インタビュー
2019年7月9日

菅原小春×大根仁『いだてん』インタビュー。日本女子スポーツのパイオニア・人見絹枝をいかにして演じたのか (3/5)

「テニスも、走るときも、『音だな』と思いました」(菅原)

――走ったり、飛んだり。動きの中で活かした部分はありますか?

[菅原]私はダンサーの中でテクニックがある方だとは思っていないんです。どっちかというと魂が先行でやってしまっているところがある。それはできたかな、と思います。走る、投げるもスキルうんぬんではなくて、その当時ってトレーナーもいないじゃないですか。走り方、投げ方、飛び方をみんなで試行錯誤していた。つくりあげていく中で、彼女も走っていた。だから、こっち(魂)が先行だと思っていて。でも、そんな人見さんの気持ちに近付くにも練習が必要だったので、そこは練習しました。

ダンスと通じるところは、スキルでもテクニックでもない。全部、とっぱらって人間の身体をはいだら心臓だけみたいな。魂だけみたいな状況の感じは、ダンスと同じような感覚でいけました。

[大根]基本のトレーニングは、今回のドラマの出演者たちと一緒に、筑波のトレーニングセンターでやりましたね。基礎の部分はやった上で、魂で演じるということですね。

――人見絹枝さんは100mや幅跳びなどで大活躍します。菅原さんも経験があったのでしょうか。

[菅原]まったく、全部不得意でした。私は「自分は何でもできる」と思ってしまうタイプなので、できると思ってやったらできず、めちゃくちゃ影でクスクス笑われるという(笑)。カッコ悪い、と思ったので、テニスなど集中して練習しました。突き詰めていくと大丈夫なんですけどね、波に乗るところが分かるので。楽しくなってくると余裕が生まれますね。

あと、音があるんです。テニスも、走るときも、「音だな」と思いました。ダンスもあるんですが、テニスは特に音。自分の構えた角度より上にボールが飛んで行くときは、良い音は出てこない。トレーナーさんをつけての練習のほかに、そんな練習もやっていました。

[大根]テニスは、やっぱり大変だった?

[菅原]みんなが「やばい」って言ってました(笑)。

[大根]キャスティングしたときに、当然、菅原さんは運動神経の塊のような人だから、何やっても大丈夫だろうとみんなが思っていて。でも、そのときは僕の担当回じゃなかったんですが、練習に連れて行った演出家から「ちょっとテニスやばいっす」って報告があって(菅原さんも記者団も爆笑)。「え、マジで!?」ってなりましたね。まぁ、でもすぐに習得したみたいですけど。

――来年の東京オリンピックで、見てみたい競技などがあれば教えてください。

[菅原]できれば、家でも家族と一緒に応援したいですね。私、パプリカをやっているので、パプリカで応援します。

――人見絹枝さんは、毎日新聞の記者でした。菅原さんは、どんな本を読みますか。

[菅原]私は本を読まないんですよ。文字を読むな、と父から教わったくらい。「自分の行動で文字を生み出していけ」という教えだった。学校の朝の読書でも、ずっと私だけ本が変わらないんです。自分の中ではクリエイティブなことを繰り返し考えていました。そんな人だったので、そこは人見さんと違うんですが、でも文字のおもしろさは、最近、ちょっとずつ気付くようになりました。いままでは言葉のコミュニケーションって、すごく難しいなと思っていて。ダンスで人と通じて会話することをやってきたので、言葉って、こんなに人を傷つけてしまい、人に傷つけられてしまうんだな、と思っていた。最近、少し大人になってからは、文字も生きているんだなと思うようになりました。

「自分の世代たちや、それより若い子たちに」(菅原)

――芝居の経験は今後、ダンスにも還元できそうですか。

[菅原]ダンスでは去年、「ここまで来ちゃったら、もうこの先、踊り切ることはないな」と思うことがあったんです。このまま踊っていても、良いバイブスは流れない。そのとき、『いだてん』に出会いました。そこでいずれやってみたいと思ったことは、身体を動かす役ではなくて、動かないのに「この人、やっぱりダンサーだな」と思わせる役。そんな役ができたら良いな、と思うようになりました。

ダンスでも、ステージに立って1点を見つめて、照明が当たって。右に顔を向けたときに、それだけで「これはダンスだな」と言われるようなものがつくりたい。見せたい、表現したいところはそこなんだな、と思いました。

――七夕の日(7月7日)に放送されます。メッセージがあれば。

[菅原]なんだろう、考えてくれば良かった(笑)。素敵な言葉が良いですよね?

[大根]多くの方に見ていただけますように、という願いじゃないですかね。この回は特に、女性に見て欲しい。僕はそうですね。

[菅原]私もそうです。もっと自分の世代たちや、それより若い子たちが、みんなで。私が言うと暑苦しくなっちゃうんですけれど、もっと自分に魂があることに、みんなが気付いても良いんじゃないかと思うんです。それに気付いて欲しいから見て欲しい。

2人が感じる手応えとは?

 また、菅原さんと大根さんがこの回を見た感想や手応え、あのシーンの裏側などが語られました。ただし、ここからは第26回の内容に関わるネタバレエピソードが含まれますので、ご注意ください!

※※【要注意】以下、第26回のネタバレエピソードを含みます※※

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