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2025年7月24日

夏便秘が肌老化を加速させる?最新研究が明かす「腸と皮膚」の意外な関係[医師監修]

夏になると、水分をたくさん摂っているのに肌の乾燥が気になる、スキンケア製品を見直したのに肌荒れが治らない、という悩みを抱える方が増えます。実は、その原因は夏特有の便秘にあるかもしれません。

最新の研究では、夏便秘が肌老化を加速させる可能性が明らかになっています。「腸皮膚相関」という新しい概念が注目を集める中、腸と肌の密接な関係が科学的に証明されつつあります。特に夏は便秘になりやすく、それが肌の状態に大きく影響を及ぼすことが明らかになってきました。

スキンケアや徹底した日焼け対策だけでは防げない肌老化の真の原因と、効果的な対策法について、国立消化器・内視鏡クリニック院長の吉汲祐加子先生に解説していただきました。

「腸皮膚相関」とは?

「腸皮膚相関」という言葉をご存じでしょうか。この10年間で腸と肌の関係に関する研究論文は約14倍に増加し、特に2019年以降、急速に研究が進んでいます。

夏便秘により腸内環境が乱れると、肌の水分保持機能が低下し、乾燥やくすみ、さらには老化の進行を招く可能性があるのです。

 

海外の最新研究では、196種の腸内細菌と42万人分の顔面皮膚老化データを解析した結果、11種類の腸内細菌に肌老化との因果関係が確認されました。

特に驚くべきは、3種類の善玉菌が肌老化を遅らせる「美肌菌」として働く一方で、8種類の菌は肌老化を早める「老化促進菌」として作用する可能性があるという発見です。

つまり、腸内環境を整えることで、本当に肌の老化を防げる時代が来るかもしれません。

腸内細菌が作る「美容成分」が肌の潤いを決める

腸皮膚相関の核心となるのが「短鎖脂肪酸」という、腸内細菌が作り出す美肌成分です。この成分こそが、腸と肌をつなぐ重要な架け橋の役割を果たしています。

肌の「水分通路」をコントロール

短鎖脂肪酸は、肌の奥にある「アクアポリン3」という水分の通り道の働きをコントロールしていることが判明しました。

この通り道は、いわば肌の中の水道管のような役割を果たしており、肌の水分量を適切に保つために欠かせない存在です。

年齢を重ねるとこの働きは自然に低下しますが、腸内環境を整えることで、肌の水分保持力を維持できることが分かったのです。

短鎖脂肪酸の減少による美容ダメージ

夏便秘により腸内環境が悪くなると、美容成分「短鎖脂肪酸」も激減してしまいます。

善玉菌は短鎖脂肪酸を作る工場のような存在のため、善玉菌が減ると短鎖脂肪酸の生産量も減少してしまいます。また、善玉菌のエサとなる食物繊維の摂取不足も、短鎖脂肪酸の減少に拍車をかけます。

短鎖脂肪酸が減少すると、水分の通り道が正常に機能しなくなり、以下のような悪循環が始まります。

●肌の水分システムが機能停止
外から与えた水分を肌が受け取れなくなり、取り込んだ水分をキープできなくなります。

●肌の防御システムが破綻
短鎖脂肪酸は肌のバリア機能を維持する重要な役割も担っています。この機能が落ちると、紫外線、乾燥、
汚染物質などのダメージを受けやすくなります。また、ダメージを受けた肌の回復も遅くなります。

●美肌成分の生産工場が停止
短鎖脂肪酸は、肌のハリや弾力を保つコラーゲンの生成にも関わっています。この成分が減少すると、肌の
弾力性が失われ、シワやたるみの原因となります。

短鎖脂肪酸を増やすカギは「発酵性食物繊維」

では、どうやって短鎖脂肪酸を増やせばよいのでしょうか。その答えが「発酵性食物繊維」です。

発酵性食物繊維とは、腸内細菌によって発酵されやすい食物繊維のことです。善玉菌がこれを食べることで、短鎖脂肪酸を作り出します。つまり、発酵性食物繊維は短鎖脂肪酸の「材料」となる重要な栄養素なのです。

なぜ筋トレ民は「腸内環境」を整えるべきなのか?専門家が解説

発酵性食物繊維を摂るのにおすすめなのが「小麦ブラン」です。小麦ブランには「アラビノキシラン」という発酵性の高い食物繊維が豊富に含まれています。

スーパーのシリアルコーナーに置かれているケロッグの「オールブラン」は手軽で食べやすいので、摂取する際は「オールブラン」を選ぶと取り入れやすいでしょう。

おすすめの食べ方「洋風冷ややっこ」

絹豆腐に「オールブラン」をトッピングし、オリーブオイルと塩をかけるだけ。

暑さで食欲が失いがちですが、冷ややっこにすることで食べやすくなります。また豆腐なのでたんぱく質も補えます。不足しがちな食物繊維とたんぱく質を同時に補うことがきますよ。

スキンケアで外側からのケアばかりでなく、内側からのケアで根本的な美肌を目指していきましょう。

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監修者プロフィール

吉汲 祐加子先生

国立消化器・内視鏡クリニック院長、日本消化器内視鏡学会指導医。神戸大学医学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。東京大学医学部附属病院、三井記念病院、国保旭中央病院勤務医を経て、2021年より現職。
数少ない女性指導医として「腸脳皮膚相関」に関する情報発信に取り組んでいる。

<Edit:編集部>