インタビュー
2019年8月17日

大東駿介が語る、ゼロからイチを築いた五輪アスリートを演じる決意。「敗北の先に進むことって、すごいロマンだなと思うんです」│『いだてん』インタビュー (5/5)

―― 鶴田選手は、ロス五輪で2大会連続の金メダルを獲得しました。

自分が泳いでいる、っていうことを改めて感じられました。こんなこと言うのも恥ずかしいんですが、何もできなかった自分、水と接するのも苦手だったのに、いまレースで争っている。水泳の先生(高橋繁浩さん)は、平泳ぎの異端児と呼ばれた人なんですが、その人が俺の泳ぎを見て「本当に、あの時代の泳ぎ方をそのまま再現できていますね」と言ってくださった。その言葉に感動して。

クライマックスのシーンは、胸をはって泳げました。「うまく映像でごまかしてくださいね」なんて後ろめたさが微塵もなく、ここまでやっきてたことに自信を持ってやろうと思えた。そうした気持ちになれたのが、自分の中のハイライトでした。これは水泳メンバーともよく話すんですが、撮影期間は、夢のような時間やったなっていう。

エキシビジョンの撮影の日。気温ヒト桁だったんですよ。めちゃくちゃ寒くて、死ぬんちゃうんかと思った。立ち泳ぎなんてできないところから、みんなで何ヶ月も前から練習をスタートさせて、いよいよこの日、日本泳法の集大成やぞ、と言われて撮影に臨んだわけですが、もう寒すぎて手足がイッコも動かへん。集大成も何もホンマ動かんぞ、みたいな状態になって。ホンマに過酷な1週間におよぶ撮影だったんですが、オリンピックの舞台を撮影している自分たちの心が、すごい高い位置でいれた夢のような時間だった。うん、夢のような時間でしたね。

大根(仁)さんが1回、ドローンで撮影していたときにカメラを止めてまで俺と(前田)旺志郎くんを呼んで、撮ったばかりの映像を見せてくれたんです。「ちょっと見てみな」って言って。「これをDVDにするから、持ち歩きなさい」と言われました(笑)。一生モンやから、これをみんなに見せなさいって。それくらい胸を張って良いよ、って監督の心遣いやったと思うんですが、ホンマに格好良く撮っていただいた。とても希望的で愛のある、責任のある座組みだったなぁと思います。

<Text:近藤謙太郎/Photo:NHK提供>

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