2018年12月17日

2019年NHK大河ドラマ『いだてん』は、“嘘みたいな本当のエピソードが重なり合う”日本オリンピック史[ほぼ全文レポ] (4/5)

嘘みたいな事実が多すぎて「僕らがつくったネタのように見えてしまうのが悔しい(笑)」

 このあと制作統括の訓覇圭さんが記者団の囲み取材にも応じました。

――嘘みたいな事実、ほかにはどんなエピソードがあった?

第1話に出てきた中では、天狗倶楽部の人たちは服を脱ぎたがる、気が付いたら裸になっている、というのも事実だと思います。実際、裸の写真がたくさん出てきたので。でもどのくらい、すぐに脱いだかは分かりません(笑)。第1話には天狗倶楽部の「TNG」というロゴマークや、応援団が使うような旗も登場しますが、すべて資料が残っています。どう考えても、僕と宮藤官九郎さんがつくったネタのように見えてしまうのが悔しい(笑)。応援歌もあって、歌詞も残っていました。残念ながらメロディは不明だったので、そこは新たに創作したんですが、そんなところにも注目してもらえたら。

――ドラマに登場する資料映像は、すべてNHKで保管しているものを使っている?

NHK以外のものも、たくさんあります。大人数で資料の収集に取り掛かっているため、NHKの資料室にこもりっきりのスタッフもいます。フィルムのある時代の大河ドラマなので、使えるところには資料映像を挿入していくとおもしろいかな、と思っています。

――オープニングにも、相当なこだわりが?

ドラマのゴールを1964年の東京オリンピックの開会式に定めています。そこで田畑さんの笑顔を使いたいな、旧国立競技場のスタジアムも出したいな、といったことを考えて資料映像を選んでいきました。もちろん1964年の東京大会に出場したオリンピアンも。見る人が見れば、あの名選手だって気付いてもらえますよね。これは、人々の記憶に残っている時代を題材に制作するドラマの良さです。あとは背景に流れる、大友良英さんの音楽もカッコいい。

――台本の進行はスムーズに進んでいる?

格闘はしていますが、スムーズです。苦労していることがあるとすれば、出来事は時系列が定まっているということ。この事件、この後に起こっていたらおもしろくつながったのに、ということがあるわけです。史実の魅力が、シナリオを練る上での縛りにもなる。宮藤官九郎さんにとっても、実在の人物を描いていく、というのはチャレンジングな試みのようです。いま2人でやり取りしながら、進めています。

――古今亭志ん生は、東京オリンピックにどれほどの関心があったの?

志ん生さんは、それほど興味がなかったのでは、と思っています。『いだてん』は、オリンピック好き、スポーツ好きの人たちだけに向けたドラマではありません。むしろ少し斜に構えて、距離を置いてながめている人の視線から語っていきたい。だから、興味がないくらいがちょうど良いんですね。

――紀行のコーナーには、毎回、オリンピアンが登場する?

決まりはありません。第1話の紀行には、柔道の井上康生さんが登場しましたが、そこは自由に決めていこうと思っています。

――ドラマには、教科書に出てくるような、時代を象徴する建物もたくさん登場する?

グラフィック技術(VFX)を用いた表現ですが、第1話には浅草十二階(あさくさじゅうにかい)の名称で知られる凌雲閣が登場しました。今後は、ストックホルム大会のスタジアムなども登場する予定です。詳細はまだ決まっていませんが、是非、お楽しみに。個人的には、子どもにも見て欲しいと考えています。歴史はつながっているんだな、という感覚を育んで欲しい。スポーツがテーマなので、子どもにも分かりやすいでしょう。身近なスポーツだけど、このときに始まったんだ、初めはこれくらいの記録だったんだ、日本人は外国人との体格差に驚いたんだ、そんな発見をしてもらえたら。

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