2023年12月5日

免疫力アップ、結局なにすればいいの?医師がリアルに意識しているポイント (2/2)

1.腸内環境を整える

小腸にはパイエル板と呼ばれる免疫器官があり、そこにはT細胞やB細胞、NK細胞など多くの免疫細胞が集結して、病原体やウイルスと戦っています。

大腸には膨大な腸内細菌叢(フローラ)があり、病原体が増殖するのを妨げ、消化を助けるほか、人体に必須の栄養素を作り出すなど、人体に有益な働きをしています。

フローラは免疫にも大きく関係しており、そのバランスが良いと免疫が適正に働き、フローラが乱れると自己免疫疾患が引き起こされ、体に良くない反応が起きます。

腸内環境を整えることは健康を維持する上でとても大切です。

\もっとくわしく/
人間には1.8兆個もの免疫細胞があり、病原体から身を守るために働いています。好中球やNK細胞は、病原体と認識したら即座に攻撃する“自然免疫”を司ります。

ワクチン接種が有効なのは、病原体を記憶するメカニズムがあるから。樹状細胞とリンパ球のT細胞が司令塔となって、B細胞が抗体というタンパク質を作って感染を防ぎ、感染した細胞をT細胞が攻撃して殺します。

これを“適応免疫”と呼びます。免疫細胞はほぼすべて骨髄で作られ、リンパ節や脾臓といったリンパ組織や、胸腺で教育を受け、さまざまな担当部署に配属されます。

消化管は口から食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、そして肛門と1本の管であり、口と肛門は開いていることから、消化管の中はある意味体外ともいえます。

食べ物にはウイルスや細菌、真菌(カビ)などの病原体が付着しています。栄養素と一緒に病原体を取り込んでしまうと病気になるので、消化管には表面を覆う粘液、そしてさまざまな免疫細胞や抗体が存在し、防衛しています。これを「腸管免疫」と呼びます。

2.血流やリンパの流れをよくする

血液やリンパの流れが良くなると、リンパ球などの免疫細胞が体内を移動しやすくなります。結果として病原体を発見し、働きかける反応が向上します。

そのためにおすすめなのが、軽い運動を行うこと。運動による体温上昇も免疫細胞の活性化に役立ちます。毎日なるべく湯船に浸かって血行を促し、身体を温めてから就寝するのもおすすめです。

\さらにくわしく/
身体の細胞を酸化させてしまうおそれがあるタバコは、免疫細胞の働きを抑制し、血管が収縮して血流が悪くなり、血管壁を傷つけることで血管を老化させます。

さらに、煙に含まれる一酸化炭素は、体内で酸素を運搬する役割のヘモグロビンと強く結合して酸素運搬能力を奪い、体内を酸欠状態にしてしまいます。

3.自律神経を整える

自律神経は免疫細胞にも働きかけ、その機能を制御しています。よって自律神経を整えることは免疫を健やかに保つ上で重要です。

睡眠不足や体内時計の攪乱は自律神経の機能を低下させます。毎晩、なるべく決まった時間に寝て起きる。成人は7時間ほどの睡眠時間を確保し、良質な睡眠をとることが望ましいです。

運動習慣は自律神経の働きを正常化する上で役立ちます。

運動というと、マラソンやジムでの激しいトレーニングが必要では?と考えがちです。健康に良い運動は、ジョギングであれば、一緒に走る人と会話が出来るくらいのスピードで、また時間も30分以内が良いとされています。

筋トレも自分の体重を使った自重トレーニングで十分です。また、運動は睡眠の質を向上させる効果もあります。

\自律神経の乱れにつながるアレコレ/
飲酒も自律神経を整える上で要注意です。お酒を飲むとよく眠れると思っている方は少なくありませんが、実は逆。アルコールは睡眠の質を低下させます。

過度な飲酒では睡眠時間が短くなる可能性もあり、疲労や自律神経の乱れにつながる可能性もあります。

アルコールの分解では、免疫細胞にとって重要なアミノ酸であるタウリンが消費されます。タウリンを奪ってしまうという点においても、過度な飲酒は免疫対策として推奨できません。

精神的なストレスも免疫機能を低下させる非常に大きな要因になります。ストレスによって交感神経が優位になり、血管が収縮させ、血流が悪化します。さらに、交感神経が優位な状態が続くと、リンパ球など免疫のキーとなる細胞の働きが低下します。

逆に、リラックスした精神状態で副交感神経が優位になると血管が弛緩し、血行もスムーズに。心身ともに無理をしすぎず、リラックスできる時間を意図的に作るようにしましょう。

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監修プロフィール

内科医・血液専門医 久住英二先生


1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

<Edit:編集部>

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