ヘルス&メンタル
2025年6月26日

「整形を繰り返す」「美容医療がやめられない」——なぜ陥る?整形依存の心理とは。“見た目で評価される世界”からの抜け出し方 (3/3)

美容医療・整形は悪なのか? 医師の視点から見たメリットとデメリット

──整形には悪い面だけでなく、コンプレックスが解消されることで前向きになる、行動力が出たなどのポジティブな効果もあるように思えます。美容医療・整形と正しく付き合うぶんには構わないように思えますが、一方では1回顔を直してしまうと他の部分も気になってきて……という話も耳にします。美容医療・整形依存に陥らないためには、どんな考え方を持つとよいでしょうか。また、依存になりかけていると分かるセルフチェックポイントがあれば教えてください。

古賀先生:一部だけを整形しても満足できないというのは、美容医学的な観点からは至当であり、必ずしも「整形依存」というわけではありません。

たとえば鼻の手術では、小鼻の大きさが気になるからと小鼻だけを小さくしてしまうと、逆に鼻先が目立ってしまい団子鼻に見えてしまうことがあります。同時に鼻筋や鼻先の手術を行う必要もあり、事前に医師としっかり相談しておくことで、手術を何度も繰り返す必要がなくなります。

また、美容医療は「魔法」ではなく、仕上がりには個人差もあり限界もあります。自分に必要な施術は何か、現実的なゴールはどこかを認識しておくのが重要です。

「整形依存」のセルフチェックポイントとしては、以下などがあります。

✓  医師から必要ないと言われた施術を強引に受けようとする
✓  自分の要望に迎合してくれる医師を求めて、クリニックを転々としている
✓  整形費用のために金銭的な問題が生じている

──美容医療に頼らなくても自己肯定感を高める方法には、どんなものがあると思いますか?

古賀先生:よく「他人と比較するのはやめましょう」「ありのままの自分を受け入れましょう」と言われますが、それができるならすでに実行しているはずです。こうした言葉は、具体的な行動指針が伴わなければ、現実的な解決策とは言えません。

そこで私がおすすめしたいのは、「心の中で美容医療の占める割合を少しずつ減らし、それ以外の要素の割合を増やしていく」というアプローチです。

たとえば、趣味に打ち込んだり、家族や友人と楽しい時間を過ごしたりする機会を意識的に増やすことで、美容医療への依存度が相対的に薄れていきます。

こうした日常の中で小さな成功体験を積み重ねていくことで、「整形しなくても自分には価値がある」と感じられるようになり、次第に自己肯定感を美容医療に頼らず維持できるようになるでしょう。

──最後に、「整形をしてでも美しくなりたい」と願う人たちへ、医師として伝えたいメッセージがあればお願いします。

古賀先生:「整形してでも美しくなりたい」という表現は、かつては“覚悟”や“特別な選択”を意味していましたが、今や美容医療はもっと身近で、自己表現やセルフケアの一環として選ぶ時代です。つまり、“整形してでも”という考え自体が、少しずつ時代遅れになりつつあるとも言えるでしょう。

大切なのは、「見た目を変えること」ではなく、自分をどう理解し、どう扱いたいか。整形がその手段になるのは悪いことではありませんが、外見だけに頼らず、心の声にも目を向けてほしいと願っています。

美容医療は“変わる”ための道具であると同時に、“今の自分と向き合う”きっかけにもなり得ます。医師として、そのどちらにも寄り添える存在でありたいと思っています。

回答者プロフィール

古賀愛子(こが・あいこ)

美容外科・美容皮膚科医、心療内科専門医、内科専門医。東京大学医学部附属病院にて心身医学を専攻し、心療内科専門医および内科専門医を取得。大手美容外科にて美容医療の研鑽を積み、都内の院長や技術指導医を歴任。現在、新宿区のHana Beauty Clinicにて院長を務める。

<Edit:編集部>

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