
【開発秘話】『さけるチーズ』ロングセラーの理由。大ヒットの裏側と進化の秘密とは?
コンビニやスーパーで見かけると、つい手に取ってしまう「さけるチーズ」。実は2025年で誕生から45周年を迎える、雪印メグミルクのロングセラー商品だということをご存知でしたか?
1980年に誕生して以来、高い売上を誇り、2024年には過去最高の売上を記録。「第43回食品ヒット大賞」や「マーケター・オブ・ザ・イヤー2024」も獲得し、進化を続けてきた『さけるチーズ』は、単なるチーズを超えた存在として、今も新たなファンを獲得し続けています。
今回は、そんな『さけるチーズ』の誕生秘話からヒットを支える戦略、そして意外なポテンシャルまでを見ていきます。
『さけるチーズ』は“偶然の一言”から生まれた
その原点は、山梨県小淵沢にあるチーズ研究所。ある研究員がチーズの仕上げ作業中に「仕上げ段階でミョ~ンと伸ばしてひっぱると、キレイにさけて面白い! まるでサキイカみたい」と呟いた一言がきっかけでした。
それを聞いたスタッフが、日本人が親しんでいる“さきいか”のように割いて食べるチーズを発想し、試作を重ねた末に完成。
「さける」という“食べ方”自体が商品の個性となり、他にはないカテゴリを生み出しました。
誰にもマネできない製造技術。その中身は“超企業秘密”
『さけるチーズ』のようなストリングチーズの製法自体は、昔から知られていた伝統的な技術。しかしそれを安定した品質で大量生産できる企業は少ないのです。
実際、全国にストリングチーズを製造・販売されているチーズ工房はたくさんあるものの、すべてが手づくりもしくは少ロットの生産です。
そして、『さけるチーズ』の製造ラインは、社員や社長すら立ち入れないほどのトップシークレット。大量生産に対応する製造ノウハウは、法的にも企業機密としてがっちり守られています。
今も進化中! 売上記録更新の裏にあった3つの戦略
1. ヘルシーで罪悪感のない“おやつ”として存在感強化
定性調査によると、多くの親たちが『さけるチーズ』を“罪悪感なく与えられる健康的なおやつ”と捉えていることがわかりました。
これを受けて、スナック菓子ではなく“おやつの新定番”としての立ち位置を強化。
さらに雪印メグミルクは、働く母親を対象とした調査から「お助けおやつ3か条」を策定し、おやつ=悪ではなく、“ポジティブに活用できる育児サポート”としての側面を発信し、現代のライフスタイルに寄り添ったブランド戦略を展開中です。
2. おやつ向けフレーバーの充実
お酒のおつまみとして想定されていたさけるチーズですが、実際には子どものいる家庭の約7割が「子どものおやつ」として利用されています。
そこで2024年には新たに「コンソメ味」など、おやつシーンで人気のフレーバーを展開。ファミリーで楽しめることを目指したそう。
3. レアパッケージで“楽しい”を演出
たとえば『ボンバーさけチー』など限定パッケージがSNSで話題に。遭遇率わずか6%のレア仕様ながら、見つける楽しさが購買意欲につながる仕掛けとして成功しています。
『さけるチーズ』は「楽しい食べ方」の文化を作った
さけるチーズは、“割いて食べる”というユニークな発想から始まり、技術力・マーケティング・生活者の共感を巧みに組み合わせることで、45年経ってもなお成長を続けています。
見た目はシンプルなチーズでも、そこには日本の食文化と暮らしに寄り添う深い工夫が詰まっている。
これからも『さけるチーズ』は、手軽で健康的、そしてちょっと楽しい“現代のおやつ”として愛され続けるはずです。
<Edit:編集部>