野村忠宏が長野県で高校生に部活指導。「自分で意識は変えられる。今より厳しい気持ちを持ち続けて」 (2/2)
続いては、相手の襟をつかむ「釣り手」。釣り手は、より首に近い場所をつかむことが重要です。同じ力でもどの位置を引くかによって、力の伝わり方・強さが全然違うといいます。鎖骨の上辺りをつかむことで、相手をコントロールしやすくなったり、相手の動きを制限したり、相手に圧力を強くかけられたりします。
「私は組んだ時には、常に相手の胸に自分の拳をしっかりつけて手の位置を確認し、ちょっと下がってきたなと思ったら、自分で上げるようにしていました」
全力の「3人打ち込み」で技の決定力を養う
ラストは本日の総まとめとして、2人1組の打ち込みよりも、さらに投げ切るための力を養う「3人打ち込み」に取り組みました。技の受け役の人の後ろに、もう1人支え役がついて引っ張るので、技をかける人は、2人1組の打ち込みに比べて何倍もの力が必要になります。
「強い選手は、技に入ってから最後に決めにいく力がすごい。その力をつけられる練習が3人打ち込み。俺は毎日やっていたわけではないけど、やる時はとことんやったよ」
「受け手と支え手は、技をかけている人が全力でやっているかどうか分かるよな? まだまだいけると思ったら、いけ! いけ! と声をかけて、全力で最後まで投げ切るんだという強い意識を持って取り組むことが大切です」
野村さんの鋭い指摘を受けて、必死に投げを繰り出す生徒たち。皆、みるみるうちに顔が真っ赤になるほど、全身の力を振り絞ってやり遂げました。
そして最後に、野村さんから生徒の皆さんに向けてメッセージが。
「今日は指導時間が90分しかなかったので技術的にはそれほど深いところまで伝えられなかったけれど、真剣に取り組んでくれた皆さんと一緒に充実した時間を過ごす事ができました。君たちが明日から急に強くなるという事はないけれど、今日の出会いをきっかけに、今まで以上に柔道への意識が高まってくれたらうれしいです。意識を変えることで、間違いなく練習の質は上がります。今より厳しい気持ちを持ち続けて、もっと強くなって、いつか日の丸を背負って戦うまでになったら、私とも絶対にまた会える。そんな場所で再会できることを楽しみにしています」
佐久長聖高校柔道部からは、キャプテンの馬場亮君が代表して、「世界の頂点に立った方のお言葉は、一つ一つにとても重みがありました。僕も高校では悔しい思いをしましたが、大学に入ったら野村さんのように全国で勝てる選手になりたいです」と、感謝の気持ちと新たな決意を述べました。
そのほかにも、「引き手の手首の返し方が、とてもためになりました」(1年・伊藤さん)、「努力は決して無駄にならないという、野村さんの言葉が一番心に残りました」(1年・馬場さん)、「今日教わったことを忘れずに、明日から柔道部全体で変わっていきたいです」(2年・新井君)と、皆さん充実感いっぱいの笑顔で話してくれました。
<Text:菅原悦子/Photo:冨田寿一郎>
《関連サイト》
・ポカリスエット エールプロジェクト
https://yellproject.jp/
・野村忠宏さん公式サイト
http://www.nomuratadahiro.jp/
▼前編を読む
「未来の自分に期待しよう。諦めるのはまだ早い」。柔道家・野村忠宏が高校生たちに伝えた"自分自身を乗り越える方法" | 子育て×スポーツ『MELOS』