子どもの困った行動、それ「愛着の問題」かも?見逃したくないSOSサイン (1/3)
「うちの子、どうしてこんなに人を信じられないんだろう」「初めて会った人にもベタベタして心配」。我が子の人との関わり方に違和感を覚えたとき、それは「愛着」に関する問題が起きているかもしれません。
愛着に関する障害の基本的な知識から、具体的な改善策までをお伝えします。監修は、一般社団法人マミリア代表理事で臨床心理士、公認心理師の鎌田怜那さんです。
なおこの記事では、医学的診断としての「愛着障害」(反応性愛着障害・脱抑制型対人交流障害)について解説します。
一般に「愛着障害」という言葉は幅広く使われますが、医療では主に生後9か月〜5歳ごろまでの不適切な養育経験が原因で起こる、対人関係の深刻な困難を指します。
この期間に発症しても、症状が学齢期〜青年期まで続くことがあります。
愛着に関する障害とは? 信頼できる養育者(安全基地)が機能しなかった状態で起こる疾患
愛着とは、赤ちゃんが特定の養育者との間に築く、深い情緒的な絆のことです。
「お腹が空いた」「怖い」と泣いたときに、いつも同じ人が優しく応えてくれる。この繰り返しの中で、子どもは「困ったときには助けてもらえる」「この世界は安全だ」という基本的な信頼感を育んでいきます。
この信頼できる養育者のことを、心理学では「安全基地」と呼びます。

ところが、さまざまな理由でこの安全基地が十分に機能しなかった場合、子どもの対人関係や情緒の発達に影響が出ることがあります。これが「愛着に関する障害」です。
医学的には、愛着に関する障害には主に2つのタイプがあります。
反応性愛着障害(RAD: Reactive Attachment Disorder)
他者に対して過度に警戒し、慰めを求めたり受け入れたりすることが極端に少ないタイプです。傷ついても泣かない、抱っこを拒む、大人に助けを求めないといった様子が特徴的です。
まるで心に厚い殻を作って、誰も入れないようにしているかのように見えることがあります。

脱抑制型対人交流障害(DSED: Disinhibited Social Engagement Disorder)
見知らぬ人に対しても過度になれなれしく接するタイプです。初対面の大人にも警戒心なく近づき、ついて行こうとしたり、過度に身体接触を求めたりします。
一見人懐っこく見えますが、実は「特別な人」という認識が育っていない状態といえます。

これらの診断は、生後9か月から5歳頃までの間に、不適切な養育環境(ネグレクト、虐待、頻繁な養育者の交代など)があったことが前提となります。
つまり、単に「人見知りしない子」や「恥ずかしがり屋」とは明確に異なる、医療的な診断基準がある状態なのです。
ただの性格じゃない!子どもの愛着に関する障害には医学的な診断基準がある
ここで注意したいのは、大人の「愛着スタイル」と子どもの「愛着に関する障害」は別物だということです。
大人の愛着スタイルとは、幼少期の体験をもとに形成された、対人関係のパターンのこと。「不安型」「回避型」「安定型」といった分類があり、恋愛や友人関係での振る舞いに影響します。
これは病気ではなく、性格傾向の一つと考えられています。多くの人が何らかの「愛着のくせ」を持っており、自覚と努力によって変化させることも可能です。
一方、子どもの反応性愛着障害や脱抑制型対人交流障害は、医学的な診断基準を満たす(精神)疾患です。
日常生活や発達に深刻な影響を及ぼし、専門的な介入が必要になることがあります。ただし、これも「一生変わらない」ものではなく、適切な環境と支援によって改善が期待できます。
子どもに見られやすい、愛着に関する障害のサイン
愛着に関する障害のサインは、一つひとつを見ると「よくある子どもの行動」に見えることもあります。しかし、その程度が極端だったり、年齢にそぐわなかったり、複数のサインが重なっていたりする場合は注意が必要です。
人に過度に警戒する、頼れない
反応性愛着障害の傾向がある子どもは、他者との関わりを極端に避けようとします。具体的には以下のような様子が見られます。
- 転んで怪我をしても泣かない、助けを求めない
- 抱っこや身体接触を嫌がる、固まってしまう
- 大人に話しかけられても反応が薄い、目を合わせない
- 困っているはずなのに「大丈夫」と言い続ける
- 遊びに誘われても一人でいることを選ぶ
- 感情表現が乏しく、喜怒哀楽がわかりにくい
これらは「手のかからない良い子」に見えることもありますが、実は「人に頼っても無駄」「期待しても裏切られる」という諦めの表れかもしれません。
本来、子どもは困ったときに大人を頼るものです。その自然な行動が見られないとき、心の中で何かが起きている可能性があります。
見知らぬ人になれなれしい
脱抑制型対人交流障害の傾向がある子どもは、対人関係の境界線が曖昧です。
- 初めて会った大人にもすぐに馴れ馴れしく話しかける
- 見知らぬ人の手を握ったり、膝の上に座ろうとする
- スーパーなどで知らない人についていこうとする
- 特定の養育者への特別な愛着が見られない
- 誰に対しても同じように接する(お母さんも先生も近所の人も区別しない)
- 過度にボディタッチが多い

通常、2〜3歳頃の子どもは「人見知り」をするものです。これは健全な発達の証で、「この人は安全」「この人は知らない」という区別ができているサインです。
ところが愛着に課題がある場合、この区別がつかず、誰に対しても警戒心を持たないことがあります。
一見社交的で可愛らしく見えるため、周囲が問題に気づきにくいのがこのタイプの特徴です。しかし、防犯上のリスクもあり、また本人も深い人間関係を築くことが難しくなる可能性があります。
学校・園で出やすい問題行動は? 衝動・嘘・試し行動など
愛着の課題は、集団生活の中でより顕著に表れることがあります。
衝動的な行動をしてしまう
感情のコントロールが難しく、思い通りにならないとすぐにかんしゃくを起こしたり、友達を叩いたりすることがあります。
これは「安全基地」で感情を受け止めてもらう経験が少なく、自分で気持ちを落ち着かせる方法を学べていないためです。
頻繁に嘘をつく
「自分を守るための嘘」が多いのも特徴です。叱られることへの過度な恐怖から、明らかにわかる嘘でも言い続けることがあります。
また、注目を集めるために話を盛ったり、事実と異なることを言ったりすることもあります。
試し行動をする
「この先生は本当に自分を見捨てないのか」を確かめるために、わざと困らせる行動をとることがあります。ルールを破る、挑発的な言葉を使う、わざと問題を起こすなどです。
これは「見捨てられる前に、自分から関係を壊す」という防衛反応でもあります。
愛着や発達に障害がない子どもも、成長過程で大人を試すような行動をすることは普通です。しかし愛着に関する障害における試し行動は、その頻度・強度・持続期間が極端で、本人や周囲が深刻に困っている状態を指します。
極端な反応をする
小さな注意でパニックになったり、逆にどんなに叱られても平然としていたりと、反応が極端です。感情の調整機能が未発達なため、ちょうど良い反応ができないのです。
これらの行動は、決して「わがまま」や「性格の問題」ではありません。生き延びるために身につけた、子どもなりの対処方法なのです。
次:なぜ愛着に関する障害になる? 子どもの愛着形成を妨げる要因
子どもの頃の愛情不足、大人になった“今”にどう影響する?当事者が語る向き合い方








