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菅原小春×大根仁『いだてん』インタビュー。日本女子スポーツのパイオニア・人見絹枝をいかにして演じたのか (1/5)

 日本人初のオリンピアンとなった金栗四三と、1964年の東京オリンピック招致に尽力した田畑政治を描いた、宮藤官九郎さん脚本によるNHKの大河ドラマ『いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~』。6月30日の第25回から、第2部がスタートしています。

 7月7日に放送される第26回「明日なき暴走」では、菅原小春さんが演じる人見絹枝が1928年アムステルダム・オリンピックに出場。「女性がスポーツをするなんて……」と言われたこの時代に、女子スポーツの歴史を切り開いた人見の挑戦が描かれます。

 ダンサーや振付師として国内外で活躍を続けてきた菅原さんは、今回の『いだてん』が演技初挑戦。日本の女子スポーツのパイオニアである人見をどのように演じたのでしょうか。第26回の演出を担当した大根仁さんも同席したインタビューが実施されました。※7月6日:記事初出、7月9日:放送後の菅原小春さんのツイートなどを追記し更新しました。

あわせて読みたい:日本女子初の五輪メダリスト・人見絹枝を演じるのは、女優デビューの菅原小春。『いだてん』演出家が明かす、彼女が抜擢された3つの理由とは

[プロフィール]
●菅原小春(すがわら・こはる)
1992年2月14日生まれ、千葉県出身。ダンサー、振付師。幼少期に創作ダンスを始める。小中高生の時に数々の有名ダンスコンテストで優勝し注目を集め、2010年に渡米。独自のダンススタイルが世界的に高く評価される。RIHANNA、安室奈美恵、SMAPなどのダンサーを務めた経験を持つほか、TAEMIN(SHINee)、EXILE、少女時代、2NE1、三浦大知、Crystal Kayらの振り付けも担当。世界35ヵ国以上でワークショップやショーを行う傍ら、TVCM、ファッション誌などにも登場している。2018年『紅白歌合戦』で米津玄師と共演し話題に。NHKの2020応援ソング『パプリカ/Foorin』では辻元知彦とともに振付を担当している。今回の『いだてん』出演が演技初挑戦。

●人見絹枝(ひとみ・きぬえ)
岡山の女学校で始めたテニスで圧倒的な強さを誇り、四三たちと出会う。抜群の身体能力で陸上競技の世界記録を次々と塗り替えるも、女子離れした自身の容姿に強いコンプレックスを抱く。日本人女子で初めてアムステルダム・オリンピックに出場する。女子スポーツ界の先駆者として、生涯を走り続けたスーパースター。

●大根仁(おおね・ひとし)
1968年生まれ、東京都出身。『演技者。』『劇団演技者。』(フジテレビ系)、『30minutes』『アキハバラ@DEEP』『去年ルノアールで』『週刊真木よう子』『湯けむりスナイパー』(すべてテレビ東京系)など深夜ドラマの演出や脚本を多く手がけ、2010年の深夜ドラマ『モテキ』(テレビ東京系)でブレイク。その後、『モテキ』(2011年)、『バクマン。』(2015年)、『SCOOP!』(2016年)、『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(2017年)、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018年)など映画作品の監督を務める。その他にも、電気グルーヴのドキュメンタリー映画やスチャダラパーなどのMV(ミュージックビデオ)など、音楽関連のコンテンツも多く手がけている。NHK大河ドラマにおいて外部から演出家を呼ぶことは珍しく、史上初の試み。

【あらすじ】第26回「明日なき暴走」(7月7日放送)
アムステルダム大会が迫り、体協が相変わらず資金難に苦しむなか、田畑政治(阿部サダヲ)は記者人脈をいかし、政界の大物、大蔵大臣の高橋是清(萩原健一)に選手派遣のための資金援助を直じか談判する。アムステルダム大会では女子陸上が正式種目に。国内予選を席けんした人見絹枝(菅原小春)はプレッシャーに押しつぶされ、期待された100メートルで惨敗。このままでは日本の女子スポーツの未来が閉ざされる──。絹枝は未経験の800メートルへの挑戦を決意する。

菅原小春が人見絹枝に共感する理由とは

――初ドラマとして、『いだてん』を選んだ理由について、また作品の魅力について聞かせてください。

[菅原]人見絹枝さんのような魂を持った女性って、いまの時代に少ないと思うんです。あの時代に生きた人見絹枝さんは、魂を持って身体を張って日本を背負って海外に行きました。それをこれからの世代の子たちに伝えるために、私としても魂を燃やして演じたいと思ったのがお受けした理由ですね。現場を見ていて感じるんですが、私がそう思っていると同時に、皆さんもそう思っていらっしゃる。一緒に走ってやり遂げようという、同じ気持ち、シンパシーを感じました。

――人見さんはプレッシャーに押しつぶされそうになる。共感する部分はありますか?

[菅原](人見さんは)振り切っている部分があるように見えるけれど、素は女なんです。私もそうで、裁縫も好き、ご飯をつくるのも好き。みんなと温かく触れあいたい。でも見た目で誤解されてしまう。バックダンサーでダンスを踊っていると目立ち過ぎちゃう。横に立っているだけで。「下がって踊って」「エナジーを下げて踊って」なんて言われる。そうか、骨格も体型も違うんだな、と気付かされると同時にそれをコンプレックスに感じた時期もありました。でも海外に飛び出したときに、“なんだ私なんて全然普通じゃないか”と気付けた。そこからコンプレックスを自分の強みに変えていかなきゃいけない、努力して磨いていかないといけない、そんなことを思った時期があって。人見さんと通じるところがありましたね。

――人見さんは、女性スポーツの草分け的な存在。居場所がなかった彼女が、居場所を見出していきます。そこにも共感はありましたか。

[菅原]ありました。私は、いつも自分のことをすごく孤独な人だなと感じていて、それでいつも自暴自棄になっていた。海外にもひとりで行って、大きな荷物を抱えて。ひとりでバックパッカーをずっとやっていたんです。帰ってくると、いつも孤独に襲われてウワーって泣いたりしていた。お風呂のドアをバーンって蹴ったりだとか、もう寂しすぎて、けっこう大変なんですよ(笑)。「なんで、こんなに疲れなくちゃいけないんだー」とか言って、疲れすぎて涙が出てきて。まぁ、エネルギー残っているんですけど(笑)。

自分で振付けて自分で踊るってめちゃくちゃ大変なんですが、今までそれをやりすぎていました。ひとりで勝手にストイックに追い込んで、犬が尻尾を追い回すみたいにグルグルしてて。でも最近は、共作もするようになり「なんだ、人に頼れば良いんだ」ということに気付きました。いまNHKでは『パプリカ』(〈NHK〉2020応援ソング)を踊ろう! ということをやっていますが、共作で辻本知彦さんという振付師の方がいて。「これはもう、辻本さんがやった方が良いから、そうしたら私はこっち」ということができるようになった。仲間がいると、こんなにも温かいんだ、笑えるんだと気付いた。話しかけたら、笑いが起きるんだっていうことに。それを人見さんの人生にも感じたし、ドラマをつくっていくという皆さんからも感じられた。すごい温かいなぁ、と思いながら。そこに行ったら、自分だけで戦わなくて良いんだ、誰かの肩にこうやって寄っかかって、また寄っかかってもこられて。やりながら、だったらこうしようか、という努力もできる。そんなことを感じられました。

「自分の力を超えた、とんでもないものができあがるな」(大根)

――感情が湧き出ているシーンがありました。溢れる思いを感じましたが、演じていかがでしたか?

[菅原]お芝居が分からないので、どう泣いたら良いのか無知でした。私、本当にああいう風に家でも泣いているんです。どう役を作り込んだ、ということはないんですが、人見さんのことを思い、シマさんのことを思ったら、ああいう風に泣いていました。

[大根]これまでドラマも300本以上を撮ってきたので、台本を読んでも現場で撮っていても「大体、このくらいの感じになるな」というのが良くも悪くも分かってしまうところがある。でも10年に1本くらい、「これは何か、とんでもないものができるかもしれない」と感じるときがあります。それなりの経験の中で、これまでに2、3本しかないんですが、自分の実力や、演出力を超えてしまうときが。僕は「神回」という言葉はあまり好きじゃないんですが、何か別の力で作らされているようなことがたまにあって、この回は、まさにそんな回でした。走っているシーンとか、最後のシーンとか撮りながら、あれ、あれ、という予感があって。最終的には、菅原さんが泣きながら800メートル走出場を懇願するシーンを撮っているときに「これは自分の力を超えた、とんでもないものができあがるな」という確信に変わりましたね。それは現場スタッフの反応を見ていても感じました。

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