。以前、菅平での合宿の際に利用した草笛山荘で出合ったのが町田寮に導入した高反発マットレスです。朝起きたときの体の感覚が全く違って、とても驚いたんです。こんな良いマットレスがあるなら誰か早く教えてよと(笑)。早速、町田寮に導入したのですが、学生たちからの評判も非常に良いんですよ」

質の高い睡眠がパフォーマンスに直結する

 体をリカバリーさせるために睡眠はとても大切。アスリートのパフォーマンスアップにも絶対に欠かすことができない要素だと西多さんは言います。

「睡眠は細胞の修復、学習・記憶の固定、感情・情緒の安定、免疫機能の維持、循環器系の健康の維持に欠かせないと言われています。睡眠が不足していたり、質が低ければ、これらに問題が生じる可能性があるということです。たとえばIOC(国際オリンピック委員会)は8時間30分〜9時間30分の睡眠を推奨しています。また、睡眠時間が少ないとトレーニング中にケガをする確率が高くなるというデータや、大学のバスケットボール 選手に40日間毎晩10時間ベッドに入ってもらった結果、ダッシュのスピードやシュート成功率が向上したという研究報告もあります。ほかにも睡眠不足の状態と十分に睡眠が取れた状態を比較するとテニスのサーブ成功率は後者が圧倒的に高いといった研究結果もあります」

 桑田さんも、登板日を睡眠不足で迎えないように心がけていたのだとか。

「前日に眠れないというのが凄く嫌だったので、登板予定日の2日前に長く寝るようにしていました。そうすれば、もし登板前日に眠れなくても昨日寝たから大丈夫だと思えるからです。そう思えると案外、前日もすっと眠れて。結果的には寝不足で投げるということはありませんでした。現役時代プレッシャーのかかる試合を何度も経験させてもらえましたが、そういった試合で結果が残せたのは、十分に眠れていたからなのだろうなと思います」

 スポーツに取り組んでいる学生たちにも睡眠を大切にしてほしいと桑田さん。

「トレーニングで破壊された筋肉が回復するのにも、練習したことが脳に定着するのにも睡眠が重要だと言われています。ライバルに追いつき、追い越すためにも質の高い睡眠を心がけてほしいですね。僕もお気に入りのマットレスと枕をトレーニングキャンプに持ち込んで、なるべく質の高い睡眠がとれるように気を遣っています」

 原さんも今まで以上に睡眠の重要性を学生たちに説いていきたいと言います。

「西多先生の話を聞いて、睡眠の重要性を再確認できました。私自身、これからも勉強を続けて、学生たちに正しい情報を伝えていきたいと思います」

 日々、スポーツに励んでいる皆さん。睡眠にもこだわっていきましょう!

<Text:神津文人>