2018年12月17日

2019年NHK大河ドラマ『いだてん』は、“嘘みたいな本当のエピソードが重なり合う”日本オリンピック史[ほぼ全文レポ] (2/5)

「撮りながらワクワクする大河ドラマ。スタッフの目が輝いてる」(中村勘九郎)

▲左から、訓覇圭さん、中村勘九郎さん、阿部サダヲさん、井上剛さん

 記者会見に出席したのは、主人公の中村勘九郎さん、阿部サダヲさん、制作統括の訓覇(くるべ)圭さん、チーフ演出の井上剛さんの4名。訓覇さん、井上さん、そして脚本を担当する宮藤官九郎さんの3人は、2013年に連続テレビ小説(朝ドラ)「あまちゃん」を大ヒットに導いたメンバーです。

 訓覇さんは「膨大な資料をもとに、事実ベースでドラマの制作を進めています。調べた量に自信があります。ストーリーに時代のトリビアを織り交ぜていきたい」と胸を張ります。また、井上さんは「日曜の夜8時に、楽しいドラマをお茶の間に届けよう、と頑張っています。第1話、そうなっていましたか?」と記者団に笑顔を見せました。

▲制作統括の訓覇圭さん

▲チーフ演出の井上剛氏

 記者団から寄せられた質問に、主演の2人が回答していきました。

――これまでの大河ドラマにはない演出になっている?

中村さん:私が以前、出演した大河ドラマは、三谷幸喜さんの『新選組!』(編集部注:2004年放送。主演は香取慎吾)でした。これも斬新な大河で、そういった意味では、通常の大河がどういったものか知りません(笑)。『いだてん』は、撮りながらワクワクする大河ドラマです。スタッフの目が輝いていて、みんな楽しんで作っているのが分かる。これって、一番良いことですよね。

▲金栗四三役の中村勘九郎さん

阿部さん:私はまだ本格的な撮影には入っていないんだけれど、オープニングからして、これまでにない演出になっているでしょう? はじめは「隅田川を泳ぎます」と言われて、何のことか分からなかったけれど、できた映像を見て「なるほど泳いでいるわ」と思いました。第1話には星野源くんが扮する平沢和重さんが、国際的な会議で演説する場面がある。そこへ東京オリンピックの開会式の資料映像が重なって、あぁ、この人がオリンピックを招致した人か、と思うと正直うるっときました。そのシーンに私も登場しますが、良い表情をしたな、と我ながら思います(笑)。

▲田畑政治役の阿部サダヲさん

中村さん:宮藤官九郎さんの書いた本は、それ自体がおもしろいんですが、映像になった第1話は怒涛の登場人物でしたね。時代、場所が次々に変わっていく。すごい1年が始まるぞ、とお茶の間に挑戦状を叩きつける仕上がりです。それでいて後から見返すと、いろんなところに伏線が貼ってあることに気が付いてもらえるでしょう。

――お互いの演技を見ての感想は?

中村さん:ドラマでは(阿部さんを中心とした1960年のメンバーとは)一緒に登場する場面があまりないんです。少しだけ。でも実は、写真が残っていたんですね。金栗さんと田畑さんが料理屋で一緒に写っているものが、こないだ出てきたそうで。これには関係者もびっくりしました。

阿部さん:中村さんは、身体をつくっていますね。別人かと思うくらい、走り込んでいる。そして、なぜか脚本家の宮藤さんも走っている。でもこの前、官九郎さんが職質にあったと聞きました(笑)。

阿部さん:田畑さんには、嘘みたいな本当のエピソードがたくさん残っているんです。あるとき、急いでいるのに渋滞に巻き込まれた。すると、前のクルマを押したらしいんです、速く行けって。

中村さん:せっかちな田畑さんは、タバコの前後も確認しないで、火の点いた方を口に入れたりしていたそうですよね。宮藤官九郎さんの脚本を読んだとき、これをどうやって映像化するんだろうと思っていましたが、このシーンの阿部さんの間合い、完璧でした。

 中村さん、阿部さんは声を揃えて「嘘みたいな本当の話が多く残されているため、これはドラマの演出が過ぎるだろう、と思われそうで悔しい。でも、事実なんです」と繰り返します。例えば第1話のあるシーンで金栗四三が頭から血を流しているように見える場面がありました。これも、帽子の塗料が雨で流れ落ちて血のように見えた、というエピソードに基づいたもの。ただ、それを歌舞伎の隈取りのように見せたのは、演出家の遊び心でした。「隈取りにしたい、と言われたときには『どうかしている。NHK、大丈夫か』と中村勘九郎さんは笑顔で振り返ります。

▲はじめから終わりまで、笑いの絶えない記者会見となりました

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