2018年10月9日

ランニングシューズの「基本のき」。選び方、最新事情、厚底シューズの性能、手入れ方法をマラソンのプロに聞いた (3/3)

厚底シューズ時代が到来? 人類初の2時間1分台の世界記録が誕生

――履き方ひとつにもたくさんの注意点があるのですね。足にフィットしたシューズなら気持ちよく走れそうです。初心者はクッション性の高いものがよいと聞きますが。

初心者は厚底、エリートランナーはソールが薄くて軽量のシューズというイメージがあるけれど、最近はそう単純ではないんですよ。2018年9月にベルリンマラソンで世界初の2時間1分台を記録したエリウド・キプチョゲ選手(ケニア)のシューズは、軽量だけどソールは決して薄くない。普段の練習では未舗装の道やトラックを走っているケニアやエチオピアの選手も、レースでは厚底シューズを履いています。大迫傑選手(NIKE)や設楽悠太選手(Honda)のソールも厚いですね。

▲2018年のベルリンマラソンで優勝したキプチョゲ選手 (C)Getty Images

▲2018年10月のシカゴマラソンで、2時間5分50秒の日本新記録をマークした大迫選手 (C)NIKE

――世界新記録をたたき出し、一流選手も選ぶ厚底。それはどんなシューズですか。

靴底は、シューズから取り外せるインソール(中敷き)と、外から見えるアウトソールの間にミッドソールと呼ばれる部分があるんですが、このミッドソールの進化によって、ゆっくり走るときは衝撃を吸収し、スピードを上げると反発力を発揮するというシューズが登場したのです。

――画期的ですね。シューズがスピードに合わせてくれるなんて。これなら初心者のうちは脚が守られるし、レベルが上がって速く走れるようになっても履き続けられますね。

そう、レースの最初はよいペースでも、終盤でフォームが崩れてペースダウンすることがありますが、そういうときも脚を守ってくれるので安心です。ただし、同じ厚底でも、ソールにカーボンプレートが入っているものなど、初心者が履きこなすには難しいものもあります。さまざまな機能を持ったシューズが次々と開発されているので、自分に合ったものをみつけてください。

臭い・雑菌・劣化からシューズを守るためには?

――お気に入りのシューズは、よいコンディションで履き続けたいと思うのですが、一番大事なことは何でしょう。

履いたら毎回洗うことです。

――アスファルトの上を走っただけなら、それほど汚れているように見えませんが。

ウエアは毎回洗うでしょう。シューズの通気性がいいからそれほど気にならないかもしれませんが、足も相当汗をかいているんですよ。そのまま下駄箱にしまったら、雑菌が増えて臭いやカビの原因になります。それに、水分を含むと大切なミッドソールが加水分解を起こして劣化が早くなってしまうんです。

――毎回洗うと、かえって消耗が早くなるということはありませんか。

直射日光を避けて風通しのよい日陰で乾かす、と覚えておいてください。こまめに洗えば水洗いでも十分だし、時間がなければ柔らかい布(使い古したハンドタオルなど)で汚れをふき、インソールを出して乾きやすくするだけでも違いますよ。いつも気持ちよい状態で履くために、走ったあとの手入れを習慣にしましょう。

[プロフィール]
牧野仁(まきの・ひとし)
有限会社スポーツネットワークサービス代表、Japanマラソンクラブ完走請負人。1967年東京生まれ。アスレティックトレーナー、ストレングス&コンディショニングトレーナーとして活躍。健康ジョギングからマラソン完走、レベルアップまであらゆるランニングの指導を全国各地で展開している

<Text:松本美和/Edit&Photo:丸山美紀/Photo:Getty Images>

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