2019年8月20日

ボートサーフィンって知ってる?│連載「甘糟りり子のカサノバ日記」#35

 アラフォーでランニングを始めてフルマラソン完走の経験を持ち、ゴルフ、テニス、ヨガ、筋トレまで嗜む、大のスポーツ好きにして“雑食系”を自負する作家の甘糟りり子さんによる本連載。

 今回は、夏に楽しみたいスポーツの代表格、サーフィンについて。地元・鎌倉で「ボートサーフィン」を間近に観てきたという甘糟さん。どんなスポーツだったのでしょうか。

江ノ島をバックに目の前でレベルの高い波乗り

 夏の初め頃、ボートサーフィンを見学させてもらいました。

 クルーザーの後ろから人工の波が出て、それに乗る新しいマリンスポーツです。湖で流行り始め、最近では東京湾でもやる人が増えているそう。それがついに鎌倉辺りまでやってきて、先日江ノ島マリーナで乗せてもらったのです。

 船内にはトイレもついているという大きなボートでした。乗りこんだのはプロ・サーファー4名を含む10数人。さっきまで目の前にあった江ノ島がどんどん小さくなって、あっという間に沖合に出ました。気分はほとんどクルージングです。シュワシュワした金色のお酒が出てこないかなあ、なんてつい思ってしまいました。すみません、何しろバブル世代なもので。

 波は大きさもサイドもスイッチでコントロールできるのだそうです。ちなみに、サーフィンでは利き足を後ろにします。左足前がレギュラー、右足前が少数派でグーフィーといいます。私はレギュラー。まあ、年に数回しか海に入らない、なんちゃってサーフィンですが。

 レギュラーかグーフィーかサイドを申告すると、ドライバーがそれにあった方向に波が崩れていくよう調整してくれます。サーファーは水上スキーなどにあるようなロープに手をかけてスタートします。ロープにつかまったままボードの上で立ち上がり、完全に立って波のリズムを掴んだら、それを離します。後は通常のサーフィンと同じ。波が崩れる前に進んでいく、という感じでしょうか。通常のサーフィンと違うのは、サーファーがボードから落ちない限り、ずっと波に乗れるというところ。理論的には永遠に波が途切れないですからね。

 この日は3人のプロ・サーファーがデモストレーションをしてくれました。彼らもボートサーフィンは初めてのようで、いかに素早くボードに立つかをアドバイスしあっておりましたよ。ロープを持たなければなりませんから、パドリングはできません。ボードを波に滑らすタイミングがポイントなのかしらん。初心者の考察ですが。

 これはプロがいっていたのですが、いざ波に乗ったら、ボートにぶつかるぐらい前進していくのがコツだそうです。そうしないと置いて行かれてしまうんだって。逆にいうと、船の上から見ていると、波に乗るサーファーがこちらに迫り来る感じでした。江ノ島をバックに目の前でレベルの高い華麗なる波乗りが繰り広げられ、いいもん見たなあという感じ。これでシュワシュワした金色のお酒があれば……、ってしつこいか。360度くるっと回転する技も、ほんの目と鼻の先で見られました。

 私の家は海から歩いて5分ですが、今となっては、海に入るのは年の数回というていたらく。下手なりに波の乗って滑る気持ち良さは実感しているのですが、何しろサーフィンは波次第。鎌倉界隈はまったく波がなくて、やる気はあってもできない時があるし、逆に私が入っている稲村ケ崎は立つと大きなサイズで初級者には危ない時もあるし、わりとタイミングがむずかしいのです。じゃあ、ボートサーフィンいいじゃない! と思いたいのですが、ロープを持ってそれに引っ張られながら、立ち上がることができるだろうか、私。でも、機会があれば、やってみたいです。

 海のそばで育った私は、サーフィンするのはたまにですが、海が大好きです。潮の匂いや波の音のない暮らしは想像できません。それらに触れると、気持ちがほぐれます。海ともっと仲良くなりたいなあ。ボートの上から華麗なサーフィンを見て、そんなことを思いました。

[プロフィール]
甘糟りり子(あまかす・りりこ)
神奈川県生まれ、鎌倉在住。作家。ファッション誌、女性誌、週刊誌などで執筆。アラフォーでランニングを始め、フルマラソンも完走するなど、大のスポーツ好きで、他にもゴルフ、テニス、ヨガなどを嗜む。『産む、産まない、産めない』『産まなくても、産めなくても』『エストロゲン』『逢えない夜を、数えてみても』のほか、ロンドンマラソンへのチャレンジを綴った『42歳の42.195km ―ロードトゥロンドン』(幻冬舎※のちに『マラソン・ウーマン』として文庫化)など、著書多数。『甘糟りり子の「鎌倉暮らしの鎌倉ごはん」』(ヒトサラマガジン)も連載中。近著に『鎌倉の家』(河出書房新社)『産まなくても、産めなくても』文庫版(講談社)

<Text & Photo:甘糟りり子>