ギア&アクセサリー
2018年2月8日

結ばない靴紐!子どものスニーカーやランニングシューズに使いたい「キャタピラン」って? (1/2)

 シューズのフィッティングに欠かせないものと言えば、靴紐が挙げられます。いわゆる紐からワイヤータイプまで、最近は靴紐も多様化してきました。靴紐の結び方が悪いと、運動している最中に解けたり、圧迫されて足が痛くなったりすることも。逆に緩いとシューズ内で足が動いてしまうなど、競技パフォーマンスにも大きな影響を与えます。

 今回取り上げるのは、まったく新しいコンセプトを打ち出した靴紐『キャタピラン』。なんと靴紐でありながら、結ばずにフィッティングすることのできる商品です。製造・販売元である株式会社ツインズの代表・梶原隆司さんに、発案に至った背景やスポーツシーンでのメリットなどを伺いました。

もともとは家電開発・製造からスタートした会社

  結ばない靴紐『キャタピラン』は、スポーツ用品店やシューズ専門店などで販売されています。もしかしたら、商品を目にしたことのある方がいるかもしれません。実は私も子どもの靴を選んでいた際にキャタピランを見つけ、以前より使用していました。しかしツインズは、最初からキャタピランを主力商品として打ち出していたわけではないそうです。

「ツインズは、私が31歳の頃に設立しました。もともとは家電メーカーに務めており、その経験から、当初は家電を中心に取り扱っていたんです。たこ焼き器やオーブントースター、ホットプレートなど。自社開発からOEM、下請けまで含め、いろんな商品を製造・開発してきましたよ。しかし、暖房器具などの季節家電は、どうしても在庫が残ってしまうんです。そうした状況を見て、私たちがビジネスとして取り組むべき土俵の真ん中ではないと感じていました。そのため、家電を扱う傍らで、ずっと商材を探していたんです」

 そんな中、当時通われていたスポーツジムで、海外製の靴紐を見つけた梶原さん。これがキャタピランを開発する原点となっており、まさに“結ばない”靴紐だったのだと言います。

「3000円くらいの靴紐だったのですが、ちょっと高いですよね。でもコンセプトはおもしろいし、実際に使ってみて可能性を感じました。とはいえ、実感として改善すべき課題もある。そこで商品のパテント(=特許)を徹底的に調べ、抵触しない新しいパテントを創り上げたのがキャタピランです」

 何気ない日常の中で手に取った商品が、キャタピラン考案のキッカケ。しかしもっとも注目すべきは、おもしろい、改善できそうという興味を自社の取り組みに繋げた、梶原さんの行動力ではないでしょうか。

「その靴紐も、キャタピランと同様に紐穴で引っかかる突起がいくつも付いていました。でもそれが固くて少し尖っており、ずっと履いていると痛かったんですよね。インターネットのレビューでも、痛いというコメントが多く見つかりました。そこでキャタピランは突起を丸型にしています。また、伸縮性を出すうえで芯にゴムが入っていたのですが、これが切れるとただの平紐になってしまうんですよ。ゴムは劣化しますし、例えばマラソン大会の本番でゴムが切れたら大変じゃないですか。でもキャタピランはゴムを螺旋状に巻き込んでいるため、切れても形状がほぼ維持できます」

 自らを“スポーツギア・オタク”だという梶原さん。このキャタピランは、発案から完成まで3年もの期間を経ています。強い探究心を持ち、長い期間にわたり改善を重ねたからこそ、キャタピランの完成に至ったのでしょう。しかしそれだけの時間を費やせたのは、家電という主事業があったからこそ。過去の経験を含めたさまざまな要素が噛み合ってこそ、キャタピランは誕生したのです。

子ども向けからランナーへのターゲットシフト

  キャタピランは日常からスポーツまで、幅広いシーンに対応しています。あえていうならば、現在はランナーに多く愛用されている商品です。しかし梶原さんによれば、最初からランナーに向けて作り始めたものではないのだと言います。

「最初は子どもに履かせようと思ったんですよ。子どもって新しい靴を買っても、すぐに踵を潰しちゃうじゃないですか。あれって履きにくいからですよね。しかし踵を潰さないように注意すると、今度はすぐ履けるように靴紐を緩く結んでしまいます。キャタピランなら伸縮性があるし、結びの調整も用意なので、解決できると思ったわけです」

 しかしそんな中、知り合いからキャタピランがランナーに良いと言われたとのこと。足へのフィット感などメリットについて聞き、実際に履き比べてみたそうです。

「同じシューズで、左右をキャタピランと普通の靴紐にして履き比べました。すると、明らかに、ふくらはぎの張り方が少なかったんですよ。しっかり押さえつつも、ゴムなので伸縮してくれる。自分に合った締め方ができる点も、ランナー向きだと感じました」

 この気付きから方向転換し、子どもではなくランニング市場から入ったキャタピラン。しかし完成形に至るまでには、いくつもの越えるべきハードルがありました。

「コブの形や材質、間隔を決めるのに時間がかかりました。形状はレモンや枝豆、ラグビーボールなど、いろんなものを試しましたよ。市販されているほとんどのシューズに合わないといけませんから、いろんなシューズに通してデータを取ったんです」

 確かに良く見てみると、靴紐を通す穴の大きさはシューズによって違っています。メーカーによる違いはもちろん、同じメーカーでも種類によってさまざま。どのシューズでも通すことができ、緩くて抜けることもない。簡単なようですが、完成までには想像以上の苦労があったのでしょう。

履きやすくて解けにくいキャタピラン

 ランナー向けに打ち出され、現在はシーンを選ばず愛用者を増やしているキャタピラン。果たしてキャタピランは、ランナーにとってどのようなメリットをもたらしてくれるのでしょうか。

「人それぞれ足型は異なりますが、その足型に応じて最適な締め方ができる点は大きなメリットではないでしょうか。全体的な締め具合はもちろん、部分的に強弱が調整できます。その履き心地は長時間履いても持続しますし、疲れにくさも実感して頂けるでしょう。しかも伸縮するので履きやすく、それなのに解ける心配がない。安心してランニングに集中できますよ」

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