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2018年7月17日

エベレスト登頂はそこまでハードルが高くない。“冒険家弁護士”福永活也が語る登山(前編) (1/3)

 “冒険家弁護士”として活躍中の福永活也さん。学生時代にバックパッカーとして世界各国を放浪し、これまで130ヵ国以上を訪れました。そんな福永さんは弁護士として史上初の“7大陸最高峰の登頂”を目指しており、今年の5月にエベレスト登頂に成功しました(現在7大陸最高峰のうち6つを制覇)。なぜ弁護士の福永さんは山に登るのでしょうか? MELOS取材班はその答えを聞くため福永さんに会いに行きました。

エベレストはたいした山じゃない⁉

――今年の5月にエベレストの登頂に成功しましたね。おめでとうございます! 登頂に成功した今のお気持ちは?

全てが想定内の山だったなと(笑)。エベレストって、たいした山じゃないんですよ。山を知らない人からしたら「すごい」と思われるかもしれませんけど、ある程度本格的な登山をしている人からすれば、エベレストは高いだけでそこまで大変な山ではないと誰しも思っています。標高8,848 mの高さも最初から覚悟していきますし、2か月という期間をかけてゆっくりと高度順応していくので、登山許可を取った人の半数は登頂しているんです。

――エベレストはたいした山ではないと! 何も知らない素人からすると驚きの発言ですが……。

例えば、医師国家試験って、知識のない人が受験したらとんでもなく難しくて合格率は限りなく低い試験ですが、医学部で勉強している学生であれば90%が合格するでしょう。エベレストも同じ。山を知っていてある程度事前準備をして覚悟を持って臨んでいる人にとっては、そこまでハードルが高い山ではないということです。

――日本を出発してから登頂、下山して帰国するまで、何日くらいかかりましたか?

50日くらいですね。

 

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――エベレスト初挑戦で、登頂に成功できたカギは何だったと思いますか?

まずは天気に恵まれたこと。特にアタック(最終キャンプ地から山頂に挑むこと)の日は比較的天気が良く風も弱い方でした。といっても頂上だとマイナス30度近くなりますし、強風で、油断するとすぐに凍傷になってしまう環境ではありますが。また、細かい雪崩はちょくちょくありましたが、危険にさらされるような大きな雪崩やアイスホールの崩落がなかったのも幸いでした。

そして2か月の間、それなりの体調維持ができたこと。山に長期間滞在していると、お腹が痛くなったり、のどが痛くなったり、さまざまな体調の悪化が原因でアタックできない人が多いんです。僕からすれば、そこまで想定して調整するのが“山”だと思うので、そこは頑張れよ、と思うんですけど。たとえば、エベレストがある地帯は乾燥していて埃っぽいので、その空気にのどがやられて断念する人がけっこういます。僕の場合、「この山は多少ののどの痛みが出ることは当然で、それが完全になくなることを期待なんてせずに、多少は体のあちこちが調子悪いことを初めから前提にした上で、挑戦するものなんだ」という覚悟があったので、何の問題に感じませんでした。

さっきからエベレストはたいしたことはなかったと言っていますが、それは覚悟していたことに比べて、たいしたことがなかったという意味です。もちろん、それなりに大変なこともあり、ダメージも負いましたし、今でも疲弊した足首や膝裏が痛くて張っていますし、日焼けでわかりにくいですが頬には凍傷の痕が残っていますが、これらも全て想定の範囲内なので、たいしたことはなかったと思っています。そういう意味でも、メンタル面でモチベーションの維持はすごく大切です。そのために、環境適応能力を高めて、ストレス耐性を維持していくことが重要ですね。

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