いつの日かやってみたい「バランスボールの上でスクワット」│連載「甘糟りり子のカサノバ日記」#50
アラフォーでランニングを始めてフルマラソン完走の経験を持ち、ゴルフ、テニス、ヨガ、筋トレまで嗜む、大のスポーツ好きにして“雑食系”を自負する作家の甘糟りり子さんによる本連載。
今回は、トレーニングを続けていくうえ大事な、モチベーションを保つことについて。「これができるようになりたい」「こんな身体になりたい」という目標をイメージすると良いかもしれません。
目標は高く持っときたい
自粛期間に自宅の2階にジム・コーナーを作ったことは書きました。自分でも予想していたのですが、作っただけで気持ちは半分くらい満足してしまいまして、正直なところ、「明日こそ」と毎日決意しております。意思の弱い私は、やっぱり「ジム」という非日常な空間に移動しないと、なかなかきっちと運動ができないようです。情けなや〜。
自宅ジムでは主に、短くても「運動したったぜ!」と実感できることをやっております。
例えば、バランスボールに膝立ちで体操。これ、けっこう体幹を使いますし、達成感あるんです。上半身を動かさなくても、1分はボールの上にいようとがんばってます。私の経験した運動の中でイメージが一番近いのはサーフィン。腹筋でバランスボールを抑えている感覚、といったらいいでしょうか。
SNSにアップしたら、思いのほかお褒めの反応をいただきました。これ、何年も前に練習して会得したものなんです。ある程度の腹筋が使える人なら、練習すればできるようになるんじゃないかなあ。
自分のために、トレーニング動画をアップすることにしました。すぐさぼっちゃうから。バランスボール膝立ちはもって1分ちょい。いつかバランスボールの上でスクワットがしたい❗️目標は高く。 pic.twitter.com/CK9uNeDyat
— あまかすりりこんぐ(甘糟りり子) (@ririkong) June 22, 2020
都心のジムでパーソナルトレーナーについてもらってトレーニングをしていた時期がありました。まだそこそこ若くて、マシンとフリーウエイトを組み合わせ、まあまあ追い込んだメニューを作ってもらっていたのです。こなせるようになるとつい重さを上げがちだったのですが、そうするとむきむきのゴツい身体になってしまいます。今にして思えば、それはそれで可能な年代にやってみてもよかったのですが、まだそんな時代ではありませんでした。バランスボールで身体をほぐしながらトレーナーと雑談していたら、某アスリートがそのバランスボールに乗ってスクワットをするというではありませんか。
「それ、やってみたい!」
張り切ってそういう私にトレーナーは苦笑い。
「相当むずかしいですよ」
そういわれたら、ますます燃えますよね、普通。
トレーナーに手を持ってもらい、ゆっくりとバランスボールの上に立とうと、したのですが……。とてもじゃないけれど無理でした。足元が揺れちゃって、もう10センチも立てない。人間が本当にこれに立ってスクワットとか、できるんだろうか。考え込む私に、トレーナーから提案がありました。
「まずは、膝立ちの練習しましょう」
鏡の前で、バランスボールに膝立ちの特訓は始まりました。私はついつい後ろに傾きがちで、思い切って膝を前に出した際の前に行き過ぎない位置を鏡で確認。自分なりのその位置がわかるまでは、落ちることを恐れないことが大切です。何度も崩れながら、ベスポジを身体で覚えました。
クセみたいなもので一度できるようになると、多少時間が空いてもすっと膝で立てます。都内から地元の海沿いに戻り、逗子マリーナ内のジムに通っていた時は膝立ちでトレーナーとキャッチボールをしてもらったりしました。しかし、あのジムももう無くなっちゃいました。バランスボール膝立ちをやる場所も機会もなくて、すっかり忘れておりました。
自宅にジム・コーナーを作った時、バランスボールに空気を入れながら、ふと思い出し、久しぶりにやってみました。自分の体幹を実感できるので、やっぱりこのメニュー好きです。これだけやってトレーニングしたつもりになっている日も少なくない。
いつの日か、バランスボールに立ってスクワットをしてみたいです。かなりハードル高いですが、50代ですが、夢じゃありません、目標です。目標は高く持っときたい。鏡がなく、トレーナーもいない自宅トレニーニングではどうなることかわかりませんが、いつかやってみたいな。ついでに付け加えると、股割りっていうんですか、あれも目標です。前屈してペタッと身体を折り曲げる、超屈伸運動。
さあ、パソコンを閉じて、ちょっと身体を動かしてきます。隣の部屋で。
[プロフィール]
甘糟りり子(あまかす・りりこ)
神奈川県生まれ、鎌倉在住。作家。ファッション誌、女性誌、週刊誌などで執筆。アラフォーでランニングを始め、フルマラソンも完走するなど、大のスポーツ好きで、他にもゴルフ、テニス、ヨガなどを嗜む。『産む、産まない、産めない』『産まなくても、産めなくても』『エストロゲン』『逢えない夜を、数えてみても』のほか、ロンドンマラソンへのチャレンジを綴った『42歳の42.195km ―ロードトゥロンドン』(幻冬舎※のちに『マラソン・ウーマン』として文庫化)など、著書多数。GQ JAPANで小説『空と海のあわいに』も連載中。近著に『鎌倉の家』(河出書房新社)、『産まなくても、産めなくても』文庫版(講談社)。《新刊のお知らせ》
幼少期から鎌倉で育ち、今なお住み続ける甘糟りり子さんが、愛し、慈しみ、ともに過ごしてきたともいえる、鎌倉の珠玉の美味を語るエッセイ集『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)が4月3日より発売。
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<Text:甘糟りり子/Photo:Getty Images>