インタビュー
2017年6月30日

“床バレエ”エクササイズで、しなやかなカラダに【バレエダンサー竹田純インタビュー(後編)】

 床に座った状態でバレエの動きを行う床バレエ。日本ではあまり知られていなかったこのメソッドを広めたのがバレエダンサーの竹田純さんです。

 インタビューの前編では、バレエとの出会いやフランスに渡ったときの話について語っていただきました。そして後編では、床バレエについて話を伺います。

これほど股関節を使うエクササイズはなかなかない

ーー床バレエのことはどういう経緯で知ったんですか?

2003年にフランスに渡って、現地のバレエ学校に通ったときですね。床バレエのことをフランスでは「バーオソル」って呼ぶんですけど、ある先生が「今日から週に1回バーオソルをやります。なぜなら君たちは筋肉の使い方が全然わかっていないから」とレッスンに組み込んできて。そのときはけっこう面食らったんです。だって、こっちだってバレエをやってきた経験が一応あるわけだから。でも、実際にやってみたらすごく難しかったの。ここまでカラダを動かさないといけないのかと思うようなことも多くて。

——フランスでバーオソル(床バレエ)は、どのような位置付けのトレーニングなんですか?

簡単に説明すると、バレエダンサーの基礎練習と考えてもらうとわかりやすいと思います。さまざまな動きがあって、その中からセレクトすることで準備運動にもなるし、ストレッチにもなるし、筋トレにもなるっていう。

——他のエクササイズに比べてどこが優れているのでしょうか?

バレエの大きな特徴として、伸ばしたり縮んだりという動きがすごく多いんだけど、立ったままの姿勢でやろうとするとバランスをとることが優先になってしまうの。でも、それを座ったり、寝た状態でやることによって、肩と腰の位置が安定するからより筋肉に意識を向けられるようになるんです。そして何より、ここまで股関節を使ったエクササイズはなかなかないと思いますよ。

——股関節ですか?

そう。あと骨盤。そのあたりって体の芯になる部分だから、しっかり鍛えることによってカラダのバランスが良くなるんですよ。

——トレーニングを続けることでどういった変化があったんですか?

大きく変わったのは筋肉のつき方。それに身軽になりましたね。あと、カラダに対してより意識がいくようになったんですよ。もちろん今までも考えてなかったわけではないんだけど、踊らなきゃ踊らなきゃっていう意識が強かったのね。でも、もっと身体的というか、次にこういうふうに動いたら気持ち良いだろうなというのが自然とわかるようになりました。

——そもそもバーオソルはフランスで一般的なんですか?

バレエをやっている人のなかでは当たり前のように浸透していますね。どちらかというと、プロダンサーより普通の人の方がバーオソルに取り組むことが多いくらい。

——でも、日本ではそういう情報はあまり入ってこないですよね。

おそらくですけれど、これまでもフランスに留学したバレエダンサーの方はたくさんいたと思うんですけれど、それを体系化して日本で教えていこうと考える人はあまりいなかったんじゃないかなって。現に今でもバーオソルだけのレッスンをやっている教室ってそこまで多くないですし。

床バレエを始めて1年後には本格的なバレエに挑戦できる

——レッスンを始めてからどれくらいで変化が表れ始めるのでしょうか?

僕が教えている教室では誰でもできる初級からバレエダンサーが実践する上級のものまで7つのコースに分かれてるんですけど、週に1回のレッスンを続けて3ヶ月くらいで自然と姿勢が良くなっていると思います。多分、1年くらいあればバレエの基礎的な動きを身につけられるくらいにはなっているんじゃないですかね。実際に床バレエで自信をつけて本格的なバレエのレッスンをスタートする人もいますから。

——床バレエで自信をつけて、そこから本格的なバレエに取り組むという流れができるのが良いですね。

バレエっていろいろ大変なんですよ。本来使わない筋肉も使うし、足のステップも難しいし。だから、挫折してしまう人が多くて。でも、床バレエで基礎的な動きを身につけた後であれば、ある程度のレッスンにはついていけるようになるから、バレエ入門としてすごく良いんですよ。実際、いちばん簡単なレッスンだと80歳くらいのおばあちゃんが来てますから。

——運動が苦手な人にも良さそうですね。

そうそう! あとリハビリにも良いと思いますよ。本当に幅広い人が体験できるエクササイズだなとあらためて思いますね。

——では最後に、これからの展望について教えてください。

今やりたいと思っているのは、床バレエのインストラクターを増やすことかな。それをまず関西・名古屋・東京で展開しようと思っています。床バレエというものを広く知ってもらうためには、僕ひとりだけだとやっぱり限界があるので。担い手を増やしていきたいですね。

——資格みたいなものを作るんですか?

そうですね。これから半年くらいでその準備ができればいいかな。それができたら、自分の舞台をやりたいです。やっぱり僕は表現することが大好きなので。

【プロフィール】
1982年静岡県生まれ。バレエダンサー・床バレエ講師。1999年に I・R・Mアカデミーでバレエを始め、2000年に東京バレエ団に入団。2003年にフランスへ渡り、クラシックバレエ、コンテンポラリーダンスを学ぶ。その後、数多くのバレエ団に所属し、現在はバレエダンサーとしてだけでなく、バレエ・床バレエの講師としても活動。2011年に発売した『バーオソル・ダイエットーバレエダンサーのしなやかな身体の秘密』(講談社)がベストセラーに。 続く2012年に発売した『1日10分でやせられる バーオソル・ダイエットDVD BOOK ―バレエダンサーのしなやかな身体の秘密―』(講談社)DVDは、バレエの殿堂でもあるパリ・オペラ座ガルニエ宮でも販売されている
【床バレエについて】https://www.yukaballet.jp/
【講師を務める床バレエ教室】http://www.wingtheater.jp/meguro

<Text:村上広大/Photo:冨田寿一郎>