2025年11月26日

機能不全家族で育った大人の特徴と、「アダルトチルドレン」6タイプ

「生きづらい」「人と深く関われない」「常に自分を責めてしまう」

もしかするとその背景には、幼少期の家庭環境が関係しているかもしれません。

親との関係や、家族内での役割、愛され方──それらが心の深い部分に影響を残し、大人になった今もなお、自分の行動や考え方を縛っている場合があります。

「機能不全家族」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、家族として本来果たすべき役割が十分に機能していない家庭のことを指します。

機能不全家族で育った人に見られる特徴と、後半ではアダルトチルドレン(幼少期の家庭環境が原因で課題を抱えやすい人)のタイプについて、専門家の意見をまとめていきます。

機能不全家族とは

監修者プロフィール

神谷町カリスメンタルクリニック院長
松澤 美愛先生

東京都出身。慶應義塾大学病院初期研修後、同病院精神・神経科に入局。精神科専門病院での外来・入院や救急、総合病院での外来やリエゾンなどを担当。国立病院、クリニック、障害者施設、企業なども含め形態も地域も様々なところで幅広く研修を積む。2024年東京都港区虎ノ門に「神谷町カリスメンタルクリニック」を開業、院長。精神保健指定医/日本精神神経学会/日本ポジティブサイコロジー医学会
URL https://charis-mental.com/
InstagramURL https://www.instagram.com/charismentalclinic

機能不全家族とは、子どもの健全な成長や情緒的なニーズが満たされない家庭環境を指します。ここで重要なのは、「見た目には普通の家庭」でも、機能不全家族である可能性があるということです。

機能不全家族の特徴

機能不全家族には、いくつかの典型的なパターンがあります。

  • 依存症のある親(アルコール、ギャンブル、薬物など)
  • 虐待がある家庭(身体的・精神的・性的・ネグレクト)
  • 過干渉・過保護が極端な家庭
  • 感情表現が抑圧される家庭(怒り、悲しみを表に出してはいけない)
  • 夫婦関係が破綻している家庭
  • 親が精神的に不安定で、子どもが親のケアをしている家庭
  • 完璧主義や過度な期待がある家庭
  • コミュニケーションが閉鎖的で、家族の問題を外に出さない家庭

これらの環境に共通するのは、子どもが「子どもらしくいられない」ことです。

本来、子どもは安心して甘え、失敗し、感情を表現できる存在であるはずです。しかし機能不全家族では、子どもが親の顔色を伺ったり、親の感情を安定させる役割を担ったり、「良い子」でいることを強いられたりします。

子どもにどんな影響を与える可能性があるの?

幼少期は、人格の土台が形成される重要な時期です。この時期に安定した愛情と安心感を得られないと、以下のような影響が出ることがあります。

自己肯定感の欠如
「ありのままの自分」を受け入れてもらえなかった経験から、「自分には価値がない」という思い込みが形成されてしまうことがあります。

感情の抑圧
感情を表現しても受け止めてもらえない、あるいは感情を出すと家族の平穏が乱れるという環境では、感情を抑え込むことが習慣化してしまうことがあります。

過剰な責任感
親の機嫌を取る、きょうだいの世話をする、家庭の秘密を守るなど、子どもの年齢に不釣り合いな責任を負わされることで、「自分がしっかりしなければ」という思いが刷り込まれる可能性があります。

信頼関係の構築困難
もっとも信頼すべき親から適切な愛情を得られなかった経験は、「人は信頼できない」という信念につながってしまうかもしれません。

これらは、大人になってからも無意識のパターンとして残り、人間関係や自己認識に影響を与え続けるのです。

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機能不全家族で育った大人に見られる7つの特徴

ここからは、機能不全家族で育った人に共通して見られる特徴を7つご紹介します。もちろん環境だけが原因ではありませんが、複数当てはまる場合は、育った環境が影響している可能性があります。

1.「全部わたしのせい」

何か問題が起きると、まず自分を責めてしまう。「自分がダメだから」「自分が悪いから」と考えるクセがあり、自分を許すことが難しい。他人のミスは許せても、自分のミスは許せず、自己肯定感が極端に低い状態が続きます。

2.「嫌われたくない」

相手が今どう思っているか、不機嫌ではないか、自分に対してどう感じているかを常に気にしている。頼まれごとを断れず、本当は嫌でも相手を失望させたくない、嫌われたくないという恐怖から引き受けてしまう。

自分の限界を超えても、他人を優先してしまいます。

3.「いま何を感じているかわからない」

自分が今何を感じているのかわからない。嬉しい、悲しい、怒っているといった感情を認識したり、表現したりすることに困難を感じる。

とくにネガティブな感情を出すことに強い抵抗があり、感情を切り離して生きることが習慣になっています。

4.「失敗したら終わり」

100点でなければ意味がないと感じ、少しのミスも許せない。失敗することで自分の価値が下がると感じ、新しいことに挑戦するのが怖い。

できないかもしれないなら、最初からやらない方がマシだと考え、チャレンジする勇気が持てません。

5.「近づきたいけど怖い」

人と深く関わることに恐怖を感じる。親しくなりそうになると、無意識に距離を取ってしまう。または逆に、過度に依存的になり、相手を束縛してしまう。

適度な距離感がわからず、人間関係が不安定になりやすい傾向があります。

6.「自分はどうしたい? が答えられない」

「あなたはどう思う?」「何が食べたい?」と聞かれても答えられない。自分が何を望んでいるのか、何が好きなのか、自分自身の意見や感情がぼんやりしている。

常に他人の期待に応えることを優先してきたため、自分の軸が見えなくなっています。

7.「わたしなんかが幸せになっていいの?」

良いことが起きても「自分にはふさわしくない」と感じる。褒められても素直に受け取れず、「でも」「いや」と否定してしまう。幸せになることに、なぜか後ろめたさや罪悪感を感じ、喜びを味わうことができません。

これらの特徴は、あなたの性格や能力の問題ではありません。育った環境で身につけた「サバイバルスキル」――つまり、その環境で生き延びるために必要だった適応戦略といえます。

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機能不全家族で育った人に多い「アダルトチルドレン」とは

監修者プロフィール

ともしびクリニック代表医師
江越 正敏先生

佐賀大学医学部を卒業後、病院・美容クリニックでの勤務経験を経て、2020年にファイヤークリニック開業。美容医学、遺伝子学、栄養学、精神医学など肥満治療に関わる多方面から痩身医学研究と実践をする精神科医としても臨床に当たっている。

アダルトチルドレンとは、幼少期の家庭環境が原因で、対人関係や自己評価に課題を抱えやすい人のことを指します。医学的な診断名ではなく、あくまでも個人の状態を理解するための言葉として使われています。

家庭内の状況によりトラウマが生じると、アダルトチルドレンになってしまう可能性があります。

  • 「親からの虐待・育児放棄」等で、家庭が安心できない場所だった
  • 親の期待に応えようとして、自分の感情を素直に表現できなかった
  • 家族が機能不全(両親の不仲・父親が家庭を全く顧みない等)
  • 親が子どもの特性(注意散漫・癇癪を起しやすい等)に気づかず、無理に教育して関係が悪化した など

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アダルトチルドレンは「6つのタイプ」がある

アダルトチルドレンは、6タイプに分けられます。

タイプ1 ヒーロー(英雄)

ヒーローは優等生タイプで、家族の期待に応えたいという一心で努力します。ただし、一度失敗して挫折すると、自己否定の感情を持ってしまう場合があります。

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タイプ2 スケープゴート(生贄)

スケープゴートは、家族の気を引くために、家庭内で問題行動を起こしがちです。問題児として扱われたり、非行に走ったりする恐れがあります。

タイプ3 ロストワン(いない子)

ロストワンは、親を刺激しないように、極力目立たないように過ごしたり、自己主張を控えたりします。大人になっても、自己主張することに恐怖感や苦手意識を持っているケースが多いです。

タイプ4 ケアテイカー(世話役)

ケアテイカーは自分の感情を出さず、献身的に家族に尽くそうとします。

面倒見がよくて周囲からの評価は高いですが、自分を犠牲にしてでも家族や人の役に立とうとしてしまいます。

タイプ5 ピエロ(道化師)

ピエロはわざとふざけたりして、恐怖感や悪い空気をごまかそうとします。常に周囲の雰囲気を察知しようとするため、精神的なストレスを抱えやすいです。

また、本当の自分と他人から見た自分のギャップで苦しむことも多いでしょう。

タイプ6 イネイブラー(世話焼き人)

イネイブラーは、必要以上に人の世話を焼いてしまいます。

たとえば、アルコール依存症の人にお金を渡したり、後始末をしたりするなど、過度な手助けにより、かえって依存症を助長することがあります。

イネイブラーは、「自分の評価を上げる」「自分や相手の人生と向き合うことから逃げる」といった目的のために、世話を焼いていると考えられています。

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<Edit:編集部>