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ヘルス&メンタル
2025年10月29日

愛着に関する障害?子どものこんな行動、もしかしてSOSサインかも【原因と対処法】 (1/4)

「うちの子、どうしてこんなに人を信じられないんだろう」「初めて会った人にもベタベタして心配」。我が子の人との関わり方に違和感を覚えたとき、それは「愛着」に関する問題が起きているかもしれません。

愛着に関する障害の基本的な知識から、具体的な改善策までをお伝えします。監修は、一般社団法人マミリア代表理事で臨床心理士、公認心理師の鎌田怜那さんです。

なおこの記事では、医学的診断としての「愛着障害」(反応性愛着障害・脱抑制型対人交流障害)について解説します。

一般に「愛着障害」という言葉は幅広く使われますが、医療では主に生後9か月〜5歳ごろまでの不適切な養育経験が原因で起こる、対人関係の深刻な困難を指します。

この期間に発症しても、症状が学齢期〜青年期まで続くことがあります。

愛着に関する障害とは? 信頼できる養育者(安全基地)が機能しなかった状態で起こる疾患

愛着とは、赤ちゃんが特定の養育者との間に築く、深い情緒的な絆のことです。

「お腹が空いた」「怖い」と泣いたときに、いつも同じ人が優しく応えてくれる。この繰り返しの中で、子どもは「困ったときには助けてもらえる」「この世界は安全だ」という基本的な信頼感を育んでいきます。

この信頼できる養育者のことを、心理学では「安全基地」と呼びます。

ところが、さまざまな理由でこの安全基地が十分に機能しなかった場合、子どもの対人関係や情緒の発達に影響が出ることがあります。これが「愛着に関する障害」です。

医学的には、愛着に関する障害には主に2つのタイプがあります。

反応性愛着障害(RAD: Reactive Attachment Disorder)

他者に対して過度に警戒し、慰めを求めたり受け入れたりすることが極端に少ないタイプです。傷ついても泣かない、抱っこを拒む、大人に助けを求めないといった様子が特徴的です。

まるで心に厚い殻を作って、誰も入れないようにしているかのように見えることがあります。

脱抑制型対人交流障害(DSED: Disinhibited Social Engagement Disorder)

見知らぬ人に対しても過度になれなれしく接するタイプです。初対面の大人にも警戒心なく近づき、ついて行こうとしたり、過度に身体接触を求めたりします。

一見人懐っこく見えますが、実は「特別な人」という認識が育っていない状態といえます。

これらの診断は、生後9か月から5歳頃までの間に、不適切な養育環境(ネグレクト、虐待、頻繁な養育者の交代など)があったことが前提となります。

つまり、単に「人見知りしない子」や「恥ずかしがり屋」とは明確に異なる、医療的な診断基準がある状態なのです。

ただの性格じゃない!子どもの愛着に関する障害には医学的な診断基準がある 

ここで注意したいのは、大人の「愛着スタイル」と子どもの「愛着に関する障害」は別物だということです。

大人の愛着スタイルとは、幼少期の体験をもとに形成された、対人関係のパターンのこと。「不安型」「回避型」「安定型」といった分類があり、恋愛や友人関係での振る舞いに影響します。

これは病気ではなく、性格傾向の一つと考えられています。多くの人が何らかの「愛着のくせ」を持っており、自覚と努力によって変化させることも可能です。

子どもの頃の愛情不足、大人になった“今”にどう影響する?当事者が語る向き合い方

一方、子どもの反応性愛着障害や脱抑制型対人交流障害は、医学的な診断基準を満たす(精神)疾患です。

日常生活や発達に深刻な影響を及ぼし、専門的な介入が必要になることがあります。ただし、これも「一生変わらない」ものではなく、適切な環境と支援によって改善が期待できます。

次:子どもに見られやすい、愛着に関する障害のサイン

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