乳酸菌とりすぎると?「癌になる」「おならが出る」の噂の真相[管理栄養士監修]
体に良いイメージのある「乳酸菌」ですが、とりすぎると良くないのでしょうか? 乳酸菌をとりすぎることによって起きる症状を、管理栄養士に聞きました。
「乳酸菌のとりすぎで癌になる?」「乳酸菌は合わない人がいる?」といった疑問にもお答えします。
▼ 目次
● 乳酸菌のとりすぎは良くない?
● 乳酸菌をとりすぎると出る症状
● 乳酸菌のとりすぎで、「癌になる」「カンジダ治る」って本当?
● 乳酸菌の1日の摂取量上限
● 「乳酸菌が合わない人」はいる?
● 乳酸菌が合わない人が出る症状
● そもそも「乳酸菌」とは?
乳酸菌のとりすぎは良くない?
乳酸菌のとりすぎによる、体への副反応は起きにくいと考えられます。
「乳酸菌のとりすぎが良くない」というより、「乳酸菌を含む食品のとりすぎに問題がある」と考えられます。乳酸菌を豊富に含む、漬物・チーズ・乳酸菌飲料を過剰摂取すると、各々に含まれる塩分・糖質などを必要以上に摂取してしまうため、体に悪影響を与える可能性があると考えられます。
塩分、糖質の過剰摂取は、
- 高血圧
- 動脈硬化
- 肥満等の生活習慣病
を引き起こす原因になります。
善玉菌が多すぎると病気になる?
基本的に、善玉菌が多すぎることで病気になるとは考えにくいです。
健康な腸内環境は、善玉菌・悪玉菌・日和見菌がバランスよく存在することによって作られます。そのため、もし善玉菌が多すぎる場合は、腸内環境が悪くなり、
- 便秘などお腹の不調
- 肌荒れ
などが起こる可能性はあります。
ただ、善玉菌が含まれる食べ物を摂取してもすぐに腸内に住みつくわけではないので、「食べ物によって善玉菌が多くなってしまった」ということは考えにくいです。
乳酸菌をとりすぎると出る症状
乳酸菌をとりすぎることで、以下の症状が出る可能性があります。
- 下痢
- 便秘
- 腹痛(お腹がゴロゴロする)
- おならが出やすくなる
- お腹が張る
乳酸菌とりすぎによる症状が出る「原因」
上記の症状が出る原因としては、乳酸菌をとりすぎたことで、腸内環境が悪化した・腸機能が活性化されたなどのことが考えられます。
また、摂取した乳酸菌が自身の体質に合っていない場合も、このような症状があらわれることがあります。
乳酸菌とりすぎによって症状が出た時の「対処法」
- 乳酸菌の摂取をやめる
- 症状が落ち着いたら、他の種類の乳酸菌を摂ってみる
- 軽く運動する
- 栄養バランスの良い食事を摂る
乳酸菌そのものが合わないというより、特定の乳酸菌が合わなかった可能性も考えられます。乳酸菌は約400種類存在するので、自分に合う乳酸菌を見つけるのも良いでしょう。
また、運動不足や食事の偏りにより不調が出ている可能性も考えられます。症状が出た際は、生活習慣を整えることも考えましょう。
乳酸菌のとりすぎで、「癌になる」「カンジダ治る」って本当?
「癌になる」ってホント?
乳酸菌をとりすぎによって、癌になるとは言えないでしょう。乳酸菌はむしろ、大腸がんのもととなる大腸ポリープを抑制、乳癌の発症リスク低減など、癌予防に働きかけます。
しかし、乳酸菌を含む乳製品の過剰摂取により発癌リスクが高まる可能性はあります。動物性の乳製品には、脂質が多く含まれており、過剰摂取により大腸癌・乳癌・前立腺癌の発症リスクを高める可能性があると指摘されているからです。
とはいえ、明確な根拠は提示されていないので、過剰に気にする必要はないでしょう。
「膣カンジダに影響する」ってホント?
乳酸菌によって、カンジダ菌の増殖抑制が期待できると考えられています。
カンジダ菌は、アルカリ性に傾くと繁殖しやすい菌です。乳酸菌は膣内を酸性に保つ働きがあるため、カンジダの過剰な繁殖を抑えてくれると考えられます。また、カンジダ菌は、腸内や膣内に普通に存在している菌です。
乳酸菌の1日の摂取量上限
乳酸菌の摂取上限量は、定められていません。摂取の目安量としては、ヨーグルトの場合1日100~200g程度が良いでしょう。
ちなみに、1日の乳酸菌の摂取目安量は、100億個程度と考えられています。
「乳酸菌が合わない人」はいる?
乳酸菌には様々な種類があるので、種類によっては体質的に合わない人は「いる」と考えられます。
ただ、乳酸菌は、私たちの体内にも存在している菌なので、全ての乳酸菌が合わないという人はほとんどいません。「乳酸菌が合わない」と思っている多くの場合は、乳製品に含まれている「乳糖」が原因となっていることが多いです。
日本人は、乳糖を分解する力が弱い「乳糖不耐症」の人が多いと言われています。乳糖不耐症の人が乳製品を摂取すると、腹部に不調が起こることが多々あります。牛乳を飲むとお腹が痛くなる等の症状が出現する人は、乳糖不耐症の可能性があります。
乳酸菌が合わない人が出る症状
乳酸菌が合わない人が乳酸菌を摂ると、以下の症状が出ることがあります。
- 腹痛
- 下痢
- おならがよく出る
- 腹部が張った感じがする(腹部膨満感)
そもそも「乳酸菌」とは?
乳酸菌とは、糖を代謝して乳酸を生成する細菌の総称です。人間の体にとって有益に作用することから「善玉菌」とも呼ばれています。
腐敗を予防し、保存性を向上させる働きを持つため、発酵食品に活用されています。また、乳酸菌の中には、腸内を酸性傾向にして、悪玉菌の増加を抑制する働きを持つ菌もいます。
乳酸菌による体に嬉しい効果
- 腸内環境のバランスを整える
- 便秘を解消する
- コレステロール値を低下させる
- 免疫機能の向上(ガン予防)
- 乳酸菌によっては、胃炎や胃がんなどの原因となる「ピロリ菌」を除去できる
- アレルギー症状を改善する など
乳酸菌が多い食品
- ぬか漬け
- キムチ
- チーズ
- ヨーグルト
- 納豆
- 味噌
- 醤油
- 日本酒
- 乳酸菌飲料
▼参考
身近だけれど以外に知らない乳酸菌・ビフィズス菌の姿 - 生物工学第90巻
日本栄養士会 ニュータス 乳酸菌 - 公益社団法人
ヨーグルト・乳酸菌飲料のおいしい話 - 一般社団法人 全国発酵乳乳酸菌飲料協会
健康・栄養フォーラム - 国立健康・栄養研究所
監修者プロフィール
健康検定協会理事長
望月 理恵子
株式会社Luce代表取締役、管理栄養士、山野美容芸術短期大学講師、服部栄養専門学校特別講師、小田原銀座クリニック栄養顧問、日本臨床栄養協会評議員。サプリメント・ビタミンアドバイザーなど、栄養・美容学の分野で活躍。多くの方が健康情報を学ぶための健康検定協会を主宰するとともに、テレビ・雑誌などで根拠ある栄養学を提供・監修をしている。「栄養学の◯と×」、「やせる時間に食べてみた!」など著書も多数。
<Text:編集部>