インタビュー
2018年7月2日

スイミングは水が怖くて泣いてばかり。小中学校は野球でピッチャーとして活躍。元プロボクサー山中慎介(前編)│子どもの頃こんな習い事してました #14 (2/3)

野球は「向いてない」と中学のときに思った

――ボクシングとの出会いは?

中学2年か3年のころ、テレビでよくボクシングを見ていて、ボクシング雑誌やマンガを読むなど興味を持ち出し、高校に入学したらボクシングをやろうと決めていました。強い男に憧れることって、中学生男子によくあるじゃないですか。そういう感じでした。中学の卒業文集にも「将来はWBCの世界チャンピオンになりたい」と書いたんです。まだボクシングを始めてもいないのに、そういうことを書くくらい情熱がわいていたんですね。通販でめっちゃ重いサンドバッグを買って、友だちを10人くらい呼んで叩いてました。お年玉で買ったんです。何万円かしたんじゃないかな。

――まだボクシングを始めてもいないのに自信があったんですね。

どうしてかわからないですが、ボクシングは始める前から行けるような気がしたんです。別にケンカに明け暮れていたわけではないんですけど、運動が好きですばしっこいところがあって、気は強いほうだったので、自分ががんばれば結果が出せる一対一のスポーツは合ってるなと思った。逆に、野球に関してはそんなに自信はありませんでした。中学の時点で「体格的に無理だな」と思いましたし、自分がずば抜けている感覚もなかったですし。

ただ、体の使い方がうまかった。それはボクシングを辞めてから改めて思いました。中学の体育の授業で、やったことのないハードルのお手本をさせられましたもん。イメージで、どういうふうに越えたらいいか、コツをつかむのがうまいんでしょうね。球技も全般得意でしたし、野球でも自分の持ってる力を発揮できていたとは思いますね。

そういったところはセンスですよね。能力は並外れているわけではないんですけど、持っている能力を最大限発揮できるかどうかで、上に行けるか決まってくる。ボクシングでも「パンチが強い」といわれていたんですけど、実は筋力の数値的にはそれほどでもない。でも、体の使い方、体重の載せ方、こぶしに伝える動作がうまいのだと自分では分析しています。

――持って生まれた“センス”ということですが、ご家族みなさんスポーツ得意だったんですか?

いや、そもそも両親がスポーツをしている姿を見たことがないし、「得意」ということも聞いたことがなかったですね。親父はサッカーや相撲、母親は陸上をやっていたと親戚から聞きましたが、本格的ではないと思います。姉も高校までバレーボールをしていましたが、スポーツ一家で小さいころから「スポーツをしろ」と言われていたというようなことはまったくないです。

そもそも両親から何をしろと直接言われたことはありません。野球を選んだのも自分ですし、ボクシングも通学に2時間以上かかる高校ボクシングの名門私立高校に進学したいと言ったときも、特に反対もなく「いいよ」と。「危ないからやめなさい」ということもなかった。いつも自分でやりたいことをみつけて、それに向かって努力してきました。

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