安全走行のために覚えておきたい、自転車の“ハンドサイン(手信号)”
街を見渡すと、ロードバイクやクロスバイクで爽快に駆け抜ける人を見かけます。風を切って走るのは大変気持ちがいいものですが、自転車による衝突事故は年々後を絶ちません。そんな危険な事故を防ぐために、覚えておきたいのが『ハンドサイン(手信号)』。角を曲がる際や減速する際、あるいは前を譲るときなど、さまざまなシーンで活用できます。サイクリストなど普段から自転車に乗る方は、必須事項として覚えておきましょう。
自転車事故による死亡者は年間500人以上
日本で年間どれだけの自転車事故が発生しているか、皆さんはご存知でしょうか。警視庁の発表データ(2017年6月、警視庁「都内自転車の交通事故発生状況」より)によると、近年は10万件前後の自転車事故が1年間で発生、年間500人以上の死亡者が出ているそうです。
道路交通法により、自転車は原則車道を走ることを義務付けられています。しかし一部の道路では、やむを得ず歩道を走行する場合も考えられるでしょう。そうなると、自転車は『自動車』『歩行者』『他の自転車』との接触に気を付けなければならず、注意力が欠如すると事故につながってしまうわけです。
信号無視や雨の日の傘さし運転、スピード超過など。事故の原因はさまざまですが、中には運転者の意思表示が足りずに発生するケースも存在します。『ハンドサイン(手信号)』は、ほかの自転車や自動車の運転手に対して意思表示を表す手段なのです。
今すぐ使える!ハンドサイン実用例
いったい、ハンドサインはどのような場面で使うのでしょうか。ハンドサインは、主に右左折時や減速時、障害物の存在を知らせるときなどに使用します。自動車を運転される方なら、ウインカーやハザードランプを想像しするとイメージしやすいのではないでしょうか。自転車からの突然のアクションによる追突を防ぐために必要となります。
では、一体どんなときにどんなサインを送ればいいのでしょうか。神奈川県警のホームページを見ると、以下の3ケースを定められています。
①停止
停止を行う際に、左右どちらかの腕を斜め下に伸ばす。
②左折・左に進路変更
左腕を左方向へ水平に伸ばす。または、右肘を垂直に曲げて上に向ける。
③右折・右に進路変更
右腕を右方向へ水平に伸ばす。または、左肘を垂直に曲げて上に向ける。
※右折、左折は曲がる30m手前、進路変更は3秒前に合図を送る
ただしこの3つ以外にも、自転車乗りの間では独自のハンドサインがあるようです。そちらの方も、一部ご紹介しておきましょう。
・左に寄るように促す:右手を後ろに回し、左方向を指す
・右に寄るように促す:左手を後ろに回し、右方向を指す
・前を譲る:右手を斜め下に下ろし、手招きをする
・路面注意:道路上にある注意物を指さす
・減速するように促す:左右どちらかの手を後ろに回して、グー・パーと開閉させる
・停止:手を開いた状態で後ろに回す(自転車乗りの間ではこちらが主流の様子)
ハンドサインを行う際の注意点
後方の車両に意思表示をする便利なハンドサインですが、ひとつ注意点があります。それは、合図を出す際にどうしても片手運転になってしまうことです。交通量の少ない場所ならともかく、車通りの多い交差点などで慣れないハンドサインを行うと、大変危険な状況を作りかねません。
とはいえ、停止時や右左折時には、手による合図を送ることが法律によって“義務化”されているのも事実です。まずはこうした基礎知識を頭に入れ、状況に応じて臨機応変に使っていきましょう。事故を防ぐのは、一人ひとりの“配慮”の心です。
<Text:松永貴允/Photo: Getty Images>