ASDの人が「自己中心的」「他者視点がない」と誤解される理由とは? (1/3)
ASD(自閉スペクトラム症)の人はしばしば「自分の話ばかりする」「人の気持ちが分からない」と言われることがあります。
しかし、ASDの人は他者への関心や思いやりが欠けているわけではありません。多くの場合、情報の受け取り方や伝え方に、生まれつきの特性による違いがあるだけなのです。
その違いが、周囲からは「自己中心的」に見えてしまうことがあります。神谷町カリスメンタルクリニック院長・松澤 美愛先生監修のもとお届けします。
ASDの人は「他者視点がない」と言われるのはなぜ?
「他者視点がない」という言葉は、心理学でいう「心の理論」という考え方と関係しています。心の理論とは、相手の気持ちや考えを推測する力のことです。
過去の研究では、ASDの人はこの力に特有の特徴があるとされてきました。相手が何を考えているかを直感的に読み取ることが苦手な場合があり、この特徴が「他者視点がない」という表現につながっていると考えられます。
ただし、ここで誤解してほしくないことがあります。それは、「相手の気持ちを考えられない」ことと、「相手を思いやる気持ちがない」ことは、まったく別だという点です。
相手を大切に思う気持ちは高い
ASDの人の多くは、相手を大切に思う気持ちを強く持っています。ただ、その気持ちを察したり、表現したりする方法が、多数派の人とは異なるだけなのです。
近年の研究では、この認識にも見直しが進んでいます。すれ違いはASDの人だけの問題ではなく、特性の異なる者同士がコミュニケーションを取るときに、双方の側で理解のズレが生まれやすいという考え方が注目されています。
つまり「ASDの人が一方的に他者視点を欠いている」というより、「お互いの前提が違うために、うまく伝わらない」と捉えるほうが実態に近いといえます。
ASDの人が「自己中心的」と誤解されやすい理由
ASDの人が自己中心的だと誤解されやすいのには、いくつかの理由があります。
興味のあることを話し続けるときがある
まず挙げられるのが、興味のあることを熱心に話す傾向です。好きなテーマについて詳しく、時に長く話し続けることがあり、これは知識欲の高さや物事への深い探究心の表れでもあります。
ただ、聞き手の反応に気づきにくいことがあるため、「一方的だ」と感じられてしまうことがあります。
物言いが率直であることが多い
次に、率直な物言いも理由のひとつです。ASDの人は思ったことをそのまま伝える傾向があり、これは誠実さの表れでもあります。
しかし、相手の気持ちを気遣った婉曲的な言い方が少ないため「配慮がない」と受け取られてしまうことがあります。
急な予定変更などが苦手な傾向
また、変化への対応が苦手な特性も関係しています。決まった予定やルールを大切にする傾向があるため、急な予定変更などに強いストレスを感じやすく、周囲からは「わがまま」に見えてしまうこともあります。
実際は、見通しの立たない状況への不安が強いだけなのです。
表情やリアクションを表に出しにくい
さらに、表情やリアクションが控えめに見えることも、誤解を招きやすいポイントです。
内心では強く関心を持っていても、それが表情や相づちとして表に出にくいことがあり、「興味がなさそうだ」「冷たい」と受け取られてしまうことがあります。
これらはいずれも、悪意によるものではありません。情報の処理の仕方が多数派とは違うために生じる行動なのです。
次:ASDの人によくある「コミュニケーションのすれ違い」とは






