ウェルネスフード
2025年2月13日

ストレスや緊張を感じたときは「ほうじ茶」。その理由とは (2/2)

試験方法

本研究では、ほうじ茶の抽出液とその主要香気成分が自律神経活動や中枢神経活動、主観的な気分に与える影響を検証しました。

被験者は、緑茶の香りが嫌いでなく、喫煙をしない、冷え性でない、薬物治療を受けていない健康な成人20名としました。試験には、静岡県産一番茶を焙煎したほうじ茶の抽出液と、ほうじ茶の主要な香気成分である3種類のピラジン水溶液を使用しました(※5)。

また評価項目は、自律神経活動として瞳孔の縮瞳率(副交感神経指標)と末梢皮膚温(交感神経指標)を測定し、中枢神経活動として近赤外線分光法(NIRS)を用いた前頭前野部の酸素化ヘモグロビン量の変化を測定しました

さらに主観的な気分の状態を評価するために、Visual Analogue Scale (VAS) によるアンケート調査を実施しました。

どんな結果だったか

本研究の結果から、ほうじ茶の香りにより自律神経系において交感神経が抑制され、副交感神経が亢進する鎮静作用があることが示唆されました。

また、前頭前野部の酸素化ヘモグロビン量が減少し、脳血流が低下したことから、中枢神経系においても鎮静作用があることを確認しました。

さらに、心理的評価においても、「緊張感」や「不安感」のスコアが減少し、「気分」、「心地よさ」、「眠気」のスコアが上昇することを確認し、ほうじ茶の香りに生理的・心理的な両面で鎮静効果があることが示されました。

また、ほうじ茶の主要香気成分であるピラジン類の香りにより、瞳孔の縮瞳率の増加や末梢皮膚温の上昇が確認され、さらに2,3,5-トリメチルピラジンの香りにより酸素化ヘモグロビン量も減少しました。

これらのことから、ほうじ茶の香りの鎮静効果にはピラジン類が関与し、中でも2,3,5-トリメチルピラジンが最も重要な香気成分であることが示唆されました。

研究結果の概要

試験1 ほうじ茶の香りが自律神経活動に及ぼす影響

白湯とほうじ茶の香りを2分間嗅いだ後の瞳孔径の変化を測定しました。

その結果、対照区(空気)と比較して、白湯とほうじ茶の香りを嗅ぐことにより、ともに瞳孔の縮瞳率(※6)が増加しました(図1)。

次に、白湯とほうじ茶の香りを嗅いだ後の末梢皮膚温(指尖温度)の変化を測定しました。

その結果、瞳孔の縮瞳率と同様に対照区と比較して、白湯、ほうじ茶の香りを嗅いだ後では、末梢皮膚温の上昇が認められました(図2)。

これらの結果から、ほうじ茶の香りを嗅ぐことにより、交感神経が抑制され副交感神経が亢進されることを確認しました。また、今回の試験では、白湯による水蒸気でもその効果が認められました。

試験2 ほうじ茶の香りが主観的な気分の状態に及ぼす影響

白湯とほうじ茶の香りを2分間嗅いだ後の主観的な気分の状態の変化をVAS法により評価しました。

その結果、対照区と比較して白湯とほうじ茶の香りを嗅いだ後では、ともに「緊張感」、「不安感」のスコアが減少しました。

また、ほうじ茶の香りのみ、「気分」、「心地よさ」、「眠気」のスコアの増加が認められました(図3)。これらの結果から、ほうじ茶の香りを嗅ぐことにより、心理的な面でも鎮静的な効果があることを確認しました。

試験3 ほうじ茶の香りが中枢神経活動に及ぼす影響

白湯とほうじ茶の香りを嗅いでいる間の脳血流の変化を測定しました。

その結果、対照区と比較して、白湯とほうじ茶の香りを嗅いでいる間では、ともに前頭前野部の酸素化ヘモグロビン量が減少しました(図4)。

また、白湯とほうじ茶の香りを比較すると、ほうじ茶の方がより多くの測定部位で酸素化ヘモグロビン量が低くなることを確認しました。

これらの結果から、ほうじ茶の香りを嗅ぐことで、前頭前野部の脳血流の低下が確認され、中枢神経系の側面からも鎮静効果があることを確認しました。

試験4 ほうじ茶の主要香気成分であるピラジン類の効果

ほうじ茶の香りと同様に、主要香気成分である3種類のピラジン類の効果を検証しました。

その結果、対照区(蒸留水)と比較して、ピラジン類の香りを嗅ぐことにより、瞳孔の縮瞳率の増加と指尖皮膚温の上昇が認められました(図5、6)。

また、主観的な気分の状態では、対照区と比較して、2-エチル-5(6)-メチルピラジンの香りを嗅ぐことにより、「緊張感」、「不安感」のスコアが減少し、2,3,5-トリメチルピラジンの香りにより、「疲労感」のスコアの減少と「眠気」のスコアの増加が認められました。

さらに、脳血流の測定では、対照区と比較して、2,3,5-トリメチルピラジンの香りにより、全てのチャンネル(ch11除く)において酸素化ヘモグロビン量の減少が認められました(図7)。

これらの結果より、ほうじ茶の香りの主要香気成分であるピラジン類にも、ほうじ茶の香りと同様に鎮静効果があることを確認しました。

<Edit:編集部

1 2