インタビュー
2019年8月17日

リリー・フランキー「田畑政治のように何かをめちゃくちゃ好きなやつって、見ていて気持ちが良いんですよね。好きなものがある人って良い」│『いだてん』インタビュー (4/4)

―― 五・一五事件、二・二六事件にも直面します。演じてみた感想、また発見があれば。

今日(取材時)も、二・二六事件の一報が入るシーンを撮っていたんですけれど、すごく重いですよね。先ほど言ったみたいに、戦国時代にも人がたくさん死んだんでしょうけど、それよりも身近な話なので、軍がクーデターを起こして、総理大臣が殺されたりして、本当に恐ろしいじゃないですか。野原で馬に乗って人が斬り合うよりも、戒厳令とか出る方が重い気分になりますね。そういう戦争を繰り返しながらきた国です。

よくサッカーは戦争だとか、そんな例えをする人がいますが、俺はあまり気持ちよく聞いていないんですよ。スポーツ観戦は好きですけど、これだけ野球が好きなのに、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)にさほど興味がないのも、国対国の戦いに興味がないからなんですよね。国対国というまとめ方にされていることが嫌い。オリンピックだって、国対国の戦いじゃなくて、個人対個人の戦いなのであって。

―― 二・二六事件で、緒方さんは銃を突きつけられます。

イメージでは、相当かっこよくなるはずだったんですが、台本を読んだらさほどでもなかった(笑)。

深刻なシーンでもユーモアが入っている。事実も、きっとそう。これは官九郎くんっぽいリアリティの部分ですよね。どんなひどい目に遭った人でも、その日の夜に寿司でもとって、喰って、みんなで笑ったりするじゃないですか。本当に悲しいことがあっても、泣いてばかりじゃないし、笑ったりした方がよりリアルなのかもしれない。そういうところが、良いんじゃないですかね。

<Text:近藤謙太郎/Photo:NHK提供>

1 2 3 4