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リーダーはあざといくらいに努力を見せた方が良い【里崎智也のビジネス現場で役立つ思考術#2】

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 元千葉ロッテマリーンズ捕手の里崎智也さんが『エリートの倒し方——天才じゃなくても世界一になれた僕の思考術50』(飛鳥新社)が上梓しました。

 前編では、調子を維持するための方法や先輩との付き合い方について話を伺いました。後編の今回は、リーダーの取るべき行動やマネジメント方法、さらには子育てなどについても里崎さん流の考え方を教えてもらいました。

悪いところを探すのではなく、良いところを見つけて褒める

——前回、「自分が責任を取る」というリーダーは信用できないと聞きました。

自分が信頼されてなくて威厳もないし、説明力がないから、言うことを聞いてもらえないときに、そういうことを言うんじゃないですかね。

——その逆に、ロッテ時代のボビー・バレンタイン監督は、頭ごなしに指示するわけではなく、しっかり理由を説明しながら戦わせてくれたと本には書いていますね。

なかには、上司や先輩の言うことに「はい」と言わなきゃいけない組織もあるかと思いますが、ボビーはきちんとこちらの意見も聞いてくれる監督でした。ときにはリードや戦術をめぐって口論になったこともありますが(笑)。でも、それはケンカではなく、あくまでお互いの理解を高めるためのやりとりであって、それが結果としてチームに良い影響を与えていたと思います。

——WBCで指揮を執った王貞治監督は威厳があるタイプですね。

もう王さんは次元が違いますから。存在するだけで威厳がある。あとミスター(長嶋茂雄さん)も。このふたりの文句を言う人は聞いたことないですね。人間力が違うんですよ。

——では、ご自身が教える立場になった場合、どのような姿勢で後輩と接したのですか?

教える相手のことをひたすら観察しました。そいつがどんな心の持ちようなのか、何が良いのか、何が悪いのか。それを知らないと何もアドバイスできないですから。観察した後なら「調子が良かったときは、もっとこうしてたはず。次はこうしてみたら」って方法論まで落とし込んで教えられます。

——観察するうえで気をつけていたことはありますか?

とにかく良いところを探すことに注力します。悪いところを指摘するのは誰でもできるんです。でも、価値観が違う相手の良いところを見つけて、伸ばしていくのはすごく難しい。人間って、自分を上に見せたい気持ちがあるから、すぐに他人のダメなところばかり見てしまうんですね。「自分のチームがうまくいかない」っていう上司がいるとしたら「部下全員の良いところを5個言えますか?」って聞きたいですね。もし言えないのに業務が回ってるなら、部下が優秀なだけかもしれないですから。

小さな成功体験が大きな成果を生み出す

——勝てるチームを作るために必要なのは、成功体験だとも語っています。

小さなことでもい良いので、チームで成果を上げたという成功体験が重要ですね。例えば、ボビー(バレンタイン監督)は、勝っている試合にベンチの選手をどんどん出場させていました。そうすると、途中から出場した選手も「自分も勝ちに貢献した」と実感が持てるので、充実感が得られて士気が上がるんです。日本のスポーツ界では、大差で負けてる試合で控えを使って主力を温存する傾向があるんですけど、それではチームが負けを共有するだけだから逆効果だとボビーは言っていました。ビジネスでも成功してるプロジェクトにちょっとでも参加できれば、士気が上がると思うんですよね。

——ただ、勝っている試合や、大事なプロジェクトで主力以外を使うのは、少し心配な面もある気がします。

そこをうまくやっていくのが上に立つ人間の度量だと思います。プレッシャーをそこまで感じずに、ふだん通りやること。野球で言えば、試合に負けた責任を取るのは監督ですよね。だって、僕が5本ホームラン打って負ける試合もあれば、5三振して勝つ場合もあるわけで。もちろん勝つための最善を尽くしますけど、結果にまで責任は持てない。

——たしかに、会社に置き換えても、ひとりの会社員に、会社全体の業績の責任はないですね。

営業が10部あったとして、そのうちの1部だけ成績が下がっても、会社が傾く……ってならないですよね。ひとつのプロジェクトの成否にプレッシャーを感じすぎないようにして、うまくいってるプロジェクトに若手をどんどん関わらせていけば、チームの士気がどんどん上がっていくと思います。

リーダーは率先して努力を見せていくべき

——ビジネスマンのなかには、若くしてマネジメントをする立場になる方もいます。年上や、自分よりできる部下がいる場合もありますが、リーダーとして信頼を得るためにはどのように振る舞うべきでしょうか?

そもそも、僕は年齢を気にしたことがないんです。一線を越えないように上の人を立てることはしますけど、言うべきことは言ってきました。ただ、それをするためには、自分が正しく生きている必要がありますよね。「お前だって〇〇ができてないだろ」って言い返されないように。遅刻するなって言って、自分が遅刻しないとかね。

——それをしてしまったら本末転倒ですよね。

そういった隙を与えないためには、あえて周りに努力している姿を見せることも必要で。バント練習とか、必ずしもやらなくても良い練習まできっちりやるんです。あとは、あえて誰よりも早く出社して「あの人、何時から来てんの?」って思わせたり。

——なかには努力をしていることを周りに見せたくない人もいると思います。

「努力は影で」って言う人もいますけど、それが評価されるのは結果を出してる人だけ。もちろん、見せる努力ばっかりしても意味ないですよ。ただ、リーダーは結果だけ出してるだけではダメなんです。もちろんミスしてしまうときもあるんですけど、リーダーとしては「サトさん(里崎さんの愛称)が、あれだけ練習しててミスするなら仕方ない」って思われるくらい、しっかり準備するんです。その積み重ねが信頼につながっていくわけです。

好きな気持ちを維持させることが一流を生み出す

——30代以上のビジネスパーソンのなかには子育て中の人もいて、なかにはスポーツ界で活躍させたいというケースもあると思います。子どもがスポーツを始める場合、どのような環境が良いのか教えてください。

どんな競技でも同じで、本人が競技を好きでいられる環境づくりをしてあげたら良いんじゃないでしょうか。結局、プロになって活躍する可能性なんてほとんどないですから。無理矢理に練習を課してもイヤになってやめてしまうだけだと思うんですよ。

——なかなか厳しい言葉ですね。

それぐらい競争の激しい世界ですからね。僕の大学の先生が言ってたんですけど、子どもをある分野の一流に育てたい場合、親が同じ分野の一流か、逆に何も知らないかのどっちかのケースがほとんどなんですって。それは一理あるなと思っていて、親って子どもに過度な期待を抱くから、いろんなことをやらせようとするんです。テレビや本からいろんな情報を得ては子どもにやらせようとする。それで子どもはイヤになって潰れていくんですね。だから、逆に何も言わないで、子どもの好奇心のままにやらせる方が伸びていくんだと思います。

——でも、言いたくなってしまう親も多いですよね。

そうですね。やっぱりスポーツファンはみんな評論家なので。僕だってそうですよ。テレビでサッカーの試合を観てても「なんでそこで外すんや!? そりゃ負けるで……」って言いたくなる。でも、子どもにそれをやってしまったら、やる気をなくしてしまうはず。

——具体的にはどんなことを親はするべきなのでしょうか?

なんでも良いんですよ。野球だったらプロ野球の試合を見に行くとか、選手と触れ合えるイベントに行ってみるとか。カッコ良いな、あんな風になりたいなって思わせられるかが勝負。「あの選手みたいになりたかったら、もっとご飯食べて、バット振った方が良いんじゃない?」って言えるじゃないですか。そこで、「もっと内側からバットを出して……」とか言い出したらアウト。それは指導する自分に酔ってるだけなんですね。僕が小手先でサッカーのことを言ってもダメなのと同じで。

——細かい技術は教えず、子どもが自然と練習したいと思うようにするのが大切なんですね。

好きだったらやめない。そして、やめないかぎりはどこかで突然変異する可能性がある。実際、僕だって大学時代までプロに行くとは思ってなかったんですから。

◆前編はこちら
「里崎智也のビジネス現場で役立つ思考術 #1」反省は調子が良いときにするべき!?

 [プロフィール]
里崎智也(さとざき・ともや)
1976年5月20日生まれ、徳島県出身。鳴門工業高校から帝京大学を経て、1998年のドラフト2位で千葉ロッテマリーンズに入団。2005年、2010年には日本一を経験。2006年のWBCでは正捕手として日本を世界一に導く。2014年に現役引退し、2015年1月より、千葉ロッテマリーンズのスペシャルアドバイザーに就任

<Text:森祐介/Photo:今井裕治>

 

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