薬剤師が教える、湿布の効果的な使い方。打撲や腰痛にはどれ?かぶれを防ぐには?
痛みや炎症を抑えるために病院などで処方されるのが湿布です。温湿布や冷湿布、パップ剤やテープ剤など、種類がたくさんあります。
それぞれ、使用感や症状などによって使い分けるのですが、一体なにが違うのでしょうか。今回は、湿布の種類や使い方、内服との違い、副作用などについて紹介します。
<この記事を書いた人>
相田彩(あいだ・あや)
薬剤師。昭和薬科大学薬学科卒業。総合リハビリテーション病院、精神科専門病院、調剤薬局に勤務するなかで、漢方薬が使用される症例の多さと、体質や症状に適した漢方を使用することの重要性を実感する。漢方薬の力をより多くの方に広めるために、漢方のプロがAIを活用して自分に適した漢方薬を選び、お手頃価格で自宅に郵送してくれる「あんしん漢方(オンラインAI漢方)」で情報発信をしている。
湿布とは
湿布とは、ある程度水分を含んだ布のことを指し、なにかに効果を与えるために使用する薬剤です。
痛みや炎症などに対してよく処方されるのが、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる消炎鎮痛剤の「ロキソニンテープ」と「モーラステープ」です。これらは“第二世代の湿布”と呼ばれています。
強さは、ロキソニンテープも、モーラステープもあまり違いはありません。適正に使用すれば副作用も少なく、安全に使用できます。
しかし、「モーラステープ」には、光線過敏症という副作用があると報告されています。これは、貼った場所が紫外線にあたるとかぶれてしまうという症状です。はがした後も3〜4週間は注意が必要なため、貼った場所を服などで隠すことをおすすめします。
湿布に含まれる主な成分と効果
湿布に含まれる成分と効果について解説します。鎮痛剤にも種類があるため、痛みや症状によって使い分ける必要があります。
サリチル酸メチル
筋肉や関節の炎症を抑えることで、痛みを和らげる効果があります。特有の芳香がある消炎成分で、慢性の痛みより急性の痛みに効果的です。
カプサイシン
カプサイシンは、唐辛子に含まれる辛み成分です。末梢血管まで血流をよくするため、体を温める効果があります。
また、感覚神経を鈍らせるので鎮痛作用もあります。
非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)
非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)は、痛み・発熱・炎症などをおこす「プロスタグランジン」という物質の産生を抑制することで、症状を軽減します。
プロスタグランジンは、シクロオキシゲナーゼ(COX)と呼ばれる酵素によって作られ、NASIDsは、COXを阻害することで効果を発揮します。
非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の湿布は“第二世代の湿布”と呼ばれています。
湿布の種類
湿布の種類にはパップ剤とテープ剤があり、それぞれ長所と短所があります。はがれやすさ、粘着力、かぶれやすさなどを考慮して選びましょう。
パップ剤
パップ剤は、支持体に不織布などが用いられており、厚みがある白色の見た目です。有効成分と水分を含む軟膏で構成されているため、はがれやすく、貼ったときに冷たく感じます。
テープ剤
テープ剤は、伸縮性のあるニットなどの基剤に、有効成分や香料などが含まれています。薄くて茶色い見た目で、強い粘着力が特徴です。
粘着力が強いため、はがしにくい場合もあります。
湿布の使い分け方
湿布は、怪我や痛み、筋肉疲労などシーンごとに適したものを使い分けましょう。
急性の怪我の場合は“冷湿布”
打撲やねんざなど、急性の怪我には冷湿布を使いましょう。怪我をしたときは、患部に腫れや熱、炎症が起きています。その場合は「アイシング」で患部を冷やすことが大切です。
アイシングとは
氷を入れたビニール袋や氷嚢(ひょうのう)を、15~20分ほど患部に当てる応急処置。アイシングによって血行を悪くさせ、筋肉や靭帯、腱などの組織の損傷で起きる炎症を最小限にとどめる目的として活用されています。
慢性的な痛みの場合は“温湿布”や“第二世代の湿布”
慢性の痛みには、血行を促進する温湿布や、鎮痛・消炎作用がある非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)を配合している第二世代の湿布(例:ロキソニンテープ、モーラステープなど)を使いましょう。
経口と比べ、血中濃度は内服の10分の1程度ですが、痛みの局所(筋肉)への到達度は内服の30倍程になります。
スポーツ後の筋肉疲労は“第二世代の湿布”
スポーツ後の筋肉疲労には、第二世代の湿布がよいでしょう。スポーツ直後の筋肉は熱をもっているため、冷湿布を使います。
なお、慢性的な筋肉疲労では、血行を改善して筋肉をほぐすために温湿布がおすすめです。
湿布を使うときの注意点
どんなにいい成分が入っていても、適切に使用しなければ効果は低下してしまいます。正しく使うためのポイントを知っておきましょう。
かぶれがないかしばらく注意する
湿布の成分などが肌に合わず、かぶれやかゆみがあらわれた場合には、すぐにはがしてください。しばらく様子をみても改善されない場合は、医師に相談しましょう。
用法用量を守る
1日の使用回数を守り、長時間貼ったままにすることは避けます。湿布にも持続時間があるため、決められた用法・用量を守りましょう。
飲み薬との併用に気を付ける
飲み薬を使う場合は、外用剤である湿布の併用は基本的に推奨できません。血中の薬物濃度をあまり上昇させない湿布とはいえ、オーバードーズになる可能性もあります。
場合によっては両方使用するケースもあると思いますが、そのようなときは医師や薬剤師に相談してください。
湿布以外でできる痛みへの対処法
湿布以外でできる痛みへの対処法について紹介します。
アイシングで筋肉の炎症を抑える
急な捻挫や筋肉痛などが起きたときは、炎症が起こって患部が熱をもっています。湿布がない場合でも、水や氷、濡れタオルなどで冷やすとよいでしょう。
ウォーキングや入浴などの軽い運動を行う
軽い運動では血行が改善され、体が温まります。冷えで痛みがある場合は、入浴やウォーキング、カイロを貼ることなどがおすすめです。
湿布で痛みが消えない場合は受診を
湿布はあくまでも対症療法です。5〜6日経ってもよくならない場合は使用を中止してください。
また、湿布の成分が合わないと痛みが消えないこともあります。数日使用しても改善されない場合は、整形外科や皮膚科などの専門科を受診しましょう。
受診するときは、今まで使用していた湿布薬の情報を医師に伝えます。また、いくつか湿布を使った場合は、どれが効果的だったかなどの情報もあるとよいでしょう。
痛みの種類によって使い分けると効果的
湿布は、急性期の痛みには冷湿布、慢性には温湿布などと使い分けるとよいでしょう。また、パップ剤とテープ剤は使用感や粘着力が違います。肌の弱い人ははがすときに負担がかからないパップ剤がおすすめです。
また、温湿布に含まれているカプサイシンなどの成分は、刺激がでることがあります。とくに入浴直前にはがすと刺激がでるため、入浴の30分以上前までにはがしておくとよいでしょう。
湿布を効果的に使い分けて、痛みに対処していきましょう!
<Edit:編集部>