元プロテニスプレーヤー杉山愛を育てた、杉山家直伝「子どもの可能性を伸ばす10の黄金法則」とは<Vol.3>
愛娘の(杉山)愛さんをはじめ、ご自身のテニススクールでもアスリートを輩出している杉山芙沙子さん。代表を務める「渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ すぽっと」(以下、「すぽっと」)で子どもと親、指導者とともに成長していくことを目指しています。
スポーツを通じて、体だけでなく心も育てることができると杉山さん。スポーツ界の第一線から、さらには科学・医学の専門的見地から、そして2人の娘を持つ母でもある杉山さんの、子育てとはどんなものなのでしょうか?
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自分の力で今を生き抜く子どもを育てる
——杉山さんが代表を務める「すぽっと」の『スマイルシップスポーツプログラム』は、2歳〜小2まで参加可能ですよね?
本当は、0歳からできます。でも現状、今の私たちがお預かりできるのは、先ほども触れたとおり外界に興味を持つようになる2歳くらいからですが。子どもはオギャーっと生まれたときから声も出すし、バタバタ手足も動かします。だから寝かしっぱなし、座らせっぱなしじゃなくて、手足の動きを助長できるエクササイズをお母さんに教えられればと思っています。ですから今、普段の生活の中にあるものを交えてできるプログラムの研究を少しずつ進めているところです。
——子どもたちの元気な声が絶えない「すぽっと」。何度も利用した親子に聞くと、子どものほうから「楽しいから行きたい」と言ってきたそうです。
それはいいことですね。「すぽっと」はおけいこでも、アスリートを育てる教室でもありません。まずは、スポーツは楽しくてステキなことだと知ってもらうことが目的です。そのために「楽しさ」は大きなキーワードですね。
スポーツはみんなでワイワイ楽しむだけではなくて、達成感を得る楽しさもあります。苦手を克服するために、工夫をこらして少しでも苦しさを緩和させたり、楽しくやる方法を考えたりすることの楽しさもある。
また、それがスポーツじゃなくて別のものにも置き換えることができますよね。人生もそうです。どんなにきつい仕事でも、うまくいけば達成感が得られますし、仕事があるから楽しいっていうのもあると思います。子どもたちが「すぽっと」での体験を通じて成長し、自分の足で立って生き抜いていく力をつけてくれたらいいですね。
スポーツの楽しさは脳に刺激を与えて活性化し、さらには腸内環境にも影響?! 意外な脳と腸の関係
——学生時代を思い出すと、必ず運動嫌いの同級生がいたものです。
私が『スマイルシップスポーツプログラム』を作ったのには、そのことにも起因しています。実際に学校の現場に行くと、体育の授業がはじまろうとするとお腹が痛くなったり、その場にいたくないという子がいます。
今、女子中学生の1日に体を動かすパーセンテージがかなり低くなっていると聞いています。唯一、体育の授業が体を動かすチャンスなのにそれすらサボったりする。すると、運動部に入らない限りほとんどスポーツをしなくなります。
なぜスポーツを嫌がるのかというと、やっぱり楽しく体を動かすところがないからです。「すぽっと」では、ダブルダッチなど小さな成功体験を得られるスポーツを取り入れて、女子中学生にも楽しく体を動かしてもらうことを次の目標にしています。
——楽しいことは大きな力になるのですね! 確かに楽しくなければ体も動かないし、頑張れないし、続けることもできません。
そうです。子どもだけでなく、シニアもただ楽しいという気持ちでスポーツができるようになると思います。実際に、体を少し動かすと脳が活性化されるという医学的根拠もあります。
たとえば、みんなで鬼ごっこをして、走っているだけで意味もなく笑うことがあります。それは脳が活性化されているということです。次はそれを可視化してプログラムにしていきたいと考えています。
——杉山さんは2017年3月に順天堂大学大学院 医学研究科・医学専攻・博士課程を卒業なさったと伺いましたが、脳の勉強をされたのですか?
このたび68歳で順天堂大学大学院を卒業し医学博士になりました。大学院では脳と腸は緊密な関係でつながっているという「脳腸相関」について追究しました。つまり、脳で考えたことが腸に出る。だから腸を整えると運動のパフォーマンスも変わるのではないかという研究です。
現代人は便秘の人が増えています。調べると、すべての年代で毎日食物繊維が6gくらいずつ足りないといわれています。そこで、毎日不足分の食物繊維を補填したヒトの腸内環境を調べたら、クヨクヨ悩んだりイライラしなくなったということや、運動したあとに疲れなくなったという結果になりました。
心身ともに健康な子どもを育てるためには、毎日のバランスのとれた食事が本当に大事だと思います。
愛さんを育てた10の黄金法則とは?
——愛さんと舞さん、2人のお嬢さんを育ててきた杉山さんですが、どういう思いで子育てをされてきましたか?
縁あって杉山家に生まれてきた子どもたちを、私たちは社会からの預かりものだと思って丁寧に育ててきました。私たち親のミッションは、子どもたちを社会に役立つ人に育て、また社会にお返しすることだと考えています。
愛は私の子育てについて「他人と比較せず『個』を尊重してきた」と言ってます。ほかにも気をつけていたのは「何が食べたい?」など、常に「イエス」か「ノー」だけでは答えられない質問をしていたことです。
自分が考えたことを咀嚼してから人にちゃんと伝えることの大切さを理解してほしかったからなのですが、あとに子どもたちから「きちんと回答することが辛いときもあったよ」って言われました(笑)。でも、私の想いは感じ取ってもらえたみたいです。
私はこれまでの子育てやコーチの経験から『子どもの可能性を伸ばす10の黄金法則』というのを提案しています。
<~子どもは社会からの預かりもの~>
1. 互いを「尊重し合う」ことの大切さ
2. 子どもに「求められている」ことの大切さ
3.「気づく」ことの大切さ
4. 目標を持って「続ける」ことの大切さ
5.「正しい答え」は一つではないことの大切さ
6.「絶対評価」であることの大切さ
7. 何でも「楽しく」してしまうことの大切さ
8.「励ます」ことの大切さ
9.「ほめる」ことの大切さ
10.「待つ」こと、そして「学び続ける」ことの大切さ
7番目の「何でも楽しくしてしまうことの大切さ」は今や愛さんの座右の銘「遊戯三昧(ゆげざんまい)」の元になっていて、杉山家の家訓でもあります。
母の役目がひと段落して身をもって感じているのは、スポーツを通して家族でコミュニケーションをとれば、楽しく、豊かな生活を送ることができるということです。
これからも「すぽっと」は日々進化して、さまざまな情報やプログラムを届けていきます。渋谷区を情報発信基地に、スポーツの楽しさを日本各地に拡散していきたいですね。
【施設情報】
渋谷スポーツ共育プラザ&ラボ すぽっと
【住所】東京都渋谷区千駄ヶ谷5-27-11 アグリスクエア新宿1F
【TEL】03-5341-4177
【開館時間】10:00〜18:00
【休館日】月曜日
【公式サイト】http://shibuya-spot.jp
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<Text:パンチ広沢+アート・サプライ/Photo:玉井幹郎>