ヘルス&メンタル
2025年4月16日

ADHDに“顔つきの特徴”はあるのか?表情や見た目に関する俗説と科学的見解 (1/2)

「ADHDのある人は“顔つきでわかる”」──こうした言説を目にしたことがあるかもしれません。しかし、ADHD(注意欠如・多動症)の診断は、あくまで行動観察や問診、標準化された評価ツールに基づいて行われるものであり、顔つきや見た目で判断されることはありません

一方で、ADHDの特性として、注意の切り替えの難しさや衝動性、感情の調整の困難さなどが表情や身体の使い方に影響を及ぼすこともあります。これにより、他者からは「表情が乏しい」「視線が不安定」などの印象を持たれることがあるかもしれません。

本記事では、「ADHDと見た目の関係」について、医学的な視点とともに、俗説との違いや誤解のリスクにも触れながら解説していきます。監修は、順天堂大学医学部の非常勤講師で株式会社土屋 顧問、千葉ロッテマリーンズのチームドクターとしても活躍する、雪下岳彦(ゆきした・たけひこ)医師です。

ADHDは見た目だけで判断できるのか?

結論から言えば、ADHDは見た目だけで判断することはできません

ADHDの診断はDSM-5やICD-11といった国際的な診断基準に基づき、問診や行動観察、スクリーニングツールなどを用いて総合的に行われます。外見や「顔つき」は診断基準に含まれていません

また、医学的にも「ADHDの人はこういう顔をしている」と断言できるような特徴的な顔つきは確認されておらず、そのような見方は偏見やスティグマ(社会的な烙印)につながるおそれがあるため、慎重に扱うべきです。

ADHDの特性が表情に影響を与えることはある?

ADHDの人の中には、以下のような表情や目の動きの傾向が見られることがあります。ただし、これらはあくまで一部の例であり、全ての人に当てはまるものではありません。

視線が不安定になる(目がキョロキョロする)

注意の持続が難しいため、視線が周囲を頻繁に移動することがあります。

表情が乏しく見える/急に変化する

感情のコントロールが難しい場合、表情の一貫性に欠けたり、突然変わったりすることがあります。

口が開きがちになる

注意散漫や低覚醒傾向、あるいは併存する鼻疾患や姿勢の影響により、一部の人において無意識に口が開いているように見えることがあります。(こうした傾向は特に子どもの場合に見られることが多く、成人ではあまり目立たないこともあります。)

顔の筋肉がこわばる、緊張して見える

過集中や不安によって身体がこわばることで、顔の動きも硬くなることがあります。

眠たそうに見える、まぶたが重く感じられる

注意力の低下や疲れやすさによって、表情にだるさが出ることもあります。

これらはあくまで一部のケースに見られる“行動傾向の副産物”であり、顔つきとは無関係です。

なぜADHDだと「頭がごちゃごちゃ」するのか?その理由と整理方法

次:なぜそのような表情が現れるのか?

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