愛着障害と試し行動
ヘルス&メンタル
2025年10月31日

【愛着障害】なぜ「試すような行動」をする?その理由は"不安の合図" (3/5)

なぜ試し行動をしてしまう? 愛着障害との関係性

試し行動が起きる背景には、愛着形成の課題があります。

愛着障害には2つのタイプがある

DSM-5(アメリカ精神医学会の診断基準)で定義される小児の愛着障害には、RADとDSEDの2種類があります。

一方、大人の愛着の問題は通常「愛着スタイル」と表現され、臨床診断とは別の概念です。

●反応性愛着障害(RAD: Reactive Attachment Disorder)

他者に対して過度に警戒し、慰めを求めたり受け入れたりすることが極端に少ないタイプです。感情表現が乏しく、大人に助けを求めず、抱っこやスキンシップを嫌がります。

試し行動としては、「関係を持たないことで傷つかないようにする」という消極的な形で表れることがあります。

●脱抑制型対人交流障害(DSED: Disinhibited Social Engagement Disorder)

見知らぬ人に対しても過度になれなれしく接するタイプです。誰に対しても警戒心がなく、特定の養育者への特別な愛着が見られません。

試し行動としては、「誰でもいいから注目してほしい」という形で、過度なスキンシップを求めたり、大げさに振る舞ったりします。

これらの障害は、通常5歳以前に症状が現れることが多く、診断には早期の不適切な養育歴が重要な判断材料になります。

診断には専門家による詳細な評価が必要です。

大人の「愛着スタイル」と子どもの「愛着障害」の違い

ここで重要なのは、子どもの「愛着障害」と大人の「愛着スタイル」は別の概念だということです。

大人の愛着スタイルは、幼少期の体験をもとに形成された、対人関係のパターンです。心理学では主に4つのタイプがあります。

  • 安定型: バランスよく他者と関われる
  • 不安型: 見捨てられ不安が強く、過度に確認行動をとる(試し行動が多い)
  • 回避型: 深い関係を避け、距離を置く
  • 恐れ・回避型: 親密さを求めるが同時に恐れる

これは病気ではなく、性格傾向の一つです。多くの大人が何らかの愛着スタイルを持っており、とくに恋愛や友人関係に影響します。自覚と努力、時には心理療法によって変化させることも可能です。

一方、子どもの愛着障害は、医学的な診断基準を満たす精神疾患であり、日常生活に深刻な影響を及ぼします。ただし、適切な環境と支援があれば改善が期待できます。

大人の恋愛での試し行動の多くは、「不安型愛着スタイル」に関連しています。医学的な愛着障害とは区別されますが、根底にある“見捨てられ不安”の心理的メカニズムは共通している場合があります。

次:試し行動にはどんな対応をすればいい?

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