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どんなときでも平常心で。僕は自分の才能を信じきれなかった過去がある。名トレーナーに一流の育て方を聞いた(前編) (2/2)

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まずもちろん僕だけの力じゃなくて、ジムのみんなでやったことです。それに、世界チャンピオンになれたのは、もともと素質のある彼らだからできたこと。しごくように「こっちの道に行け! あれをしろ!」なんてことは、ほとんど言いませんした。彼らが見据えていた世界に向かう道の先にちょこっと立っていて、横で「こっちかもな~」という感じでアドバイスをしていただけですよ。彼らみたいな(優秀な)逸材には、それくらのほうが効果的なんです。

世界戦で僕は自分の才能を信じきれなかった

ーー具体的には、どのようなことを指導されてきたのでしょうか?

練習中に、ぼそっとアドバイスをつぶやくというのはありましたね。普段の何気ない会話のスキマや、練習中に「これって使えるな。試合の時に使ったら使えそうなだなぁ」と、ちょっと耳にいれる。極限の状態で反射的に体が動くように、右脳にささやきかけるんです。

例えば三浦(隆司)なら、彼は左ストレートが武器だけど「これなら、たまに左ボディを入れたら、相手はたまらんだろうな~心理的に」とかぼそっというんです。「これを隠し武器として使え!」とは、言わないほうが効果的ですね。

ーーシンプルな指導なんですね。

才能のある選手は、基本的に負けたことがないから強いんですよ。技術もある。だから最終的には、メンタルをどうコントロールしてあげるか、というところが決め手になってくるんです。

教え子の選手たちには、試合が決まったら、まず負けた姿を想像させないように、いいイメージだけを作っていく。「もしダウンしたらどうする?」ということを考えないようにしていました。心理状態であせればあせるほどに疲れてくるんですが、それは体じゃなくて脳が疲れてるんですよ。なので、試合中にあせったら疲れてしまうんです。

ーーなるほど。世界戦を何度も経験してきた葛西さんだからこそのアドバイスなんですね。

なにせ僕は、世界との差を肌で感じてしまいましたからね。僕自身、ボクシングを始めて一番最初に覚えたのはアッパーとフックで、それを覚えてからはめちゃくちゃ強かったんですよ。それがだんだん、プロのスポーツとして基本を教わって相手を倒すというボクシング本来の目的よりも、手数を増やしてポイントを取って勝つというテクニック勝負に走ってしまった。

もちろんそれでも自分なりにスタイルを合わせて、日本チャンピオンまではスッと上がっていけたんです。でも、世界の選手とは体格差もあったり、初めて経験することも多い。テクニックだけではどうにもならないときに、どうやって自分を信じて相手を倒すかがボクシングなんです。僕は、自分の才能を信じきれなかったんですよね。それなので選手には、とにかくどんな試合でも平常心でいられるように、とアドバイスをしているんです。

⇒後編に続く!

[プロフィール]
葛西裕一(かさい・ゆういち)
神奈川県横浜市瀬谷区出身。高校3年生のときに高校総体バンタム級王者となり、1989年8月にプロデビュー。デビュー後は日本スーパーバンタム級王者や東洋太平洋チャンピオンにまで上りつめる。引退後は帝拳ジムのチーフトレーナーとして世界王者4人を育成。2017年9月に東京・用賀にフィットネスボクシングジム「GLOVES Cardio Boxing」を開設。
【「GLOVES Cardio Boxing」公式HP】http://glovestokyo.com/

<Text:田中有(H14)/Photo:久保誠>

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