2023年10月18日

筋トレを「倍速」でやるメリットとは (1/2)

以前の記事で、筋トレを行う際には“挙上重量”と“回数”の他に「時間」の概念を取り入れることをおすすめしました。

その理由は、同じ動作を行うのであれば、スピードを高めることによってトレーニング効果が上がるからです。

しかし最近、実は速いスピードで行う筋トレ、いわゆる「クイックリフト」は健康にもよい効果をもたらすとの研究結果が、ヨーロッパの医学学会で発表されています。

どうやら長生きに良い影響があるらしい

2019年4月12日にポルトガルのリスボンで行われた「EuroPrevent 2019」でヨーロッパ心臓医学ソサイエティが発表した研究(※1)によると、瞬間的に発揮される最大筋力が高い人ほど長生きする傾向があるという結果になりました。

研究内容

ブラジル・リオデジャネイロのアラホ博士を中心とした研究グループは、3878人の一般人を対象に2001年から2016年までの長期間に渡って追跡調査を行いました。

調査対象になったのは41歳から85歳までの非アスリートで、平均年齢は59歳、男女比は男性68%・女性32%。

最大筋力を測定する方法として、立った状態で重量ケーブルに繋がったハンドルを腰の下から顎の下まで一気に引き上げる動作(Upright Row Exercise)が選ばれました。

研究の結果「最大筋力が平均以上だと生存率が高くなった」

その結果、男女とも最大筋力がそれぞれの平均以上であると生存率が高くなったとのこと。逆に最大筋力が平均の50%以下で4~5倍、25%以下で10~13倍もの範囲で、死亡率が高まることがわかりました。

これを受けて、アラホ博士は以下のように述べています。

「高齢者が椅子から立ち上がるときとボールを蹴り上げるときは、筋肉の大きさよりもその筋肉が発揮するパワーが重要になります。ところがウェイト・トレーニングの多くはパワーよりも筋肉の大きさを重視する傾向があります。我々の研究では、より多くのパワーを持つ人ほど長生きすることを初めて明らかにしました」

パワー! とは「一定時間内に行われる仕事量」のこと

パワーとは、一定時間内に行われる仕事量を指します。筋トレにおいては、同じ挙上重量と回数(仕事量)であれば、それを行う速度が速ければ速いほどより多くのパワーが発揮されるというわけです。

あるいは、同じ制限時間内に挙上重量と回数(仕事量)を増やしても同じ結果が得られます。

筋トレは、ゆっくりとした動作で行う方が安全で健康的に見えがちです。しかし、博士はその反対に、クイックリフトを行った方が長生きに繋がると推奨しています。

40代を境に筋力は衰えていく

一般的に、40歳程度を境に最大筋力は低下するもの。

博士は、「最大筋力がすべての死因における死亡率と大きく関係することがわかりました。幸いなことに、それぞれの性別の中央値より少し高いだけの筋力さえあれば、生存率を最大にすることが出来るのです」と語っています。

さらに彼は、以下のようにも述べました。

「パワー・トレーニングはモノを持ち上げたり動かしたりするスピードと重量の最良な組み合わせを探さなくてはいけません。多くの場合、ジムで筋トレを行う人は重量と回数だけに気を取られて、それを行うスピードについては無頓着になりがちです。しかし、パワー・トレーニングの適切な成果を得るためには、筋トレのスピードを通常考えられるものより速くするべきなのです」

最大筋力を高める筋トレ方法

それでは、そのパワーを生み出す最大筋力を高めるためには、具体的にどのようなトレーニングをするべきなのでしょうか。

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