
疲労回復にアミノ酸は早く効く?種類・摂り方・おすすめ食品を医師が解説
疲れが取れない、体がだるい…。そんなときに注目されているのが「アミノ酸」です。
アミノ酸はタンパク質が分解された小さな物質のため、吸収が早く速やかな効果が期待できることから、疲労回復をサポートする栄養素として知られています。なかには運動後の筋肉の回復や、強い疲労を感じたときに役立つ成分もあり、食品やサプリメントから効率的に取り入れる方法も広がっています。
疲労回復に効くアミノ酸の効果について、詳しく解説します。監修は、林外科・内科クリニック理事長、林 裕章先生です。
疲労回復とアミノ酸の関係
私たちの体は、食事から摂ったタンパク質を分解し、最小単位のアミノ酸として利用しています。アミノ酸は筋肉や臓器、皮膚など体をつくる材料になるだけでなく、エネルギー代謝やホルモンの合成にも関わります。
分子が小さいため吸収が速く、強い疲労や運動後でも素早く体内に取り込まれるのが特徴です。これが「即効性がある」と言われる理由です。
アミノ酸は全部で20種類あり、そのうち9種類は体内で合成できない「必須アミノ酸(EAA)」です。種類ごとに役割があり、筋肉の修復を助けるもの、免疫を支えるもの、睡眠の質を高めるものなどがあります。疲労回復を意識するなら、それぞれの特徴を理解することが大切です。
疲労回復に効果的なアミノ酸6種類
アミノ酸にはそれぞれ役割があり、疲労回復に特に注目されているものがあります。代表的な成分と働きを紹介します。
BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)
BCAAは筋肉に多く存在し、運動後の分解を抑えて修復を促す働きがあります。必須アミノ酸に分類され、体内で合成できないため、食事やサプリから摂取する必要があります。鶏胸肉、まぐろ、卵、大豆製品などのタンパク質食品に豊富です。
食品からは糖質や脂質など他の栄養素も同時に摂ることになるため、BCAAを効率的に補給するにはサプリの利用が便利です。ただし筋タンパク合成(MPS)を最大化するには必須アミノ酸(EAA)全体が必要で、BCAAだけでは十分ではありません。BCAAはあくまで「補助」と考え、まずは食事やホエイプロテイン、EAAで土台を作ることを意識しましょう。
グルタミン
グルタミンは体内で合成できる非必須アミノ酸ですが、強いストレスや疲労時には不足しやすく「条件付き必須アミノ酸」とも呼ばれます。小麦、大豆、キャベツ、牛乳、肉、卵などから摂取できますが、需要が急増すると体内合成や食事だけでは追いつかないこともあります。
免疫細胞や腸のエネルギー源として使われるため、体調維持や疲労回復を支える重要な成分とも言われています。
アルギニン
アルギニンは血流を改善し、疲労物質の代謝を助ける働きを持つアミノ酸です。成長ホルモンの分泌を促す作用もあり、個人差・プロトコル差が大きいながらも回復力を高める効果が期待できます。食品では大豆製品やナッツ類に豊富に含まれています。
トリプトファン
トリプトファンは必須アミノ酸のひとつで、脳内で「セロトニン」や「メラトニン」といった神経伝達物質の材料になります。これらは気分を安定させたり、睡眠の質を高めたりするため、精神的な疲労や不眠の改善にも関わります。食品中の含有量は少量ですが、比較的バナナや乳製品、大豆製品などに多く含まれます。
アミノ酸を効果的に摂るタイミング
アミノ酸は摂るタイミングによって効果が変わります。状況に合わせて取り入れることで、疲労回復をより実感しやすくなります。
運動前後に摂取して筋肉疲労を軽減
運動前にアミノ酸を摂ると、血中アミノ酸濃度が上がり、筋肉の分解を防ぐ効果があります。運動後に摂れば、修復や回復をサポートし、筋肉痛の軽減にもつながります。特にBCAAはスポーツドリンクやサプリとして使われることが多く、効率的に補給できます。
強い疲労を感じたときのリカバリー
仕事や学業で強い疲労を感じるとき、即効性のあるアミノ酸を摂ると体が素早く回復しやすくなります。特にグルタミンやアルギニンは免疫機能や血流を支えるため、心身のだるさが強いときのサポートになります。サプリやアミノ酸飲料を活用すると取り入れやすいです。
就寝前に摂取して回復力を高める
就寝中は成長ホルモンの分泌が活発になり、体の修復が進む時間帯です。トリプトファンを含む食品やアミノ酸を寝る前に摂ると、睡眠の質が高まり、翌朝の疲労感を軽減する効果が期待できます。乳製品や大豆製品、必要に応じてサプリを取り入れるのも有効です。
サプリやドリンクの選び方と注意点
食事からアミノ酸を摂ることは大切ですが、疲労が強いときや運動習慣がある人は、サプリやドリンクを活用するのも効果的です。手軽に摂取できる反面、注意点もあります。
BCAAサプリの特徴と選び方
BCAAは食品にも含まれますが、効率よく摂るにはサプリが便利です。粉末やカプセル、ドリンクタイプなどがあり、運動前後に摂取するのが一般的です。選ぶときは、1回あたりの配合量や続けやすさを基準にするとよいでしょう。
アミノ酸ドリンクで手軽に補給
アミノ酸入りのドリンクは、運動中や仕事の合間でも取り入れやすいのが特徴です。スポーツドリンクとの違いは、糖質だけでなくBCAAやグルタミンなどが配合されている点です。水分補給と同時に栄養も摂れるため、素早いリカバリーをサポートします。
注意点と摂取の目安
アミノ酸は体に必要な栄養素ですが、過剰に摂ってもそのまま効果が高まるわけではありません。バランスの取れた食事を基本として、製品に記載されている目安量を守り、長期的に無理なく続けられる方法を選びましょう。
普段の食事からもタンパク質を摂ること
アミノ酸サプリやドリンクは即効性があり便利ですが、毎日の疲労回復を支える土台はやはり食事です。鶏胸肉や魚、卵、大豆製品などのタンパク質をしっかり摂ることで、必要なアミノ酸は自然と供給されます。普段の食事を意識することも忘れないようにしましょう。
疲労回復×アミノ酸に関するQ&A
Q. アミノ酸はサプリで摂らないと効果がない?
A. 食事から摂るタンパク質も体内で分解されてアミノ酸として使われます。鶏胸肉や魚、卵、大豆製品などを中心に食べていれば、通常の生活では不足しにくいでしょう。ただし運動習慣がある人や強い疲労を感じる人は需要が増えるため、サプリで補うのも有効です。
Q. プロテインとアミノ酸サプリはどちらがいい?
A. 目的によって使い分けが大切です。プロテインは長期的な栄養補給に向き、筋肉の材料をしっかり補えます。一方、アミノ酸は吸収が早く、運動後や強い疲労を感じたときの即効性に優れています。基本はプロテイン、必要に応じてアミノ酸を補助的に活用するとよいでしょう。
Q. アミノ酸は飲み続けても大丈夫?
A. 適量であれば問題ありません。ただし過剰に摂っても疲労回復効果が増すわけではなく、腎臓や肝臓に負担をかける可能性もあります(通院中の方は必ず主治医とご相談ください)。商品に記載された目安量を守り、バランスの取れた食生活を基本にすることが大切です。
Q. 疲労回復に特におすすめの食品は?
A. アミノ酸を豊富に含む食品としては鶏胸肉、まぐろ、卵、大豆製品などが代表的です。また、バナナは少量ながら必須アミノ酸トリプトファンを含み、睡眠の質を整える効果も期待できます。食品を中心に取り入れれば、自然と必要なアミノ酸を補給できます。
監修者プロフィール
林外科・内科クリニック理事長
林 裕章(はやし・ひろあき)
国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。現在、外科医の父と放射線科医の妻と、全身を診るクリニックとして有床診療所および老人ホームを運営しており、医療・介護の両面から地域を支えている。また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、また医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。日本外科学会外科専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定スポーツ医
公式サイト https://www.hayashi-cl.jp/
<Edit:編集部>