「MCT(中鎖脂肪酸)オイル」にはどんな効果や働きがあるのか。業界大手の日清オイリオグループを取材した (1/2)
ロカボダイエットやファットアダプテーションを実践している人たちの間で話題のMCT(中鎖脂肪酸)オイル。サッカー日本代表の長友佑都選手をはじめプロのアスリートにも愛用者が多く、注目を集めています。
そこで、食用油のリーディングカンパニーである日清オイリオグループ株式会社に、アスリートがMCTを摂取することにより期待されることや、MCTオイルの働き、使い方、摂取量、摂るタイミングなどについて聞きに行ってきました。
医療現場で使われてきたMCT。体に良いのはなぜ?
MCTオイルについて教えてくれたのは、長年にわたりMCTの研究を続けている日清オイリオグループ中央研究所の渡邉愼二さんと、商品戦略部ウェルネス食品課の長門石亮さん。
「MCTオイルは、ココナッツオイルやパーム核油、牛乳や母乳にも含まれる成分である中鎖脂肪酸100%の食用油です。医療現場では40年以上前から未熟児や手術後の患者さんなどのエネルギー補給としてMCTオイルが使われてきました。産まれたばかりの子どもからお年寄りまで、さまざまなライフステージで機能を発揮する、知る人ぞ知る油です」(長門石さん)
▲商品戦略部ウェルネス食品課・長門石 亮さん
そもそも、人間の身体活動に使われるエネルギー源は主に糖質と脂質。高強度の運動ではエネルギーとして糖質が優先的に使われ、比較的負荷の軽めな運動では脂質が使われます。体の中で蓄えている脂質の量はフルマラソンを20回ぐらいできるぐらいのエネルギーを持っていますが、糖質はマラソン1回分ぐらいなんだそう。
「糖の量は非常に限られているので、小出しに使っていかなくてはいけない。それには、もっと脂肪のエネルギーを利用しやすい体質に変えていく必要があります。油を多めに摂ることを続ければ、脂肪をエネルギー源として使おうと体が順応していきます。とはいえ、過剰に油を摂れば、太ったり、血糖値が上がったりと、デメリットもある。日本人の食事摂取基準では、脂質のエネルギー比率は30%未満です。必要な摂取基準のなかで一定のバランスを取らなくてはなりません。MCTでは通常の油のデメリットを補いながら、少量でファットアダプトすることが期待できます」(渡邉さん)
▲中央研究所主管・渡邉 愼二さん
一般的なサラダ油などに含まれる長鎖脂肪酸(LCT)は、摂取すると全身に運ばれて吸収・貯蔵されますが、中鎖脂肪酸(MCT)は摂取後素早く消化吸収されて、すぐにエネルギーに変わり、脂肪を体内に溜め込まないという特長があります。
▲提供:日清オイリオグループ株式会社
さらに、MCTは脂肪を蓄積しにくいだけでなく、筋肉中のミトコンドリアを増やす働きがあることがわかっています。
ミトコンドリアは、脂肪を燃焼させることによって私たちの体を動かすためのエネルギーを作り出す、いわば「脂肪燃焼工場」。
継続的にMCTを摂取することでミトコンドリアが増えれば、脂肪を効率よくエネルギーとして使うことができるようになるのだそうです。
▲提供:日清オイリオグループ株式会社
また、MCTの摂取によって筋肉量が増えるというデータも確認されています。運動により筋肉を使うと、筋肉の組織は破壊されます。運動後、壊れた筋肉は自力で修復しますが、そのときに前よりも強い筋肉をつくろうとします。
このように筋肉は合成と分解をくりかえしており、実験ではMCTの摂取はその合成の力を高めている可能性が見られるそうです。
▲提供:日清オイリオグループ株式会社
高齢者を対象とした実験では、MCTの摂取によって体内の脂肪の量が減り、筋肉が増えてきて筋力が改善したという結果が確認されつつあるとのこと。MCTの摂取プラス運動を習慣化させればさらに効果が上がることが期待できそうです。
次ページでは、持久力アップと疲労回復のスピードアップについて、また日常生活でMCTオイルを活用する方法を記載しています。