毒親育ち、逆に「メンタルが強い」説はホント?医師監修 (1/4)
「周囲からは『しっかりしている』と言われる。でも本当は弱いし、生きづらいを感じることがある」。毒親のもとで育った人のなかには、こうした二面性を抱えて生きている方が少なくありません。
ネット上では「毒親育ちはメンタルが強い」という声がある一方、「強いふりをしているだけ」「本当は誰よりも傷ついている」という意見も見られます。実際のところはどうなのでしょうか。
心療内科を併設するなかざわ腎泌尿器科クリニック院長・中澤佑介先生監修のもと、「毒親育ち=メンタルが強い」説を深堀りしていきます。
「毒親育ち=メンタルが強い説」は本当なのか?
結論から言うと、「毒親育ち=メンタルが強い」という説は、単純に正しいとも間違っているとも言えません。
確かに、困難な家庭環境で育った人のなかには、逆境を乗り越える力を身につけた人がいます。幼い頃から自分で考え、自分で対処することを強いられてきた結果、問題解決能力や精神的なタフさを獲得したケースです。
しかし、「それは本当の強さとは限らない」という声もあります。
「生きていくために身につけた強さ」ではあるが……
毒親育ちの人が見せる「強さ」は、しばしば「生存戦略としての強さ」と捉えられています。つまり、つらい環境を生き延びるために身につけた防衛反応であり、心から安定している状態とは異なるということです。
たとえば、感情を表に出さない、弱音を吐かない、一人で何でも解決しようとする。こうした姿は周囲から「強い人」と見られがちです。
しかしその内側では、常に緊張状態にあったり、他者を信頼できなかったり、自分の感情がわからなくなっていたりすることがあります。
つまり、「強く見える」ことと「心が安定している」ことは、必ずしも同じではないのです。

気質や、周囲の人の影響もある
また、同じような家庭環境で育っても、その影響は人によって大きく異なります。
持って生まれた気質、親以外に支えてくれる大人の存在、学校や地域などの環境要因など、さまざまな条件が複雑に絡み合って、その人の心のあり方を形作っています。
「毒親育ちだからメンタルが強い(または弱い)」と一括りにすることはできません。大切なのは、自分自身の状態を正しく理解し、必要なケアを受けることです。
そもそも"メンタルが強い"ってどういうこと?
「メンタルが強い」という言葉は日常的によく使われますが、その意味するところは人によって異なります。ここで一度、「精神的な強さ」とは何かを整理してみましょう。
「強さ」にはさまざまな側面がある
心理学において、精神的な強さは複数の要素から成り立つと考えられています。
- ストレス耐性
困難な状況に直面しても、パニックにならず冷静に対処できる力。プレッシャーの中でもパフォーマンスを維持できること。
- レジリエンス(回復力)
つらい出来事があっても、そこから立ち直る力。一時的に落ち込んでも、時間とともに元の状態に戻れること。
- 感情調整能力
自分の感情を認識し、適切にコントロールできる力。感情に振り回されず、状況に応じた行動が取れること。
- 自己肯定感
自分には価値があると感じられること。失敗しても自分を責めすぎず、ありのままの自分を受け入れられること。
- 柔軟性
変化や予期せぬ事態に適応できる力。一つのやり方に固執せず、状況に応じて考え方や行動を変えられること。
「強く見える」と「実際に安定している」の違い
ここで重要なのは、「強く見える」ことと「心が安定している」ことは別物だということです。
たとえば、どんなにつらいことがあっても表情を変えず、弱音を一切吐かない人がいるとします。周囲からは「あの人はメンタルが強い」と評価されるかもしれません。
しかし、その人は感情を「出さない」のではなく「出せない」状態かもしれません。幼少期に感情を表現することが許されなかった、泣いたら怒られた、弱みを見せると攻撃された経験から、感情を封じ込めることを学んだ可能性があります。
これは「強さ」というより「麻痺」に近い状態です。感情を感じないようにすることで、一時的には傷つかずに済みますが、長期的には心身にさまざまな影響を及ぼすことがあります。

真の意味での精神的な強さとは、感情を抑え込むことではなく、感情を認識したうえで適切に対処できること。傷ついたときに傷ついたと認められること。そして、必要なときに人に頼れることです。
毒親育ちの人が見せる「強さ」が、どちらのタイプなのかを見極めることが大切です。
次:毒親育ちでも「強く見える人」の特徴とは
心療内科医に聞く「やってはいけないストレス解消法」ワースト3







