料理を学ぶのはパートナーの成績に関わることだから。プロ野球・涌井秀章の妻・押切もえ<前編>【アスリートの妻が教えるとっておきレシピ #2】
スポーツ選手を夫に持つアスリートの妻(アス妻)。ご自身も著名人として活躍されている注目のアス妻たちにご登場いただき、食事作りや勝負メシ、さらには日々の暮らしのことなどをお訊きしようという新連載。
第2回は、モデル・タレント・作家として活躍し、最近も自身が挿絵を描いた初の童話を上梓されたばかりの押切もえさん。2016年11月に千葉ロッテマリーンズの涌井秀章投手と結婚したピカピカの主婦1年生です。そんな押切さんのフレッシュなアス妻ぶりに迫ります!
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・夫の生活を優先して時間を区切って働く。いい仕事をして、いい顔で家に帰りたいから。プロ野球選手・涌井秀章の妻・押切もえ<後編>
日々の会話で夫の体調を感じとって献立を決める
--アスリートの妻として日々の食事作りで気をつけていることとか、工夫していることはありますか?
やっぱり本人の体調ですね。本人がどういう気持ちかとか、どういう体調か、ちょっと疲れが出ているんじゃないかとか、いちばんそれを。私が栄養面でぜんぶ押しつけるのではなくて、日々、夫と話したりしている中で感じとったりするようにしていますね。
--独身時代からインスタなどによく手料理の写真をアップされていて、もともと料理はお得意だったので食事作りの心配はなかったのでは?
お料理は好きでしたが、やっぱりパートナーの成績に関わることって思うと、好きだから作るとかだけではないんだろうなって思って。なので、結婚して少ししてアスリートフードマイスターの資格を取りました。それまでも独学で栄養学とか学んだり、本を取り寄せたりしていたのですごく違ったっていうことはなかったですが、答えあわせというか、これはあっていたんだっていう思いが強くなりました。
--独学で勉強されていて、さらに資格も取得されて。それは今、活かされている?
そうですね。トレーニング期とオフ期や試合前で食事の内容が違ったり、試合後の食事も大切だっていうことを学びました。どういう栄養バランスがいいかとか、すごくネットとかでも調べて(笑)。なんか、知れば知るほどおもしろいです。
試合前日は豚肉! 食材ありきでレシピを変える
--普段、旦那さまにメニューなどの相談をしたりしますか?
します。当日まで何が食べたいとかあんまり言ってくれなくて、だからといって何でもいいわけじゃなく、「うーん」とか言って(笑)。だから何品か候補を出して、そのときの気分で一番ピッときたものを作ります。
--それは、ほぼ毎回?
とくにやっているのは、試合の前の日ですね。夫の場合は先発投手なので、ルーティンもありますし、夜にトレーニングやマッサージがあったり、遠征があったりして家で食事を摂らないときもありますから。ホームとか関東での試合の前の日は絶対にそれは自分が聞く、リクエストを聞いて作るっていう感じですね。
--食事を作るときは相談しながらメニューを決めるっていう感じなんですね。お買い物とかはその都度?
前の日に済ませる場合とかもありますが、でも試合前に使う食材って実はだいたい決まっているんです。食材ありきで、レシピが違うとか。豚肉を使いますが、塩麹にするのか、ステーキにするのか、生姜焼きにするのかで違うみたいな。
--豚肉の部位とかも関係しますか?
やっぱりヒレとかモモの方がバラ肉より脂肪が少ないのでいいです。脂肪が多いと消化に時間がかかってしまうので。より良いたんぱく質を摂ってもらいたいっていう気持ちと、あと、豚肉はビタミンB1が豊富なので摂っておくと疲労も回復しますので。
ネギとかニンニクに含まれるアシリンという成分とビタミンBIを合わせると糖質をうまく燃やしてくれるので、次の日にスタミナを使うとか、エネルギーをたくさん消費する場合は糖質をたくさん摂って、かつ効率よく燃やしてくれるものにしています。
--毎回何品ぐらい作るとかって決めているんでしょうか?
結婚当初は一汁六菜を目標にやっていて、最初の頃それが本当に楽しくなっちゃって12〜13品作ったことがありましたが、さすがに食べられないって言われて(笑)。それは自分だけの満足だったんだって、品数は下げました(笑)。でもやっぱり汁物と主菜、副菜っていうのは入れます。お漬物とか、酢の物などの酸っぱいものとか。味のバリエーションを工夫しますね。
--押切さんが作る料理の中で旦那さまの好きな物、ヘビロテの料理などありますか?
そればっかりみたいのはないですが、やっぱり「豚キムチ」「スタミナ」みたいなワードにちょっと惹かれるみたいで(笑)。そういうものは増えますかね。私も好きになりましたね。
--ここぞ、というときの「勝負メシ」はありますか?
とくに勝負メシというわけではないですが、よく作るのは『豚肉のネギたっぷり生姜焼き』(※レシピはのちほどご紹介!)です。千切りにしたネギと青じそをたっぷりのせた生姜焼きで、お肉で巻いて食べます。
--それを食べると旦那さまは「明日、がんばるぞ!」みたいな感じに?
どうなのかなぁ(笑)。あんまりそんな「がんばるぞー!」みたいな感じではないので、ほわっとして(笑)。でも、すごく美味しそうに食べてくれているな、と感じます。
効率を考え、コツを掴むと料理は楽しい!
--押切さん的に毎日の食事作りを楽しむ秘訣とかってありますか?
私もまだまだ新米主婦なんですが、料理って効率とかを考えるとすごく楽しいです。あと、コツを掴むこと。たとえば、以前は鶏の胸肉ってちょっとパサパサする印象があってあまり好きじゃなかったんですけど、片栗粉をくぐらせてお湯に入れるとしっとり柔らかくなるとか、あまり火を入れすぎないでギリギリの加減とか。そういったコツを知ったら料理がとても楽しくなりましたね。コツを掴むことって大事だなと思います。
それから、私はネットとかレシピ本とかにもどんどん頼っています。「ピーマンと油揚げ」みたいなワードを入れたら、おいしそうなのがいっぱい出てくるじゃないですか。プロの方のレシピもいっぱい見られるし。私がよくやるのは食材を入れて、「プロ」って入れて検索するんです。そうすると、どこどこの料亭の誰々さんがとっておきを教えてくれますみたいなのが出てきて、ちょっとした煮付けとか煮びたしとかでも本当に美味しかったり、見栄えが素敵だったり。だからインターネットを駆使してやっていくっていうのはいいなって思いますね(笑)。
--見栄えでいうと、インスタの押切さんの料理には必ず赤い色とかが入っていて、本当にキレイですよね。
赤・緑・黄色は小さい頃から入れたほうがいいって言われていて、お弁当とかにも、赤・緑・黄色は必ず入れなさいって言われていました。子どもの頃、自分で作ったお弁当に無理やりトマトとブロッコリーを入れ、それと卵焼きが入ればなんとかなるみたいな(笑)。
でも、やっぱりそうすると華やかで見た目もキレイで、自然と栄養価もバランスもとれますし。最近習ったことでオリンピックカラーというのがあって、青の代わりに黒とか紫にたとえて入れるとさらに華やかでいいものが生まれるっていう。黒だとゴマとかキクラゲや海産物など、すごく体にいいものが多いんですよね。ちょっと無理やりな感じもするんですけど(笑)。
家は父も母も料理がすごく好きで、弟も釣った魚を普通に自分でさばいて肝和えとか作ったり。料理が大好きな家族なんです。みんな1人1つずつバーナーを持ってたんですよ!私だけ持ってなくて、バーナーの話にはついていけなかったり(笑)。
私が1人暮らしを始めてはりきって両親に料理を作ったとき、ちょっと野菜を炒め過ぎて緑黄色野菜の色がキレイじゃなくなっちゃったときは、すごく怒られました。それは人には出しちゃダメよって言われて。味は大丈夫だけど、人に出すときはもっと色もちゃんと見てねって、だからフライパンでただ炒めればいいだけじゃないんだって思って。
--それはいい教育をしていただきましたね。
そうですね、あの失敗は良かったって。身内だけで済みましたし(笑)。ああいうのはやっぱり怒られておかないと、もしかしたら外でやってしまったかもしれませんし。彩りとかもキレイな状態で出すと、歯ごたえや食感も良かったりしますよね。ベチャッとならないで。
--あと、盛りつけもすごくキレイですよね。盛りつけもお勉強されたんですか?
料理教室にすごく興味があって通った時期があります。20代半ばぐらいに本格的なところと、初歩的なところと2つぐらいかけもちで行って。まあ、いつかずっとやっていくだろうと思っていて、そのときもやっぱり、できなかったことがどんどんできるようになるのが楽しくなって習っていましたね。
だから高く盛りつけるとか、立体的にテーブルをコーディネートするとか、お皿に盛るときに6割で盛るとか。そういうことをちょっと意識するだけで変わるなって。モリモリに盛るってやっちゃいがちで、分量の加減がわからなくて「意外とこのお皿ちっちゃかった!」みたいな失敗もありましたけど(笑)。
外食で美味しいものの引き出しを増やして我が家の味を模索中
--旦那さまがお家にいるときはしっかりと気合を入れて料理されるんですか?
そうですね、気合いというか、楽しく作ってます(笑)。でも、外食も好きなので、2人で美味しいものを食べに行ったりもしますね。こんなレストランがあるって調べて行ったりするのも好きだから、本当に気負いなくやってる部分はありますね。
少し前に泉谷しげるさんにお会いして、泉谷さんが「若いときはね、はりきって作りたくなると思うけど、どんどん2人で美味しい店に行ったほうがいいよ」って。いっぱい思い出もできるし、経験値になるからって。家の味が固まる前にいろいろ食べるのもいいよっておっしゃってたので、そこはまあ、お言葉に甘えて(笑)。美味しいものをいっぱい知って、夫が本当に好きなものってどういうものかなとか、自分の家でもこういうのが作れたらいいなとか、引き出しを増やすのもいいかなとも思います。
--球団の奥様方と料理の情報交換をしたりとか、ネットワークとかあったりしますか?
たまに旦那さん方もあわせて集まったりします。夫婦同士でとか、お子さんがいる家族同士でとか。そのちきにちょっと私も聞くんですけど、先輩の奥様方は「ぜんぜん大丈夫よ〜」って言ってくださいます。そういう方のほうが多い気がしますね(笑)。どっしり構えられているっていうか、はい(笑)。
--アスリートフードマイスターの資格を持つ押切さんから、スポーツをする家族がいる家庭ではこれを常備するといいよといったものはありますか?
そうですね、本当に良質なオイルを摂ったほうがよいということを、私はとくに言いたいです。多少値がはっても、えごま油とかアマニ油をフレッシュな状態で使うっていうのはすごくいいことなんですよ。逆にいうと質の悪い油を使いすぎるとどんどん体が酸化して錆びていくので、油の使い方はすごく意識しています。
あとはニンニク、生姜は欠かせないですね。これからの季節だと、かぼちゃやゴーヤもいいですね。ゴーヤはちょっと苦味がありますけど調理法によっては美味しくなりますよ。
《豚肉のネギたっぷり生姜焼きのレシピ》
<材料(2人分)> ※一般的な量です。アスリートの方は調整してくださいね
豚ヒレ肉(焼肉くらいの薄さにカットしてもらう) 200g
※もっとボリュームが欲しい方はロース肉生姜焼き用に変更してください
【下味】
砂糖…大さじ1/2
※身体のためにはきび砂糖や甜菜糖、ココナツシュガーの方がよりおすすめです
醤油…大さじ1
ショウガ(すりおろす)…大さじ1/2
葛粉(なければ片栗粉)…大さじ1〜2
お好みで卵
ねぎ…1/2本
青じそ(千切り)…5枚
ごま油…大さじ1と1/2
塩…少々
<作り方>
1.ボウルに下味の材料の砂糖、醤油、ショウガ、(お好みで卵)を入れてよく混ぜ、葛粉を加えてさらに混ぜる。
2.1に豚肉を1枚入れて裏返し、次の1枚を重ね、2枚まとめて裏返す。残りも同様に下味をつけていく。最後に大さじ1のごま油をかける。
3.ネギは4cm長さに切り、芯を抜いて千切りにし、10分くらい水にさらす。青じそも千切りにして水にさらす。
4.ネギと青じそをザルにあげてしっかりと水気を切り、ごま油1/2であえて塩少々を振る。
5.フライパンを温めて2の肉を並べ入れ、中火で両面を焼く。器に盛り、4をのせてできあがり。あれば糸唐辛子を盛っても華やか。
※お肉でネギと青じそを包んで食べてくださいね
〈後編はこちら〉
・夫の生活を優先して時間を区切って働く。いい仕事をして、いい顔で家に帰りたいから。プロ野球選手・涌井秀章の妻・押切もえ<後編>
[プロフィール]
押切もえ(おしきり・もえ)
モデル、作家。1979年生まれ。千葉県出身。
モデルにテレビ・ラジオや広告キャラクター、執筆活動と多方面で活躍中。2015・2016年には二科展絵画部門で入選し、2016年に出版した短編連作集「永遠とは違う一日」(新潮社)は山本周五郎賞候補にノミネートされた
<Text:京澤洋子(アート・サプライ)/ヘア&メイク:深瀬介志/Photo:有坂政晴>