インタビュー
2018年12月11日

高校から凝縮した柔道生活が送れたのは、詰め込まないで幼少期をのんびり過ごしたから。柔道家・小川直也(後編)│子どもの頃こんな習い事してました #19 (2/3)

子どもの勝利至上主義には疑問

――柔道を習わせたいとは思わなかった?

思いませんでした。そのころは柔道を辞めてプロレスに行った人間でしたから。子どもたちには自分が柔道をしていたことは話していませんでした。2004年から参加したハッスルは1週間に2回3回巡業があり家を不在にすることが多かったので、妻にまかせていたということもあります。

長男が小学3年生くらいのときに、たまたま母校(明治大学)の道場にトレーニングに一緒に連れて行ったんですよ。それが子どもたちが柔道を知ったきっかけです。クラシックバレエは女の子の生徒が約300人、男の子は10人くらいしかいない。女の子の世界です。長男は、男ばかりの道場が珍しくて魅力を感じたんでしょうね。そのころは僕に似て体が大きくなってきて、バレエでは「痩せろ、痩せろ」と言われていたというのもあると思う。

それで急に柔道に興味を持って、勝手に図書館で同期の古賀稔彦の書いた本を借りてきた。読んだら僕が出てきてびっくりしていました。開けてはいけない箱を開けてしまったという感じです(笑)。

――そして息子さんご本人が柔道を始めたいと。

はい。それから一緒にいろんな道場を回ったんです。でもちょっと違った。子どものうちは柔道が好きになるように、伸び伸びと習わせたいと思っていたけれど、近くの道場はどこも「ああしないといけない、こうしないといけない」。試合も勝利至上主義。そりゃ、トップ選手になれば勝ちにこだわって当たり前だけど、始めたばかりの子どもたちにそれ必要ですか。

これは違うな、と思って、自分の子どもだし僕が教えるか、ということでつくったのがこの道場(小川道場/神奈川県茅ヶ崎市)です。周りにあちこち道場があってライバル意識を持つのもよくないだろうと思って、この辺りはほかに道場がないんで、伸び伸びやらせています。実際に始めたのは長男が小学4年生になるころ、次男は幼稚園に入る前からですね。

――バレエの経験は活きましたか。

バレエの体幹の鍛えられ方はハンパない。長男は僕に体型が似ていると言われるけど、下半身の柔らかさ、体幹の強さは僕以上にあり、柔道を始めてからも軸がぶれることがない。なにせバレエ教室に男の子が少なかったので、発表会では女の子よりも出番が多い。最初から最後まで出ずっぱり。練習もかなりハードでした。

スポーツは何よりケガをしないことが大切。そのためには地道な練習するしかない。今思えば、バレエで地道に鍛えられたことが柔道に活かされていると思います。

▲息子の雄勢選手(右)との写真(提供)

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