フィットネス
2024年4月30日

アイソメトリック(等尺性筋収縮)とは。効果とトレーニング例

筋トレにはさまざまなやり方があります。なかでも初心者が覚えておきたいのは「アイソメトリック(アイソメトリクス)」、いわゆる等尺性筋収縮によるトレーニングです。

アイソメトリック(等尺性筋収縮)とはなにか、効果とメリット、エクササイズ例を紹介します。

わかりやすく! アイソメトリック(等尺性筋収縮)とは

アイソメトリックは、筋肉の長さが変わらずに力を発揮する筋肉の収縮形態のひとつです。

わかりやすく言うと、たとえば壁を背中にして、椅子に座ったように股関節・膝関節を90度に曲げてキープする「ウォールシット(空気イス)」。

お尻や太ももの筋肉はカラダを支えるために力を発揮していますが、筋肉の長さが変わらないため動きがありません。このような筋肉の収縮形態をアイソメトリックといいます。

ウォールシット(空気イス)

日本語では、「等尺性筋収縮(とうしゃくせいきんしゅうしゅく)」と訳されます。

アイソメトリックが生じる動き

  • 腕相撲で2人の力が均衡してまったく動かないとき
  • ラグビーのスクラムで押し合って動かない状態
  • 大きな段ボールを抱えて持っている状態

筋トレ初心者向け!アイソメトリックトレーニング例

アイソメトリックプッシュアップ

腕立て伏せの姿勢から、カラダを下ろした状態でキープするエクササイズです。胸の大きな筋肉「大胸筋」を強化します。

  1. 腕立て伏せの姿勢になる。手は肩幅よりもこぶし2個ほど広げる
  2. 肘を曲げ、胸が床につく位置まで体を下ろしていく
  3. カラダを一直線に保ち、10秒間キープする

プッシュアップ

パームカール

力こぶの筋肉「上腕二頭筋」を鍛えるエクササイズです。

  1. 右手首に左手を当てる
  2. 左手で下へ押す。互いに押し合うイメージで右肘の角度を保つ
  3. 10秒間キープし、反対も同様に行う

パームカール

ウォールシット

下半身全体を刺激するエクササイズです。お尻の大きな筋肉「大臀筋」と、太ももの筋肉「大腿四頭筋」を強化します。

  1. 壁に背中をつける。足は肩幅に開き、前へ出す
  2. 太ももが床と平行になるところまで膝を曲げていく。膝の関節は90度
  3. 20秒間キープする

ウォールシット

ウォールシットは、足の位置を変えることで負荷をかける部分が変わります。遠めにして膝の角度が90度以上に開く状態でキープすると、よりお尻の筋肉が刺激されるでしょう。

逆に足の位置が前に出すぎて、膝の角度が90度以下になってしまうと、太ももの前やすねの筋肉に多く刺激が入ります。

アイソメトリックトレーニングの効果

初心者でもケガの心配がなく安全にできる

アイソメトリックのメリットのひとつが、ケガをしにくいことです。動作を伴わないので、関節や筋肉に無理な力が加わることはほとんどありません。

初心者にとって、正しい動作が習得できていないエクササイズではケガのリスクが高まります。その点、アイソメトリックトレーニングでは初めてでも安全に行うことが可能です。

リハビリでも活用できる

アイソメトリックトレーニングは、ケガ後のリハビリにも効果的です。とくに、あまり患部に負荷をかけられないリハビリ初期に行われることが多いでしょう。

アイソメトリックがケガや手術で衰えた筋肉や神経をピンポイントで意識しやすい点も、リハビリで活用される理由です。

すぐに取り組むことが可能

アイソメトリックトレーニングには、器具が必要ありません。また、短時間、狭い場所でも行える点は大きなメリットのひとつです。

「これからトレーニングするぞ!」と意気込まなくても、ほんの少しのスキマ時間、たとえばテレビCMの間だけトレーニングすることも可能です。

アイソメトリックトレーニングの注意点

呼吸を止めない

力を全力で入れると、どうしても呼吸が止まりがちです。しかし力を入れたまま呼吸を止めてしまうと、血圧が上がる原因になります。

そのため、必ず呼吸を止めないように行いましょう。

負荷は自分の意識次第

アイソメトリックトレーニングは、自分の意識次第によって強度が変わります。思いきり力を入れ続ければ負荷は高く、手を抜けば負荷は低くなるでしょう。

効果を高めるためには、全力で行う必要があります。

筋肉を意識して全力で行う

アイソメトリックのトレーニングは、しっかり筋肉を意識して全力で行えば、かなりハードなトレーニングになります。

これから筋トレを始めようという人は、まずアイソメトリックのトレーニングを取り入れてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

和田拓巳(わだ・たくみ)

プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。​スポーツ系専門学校での講師や健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師経験も多数。そのほか、テレビや雑誌でも出演・トレーニング監修を行う。日本トレーニング指導者協会JATI-ATI。
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<Text:和田拓巳>