2020年8月3日

ランナー目線で読みやすい『無理なく走れる<気>ランニング』│スポーツがしたくなる今月の1冊

 ランナーにとって、夏はマラソン大会が少なく、オフシーズンにあたります。秋以降のレースに向けて、トレーニングに取り組んでいる方は多いでしょう。暑いと熱中症や脱水などの危険がありますし、ランニングも質を重視したいところ。中にはこの夏を使い、ランニングフォームの改善を目指されている方がいるかもしれません。そんなランナーに向けて、今回は『無理なく走れる<気>ランニング』をご紹介しましょう。

チーランニングの基本を知る

 本書の原題は、CHIRUNNING(チーランニング)。以前、MELOSでもその『チーランニング』について取り上げました。その際にお話を伺った日本唯一のインストラクター・中島貴裕さんも、そのメソッドを知るために本著を読んだと言います。

《関連コンテンツ》
・日本で唯一のチーランニング公式インストラクターに聞く“走力レベルアップ”のポイントhttps://melos.media/training/3567/
・怪我に悩んでいるランナー必見!重力を味方につけて楽に走る「チーランニング」とは?
https://melos.media/training/3456/

 本書ではチーランニングの基本的な考え方や原理、また具体的なテクニックなどについて書かれています。さらにそれだけでなく、トレーニング計画やレースへの取り組み方についても触れており、とても実践的な内容です。

 もちろん本を読むだけで、チーランニングのすべてを理解することは難しいでしょう。しかし、これからランニングに取り組むうえで、何らかの“気付き”を得るには十分な内容と言えます。

写真・イラストで分かりやすく解説

 チーランニングについて初めて触れる方にとって、そのメソッドには疑問が尽きないでしょう。私も本著を初めて手に取ったとき、それまでの自分の走り方との違いに驚きました。しかし本著は、そうした読者の思いを想定して作られているように感じます。

 基本的には文章中心の構成ですが、必要箇所には適宜写真やイラストが添えられています。例えば“正しいランニングフォーム”について触れる際、どうしても言葉だけで伝えきれない部分があります。これをイラスト化することで可視化し、頭の中でイメージしやすくなっているのです。他にも、チーランニングを習得するためのトレーニングや動きのチェックポイントなど。読者目線で必要となる部分には、しっかりと写真・イラストが盛り込まれています。

 そのため、「ノウハウ本はいまいち内容が理解しきれないから苦手」などという方でもすんなり読み進められることでしょう。特にランニングフォームや実践トレーニングは、該当ページを開きながら、自身の動きと見比べてみることをオススメします。

ランナーによる翻訳と監修

 そもそも、チーランニングはアメリカ発祥のメソッド。そのため、本書もその提唱者であるダニー・ドライヤーが中心となって執筆したものです。これを翻訳したのが本書なのですが、ときに翻訳文が分かりにくかったり、読者目線とは違った訳し方がされていたりすることがあります。

 しかし本書は、自身もサブスリーの記録を持つ翻訳者。さらに解説者などでも活躍されている、金哲彦氏が監訳を行っています。そのためランナー目線で読みやすく、理解しやすい内容にまとまっており、違和感なく読むことができるでしょう。これまでの走りを変えたい、あるいは改善できない課題を抱えている方にとって、活路を見出す1冊になるかもしれません。

[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.comhttp://www.run-writer.com

<Text:三河賢文/Photo:Getty Images>