ヘルス&メンタル
2025年12月19日

【大人の発達障害】ADHDの男性に見られやすい特徴とは?

大人になってから「仕事がうまく回らない」「予定管理が苦手」「気づけば部屋が散らかっている」といった悩みを抱え、ADHD(注意欠如・多動症)という特性に気づく男性は少なくありません。

ADHDは子どもに多いイメージがありますが、実際には大人になって表れ方が変わることもあり、日常生活や仕事の場面で“つまずき”として現れることがあります。

大人のADHD男性に見られやすい思考や行動と、その背景にある特性を、心療内科・ペインクリニックを開設予定であるなかざわ腎泌尿器科クリニック院長・中澤佑介先生監修のもと解説します。

大人のADHD男性に見られやすい特徴

大人の男性におけるADHD(注意欠如・多動症)は、子どもの頃のようなわかりやすい多動よりも、仕事や人間関係、日常のタスク管理の中で“気づかれにくい困りごと”として現れることが多くなります。

集中が続きにくい一方、興味のあることには没頭しやすい

大人のADHD男性には、集中力が続きにくい、段取りを組むのが苦手、物忘れやケアレスミスが多いといった“不注意”の傾向がよく見られます。

一方で、興味のあることには強い集中力を発揮し、時間を忘れて没頭することもあります。

衝動的に動いてしまう、気持ちの切り替えが難しい

思いついたことをすぐ行動に移してしまう衝動性や、会話や仕事の最中にそわそわして落ち着かない感覚が続くことも特徴のひとつです。

予定外の出来事に弱く、気持ちを切り替えるのが難しい場面も生じます。

感情が揺れやすく、対人面のストレスを抱えやすい

感情が急に高ぶったり落ち込んだりしやすく、刺激に敏感で疲れやすいこともあります。

また、人間関係の距離感がつかみにくく、誤解を招いたり、自分でも対人疲労を感じやすい傾向があります。

なぜこうした特徴があらわれるのか? 背景にある特性

ADHDの背景には、脳の働き方や神経伝達物質のバランスの違いが関係していると考えられています。

注意や衝動のコントロールに関わる神経ネットワークが働きにくいことで、情報を選び取ったり優先順位をつけたりする作業が負担になりやすく、気が散りやすさや先延ばしにつながります。

また、感情を調整する部分にも特性があるため、気持ちが揺れやすかったり、ストレスに弱かったりすることがあります。

こうした特徴は生まれつきの気質であり、努力不足や性格の問題ではありません。大人になると、社会のルールや責任が増えるため、子どもの頃より目立って困りやすくなることがあります。

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生活・仕事で起こりやすい“つまずき”と対処法

大人のADHD男性は、日常生活の細かな管理や仕事の段取りといった“複数のことを同時に扱う場面”でつまずきが表れやすくなります。

本人の努力や意欲とは関係なく、脳の特性によって注意が散りやすい、優先順位が判断しにくいなどの難しさが生まれやすいため、適切な工夫や環境づくりがとても重要になります。

時間管理やタスク整理が難しく、ミスにつながりやすい

仕事や日常の予定を「頭の中だけ」で管理しようとすると、優先順位がわからなくなったり、抜け漏れが起こりやすくなります。

締め切り間際になって焦ったり、やるべきことを後回しにしてしまった結果、一気にタスクが押し寄せて負担が増えることもめずらしくありません。

日常生活でも、家事が途中で止まる、鍵や財布の置き場所を忘れるなどの困りごとが積み重なりやすくなります。

⇒こう対処する!

対処には、“自分の脳に頼らない仕組み”をつくることが効果的です。ToDoアプリやカレンダーに必ず書き出す、タスクを小さく分割する、タイマーで区切るなど、外部に情報を置くことで混乱を防げます。

ToDoアプリや付箋の存在自体を忘れてしまう場合は、生活動線に“勝手に目に入る仕掛け”を作ることが有効です。

たとえば、玄関ドアに貼る・スマホやPCモニターなど必ず毎日見る場所に貼る・スマホのロック画面をToDo写真にしてしまうなど。「自分で思い出す」方式ではなく、「視界に入って勝手に思い出す」方式です。

なお、使うツールはひとつにしましょう。手帳、付箋、アプリ…と分散すると、どこを見ればいいかわからなくなり、結果としてすべて忘れます。

片づけや整理が苦手で、生活環境が乱れやすい

ADHDの人は、モノを分類したり戻す場所を決めたりする作業が苦手なため、部屋が散らかりやすい傾向があります。整理整頓が苦手というより、「仕組みがないと維持できない」タイプといえます。

⇒こう対処する!

片づけのハードルを徹底的に下げることが有効です。収納場所を細かく決めすぎない、ひとまとめに放り込める“定位置ボックス”を用意するなど。

感情の振れ幅が大きく、ストレスが溜まりやすい

予定変更やイレギュラーな出来事が起きると、気持ちの切り替えが追いつかず大きく疲れてしまうことがあります。

また、衝動的に発言したり、小さな指摘に過剰に落ち込んでしまうなど、感情面の揺れが強く出ることも特徴です。

⇒こう対処する!

困ったときに一度深呼吸をする、歩くなど身体を動かしてリセットする、予定変更が起きたときの“予備案”を用意しておくなど、気持ちを落ち着けるスイッチを複数持つことが大切です。

周囲の人が理解しておきたいポイント

ADHDの特性は、本人の性格や努力の問題ではなく、脳の働き方によるものです。

できないことを叱ったり矯正しようとしても、大きな改善につながりにくく、むしろ本人が「また失敗した」と感じ、意欲や自己肯定感を下げてしまうことがあります。

大切なのは、行動の背景にある特性を理解し、「どうすればスムーズに動ける環境になるか」を一緒に考える姿勢です。

「指示が理解できない」「説明が長い」「ズレている」…職場における“大人の発達障害のサイン”と対処法

ADHDの人は、言われた通りにしようという気持ちはあっても、注意が逸れやすく、同時に複数のことを把握するのが難しいため、行動が途中で止まったり、想定と違う方向に進むことがあります。

そのため、指示や依頼はできるだけ短く、順番を明確にし、必要なら紙やメモ、メッセージなど“視覚的なサポート”を添えたほうが伝わりやすくなります。

また、急な予定変更や想定外の状況に不安が強く出ることもあるため、変更点は前もって言葉で説明したり、“いま何が必要で、何が不要なのか”を明確に示してあげると混乱を防ぐことができます。

ADHDの人には、発想力や行動力、興味のあることに対する高い集中力といった強みもありますが、これは安心して力を発揮できる環境があってこそ生きてくるものです。

弱点を責めるよりも、得意な部分を活かせる場面を増やしていくことで、本人のパフォーマンスが大きく向上することがあります。

ADHDは「直すべきもの」ではなく、「前提を理解したうえで付き合っていくもの」という視点で考えたほうが建設的でしょう。

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監修者プロフィール

なかざわ腎泌尿器科クリニック
院長 中澤佑介

なかざわ腎泌尿器科クリニック 院長 中澤 佑介金沢医科大学医学部医学科卒業。「患者さんに近い立場で専門的医療を提供したい」という思いで2021年、なかざわ腎泌尿器科クリニックを開設。2024年9月、JR金沢駅前に金沢駅前内科・糖尿病クリニックを開設。2026年4月、金沢市玉鉾に心療内科・ペインクリニックを開設予定。

<Edit:編集部>