ヘルス&メンタル
2026年4月21日

心療内科医が教える「こなすだけの毎日」から抜け出す方法3つ ─脳を“快”で満たしてやる気と幸福感を取り戻す (2/3)

脳が”快”を感じると、やる気とパフォーマンスが変わる

では、“快”を感じたとき、脳の中では何が起きているのでしょうか。

脳は心地よさや喜びを感じると、副交感神経が優位になり、リラックスモードへと切り替わります。ストレスホルモンの分泌が抑えられ、自律神経のバランスが整うことで、脳は本来の働きを取り戻し、集中力や意欲が自然と回復していきます。

「やる気や前向きさは、努力だけで生まれるものではありません。脳が“快”を感じているときに、自然と湧き上がってくるものです」(横倉先生)                        

つまり、幸福感やモチベーションを高めるためには、まず脳の状態を整えることが欠かせません。トレーニングや仕事のパフォーマンスも、脳のコンディションに大きく左右されます脳がリラックスし、感覚が整っているときほど、集中力や判断力が高まり、本来の能力が発揮されやすくなるのです。

茶の湯は「和のマインドフルネス」──五感を使って脳を整える

横倉先生が脳のケアとして実践しているのが、茶の湯です。茶道は、日本の生活文化の中から生まれた伝統であり、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚という五感すべてを使う体験でもあります。

「茶碗の手触り」「釜の湯の音」「お茶の香り」「口に広がる味わい」。こうした一つひとつの感覚に意識を向けることで、人は自然と“今この瞬間”に心を置くようになります。これこそが「和のマインドフルネス」。五感を使って今を味わうことが、脳を整えることにつながるのです。

さらに茶道の考え方は、効率や成果を追いがちな現代人にこそ、大切な気づきを与えてくれます。忙しさの中で私たちは立ち止まる時間を失いがちです。だからこそ、五感を使いながら今を味わう「和の心」が、心と脳を整える貴重な時間になるのです。

「茶室では、人は社会的な立場や役割をいったん手放します。いわば“鎧を脱ぐ”ような状態です。茶室に入るとき、人は役職や肩書きではなく、ひとりの人間としてそこに座ります。そして一碗のお茶を静かに味わう。この時間が、脳を深いリラックス状態へ導き、本来の自分に戻る感覚をもたらします」(横倉先生)

横倉先生のクリニックでは、月に一度、誰でも参加できる茶会が開かれています。参加者の年齢や性別はさまざま。ある男性は体験後にこう語りました。 「普段は使っていない五感を使っている感覚がありました。“人”に戻ったような気がしました」

五感を使って一つの体験をゆっくり味わう時間は、忙しい日常の中で忘れがちな「人としての感覚」を取り戻すきっかけになるのかもしれません。

次:脳を快に導くシンプルな習慣

1 2 3