インタビュー
2019年9月2日

うまくプレーができない……。そう悩んだときに父親がかけた言葉が分岐点になった。サッカー石川直宏(後編)│子どもの頃こんな習い事してました #24 (1/3)

 スポーツ界の第一線で活躍しているアスリートに、幼少期の習い事について訊く連載。自身の経験を振り返っていただき、当時の習い事がどのようにその後のプレーに活かされたか、今の自分にどう影響しているかを伺います。

 プロをめざして中学からJリーグクラブのジュニアユースに入り、週5日間、遠くの練習場に通っていたという、元サッカー日本代表選手の石川直宏さん。しかし、高校のときにサッカーを初めて辞めたいと思ったそうです。どのようにその迷いを乗り越えたのでしょうか。

前編:小学生で書道と英会話とサッカー、そして遊びに熱中していました。サッカー石川直宏(前編)

成長期に体がうまく動かなくなり悩んだ

――中学のときは体が小さかったと聞きました。

そうですね。でも、自分ではどうにもできないですよね。どこかのタイミングで身長が伸びるのを待つしかない。そこでフラストレーションをためるより、今できることをコツコツ続けるしかないと思っていました。

悩んだのは中学のときよりも、身長が急に伸びだした高校のとき。身体の成長に対して神経的な適応が追いつかない「クラムジー」という現象があるんです。一般的には中学生でそれを経験して、高校生になると体ができあがって精神的にも大人になってプレーが安定するんですが、僕は高校生のときにクラムジーがおとずれて、練習しても全然うまくいかず思うようなプレーができなくなってしまった。それを相談できる人もいなかったので、高校2年のあたりは悩んで荒れていましたね。そういう状態が何ヶ月か続いたとき、初めて「サッカーを辞めたい」と言ったんです、父に。

――そのときのお父さんの反応は?

それまでサッカーでどれだけ活躍しようが、負けて悔しんでいようが、父は何も言わなかったけれど、「サッカーやってるのはお前なんだから、お前が辞めたいなら辞めちまえ」と言いました。そのときは「俺の気持ちもわからないくせに」と反抗したんですけど、時間が経って「その通りだな」と。僕が積み重ねた姿を父は見ているので、実際にはいろいろな思いがあったと思います。

僕の帰りを夜遅くまで父が起きて待っていることもあれば、母が待っているときもある。遅いからリビングで寝てしまっていることもある。そういう姿を見て、やはり自分がやれることをやりきろうと、気持ちの整理ができました。その後もなかなか思うようにはいかなかったですけど、高校2年から身長が伸びて、だんだん思うようなプレーができるようになり、高校3年のときに全国大会で活躍できてプロの道が開けた。

――最初から順調ではなく、辞めるというギリギリのところを乗り越えてプロの世界が見えたということですね。プロになれるかわからないときは不安だったと思います。

サッカーをしていると自分を見つめ直す機会がたびたびあります。そこでどうしたいか、自分が一番理解していた。そこがプロになる上でのキーとなったのかな、と。それはプロになった後も変わらないこと。自分を見つめ直すことを子どものころから経験できたことは強みになっています。

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