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「騙されたー!チャンチャン♪」で終わるはずだった!? 小林まこと先生が語る『柔道部物語』で描きたかったこと(前編)【熱血!スポーツ漫画制作秘話 #1】 (2/2)

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最初に参考にしたのはマイク・タイソンです。当時あの体格でヘビー級の相手をガンガン倒して、ものすごく強かったじゃないですか。圧倒的に強いっていうのはものすごい説得力があるんですよね。そして冷酷で血も涙もない雰囲気でも、好感が持たれるんです。実は、西野のキャラクターには古賀稔彦も少し入ってるんですよ。ソウル五輪前くらいの自信に満ち溢れてた頃の古賀さんは相手を投げ飛ばすと、その相手に目を向けることもなくシャキっと背筋を伸ばしてパーっと帰って行ってさ。あの孤高な感じが凄くカッコ良くてね。

--マイク・タイソンと古賀さんじゃあ強いのも当然ですね(笑)。あと三五の彼女である原田ひろみのキャラクターも気になっていて。

ああ、あのキャラクターが生まれたきっかけは高校時代の彼女です。ただ、描いているうちに途中から変わっていきましたけどね。もともとは別れさせる予定だったんですけど、当時うちにいたアシスタントが「この子マイペースな感じでいいわぁ」ってウケてるんですよ。なので別れさせるのはもったいないなと思って、あのまま特に応援もせずにチャラチャラしながら一緒にいたんです(笑)。

小林漫画に潜む「リアルさ」の秘密

--そのひろみも含め、小林先生の漫画の登場人物はどれも表情が豊かですよね。

東映の映画が好きだったんですけど、それは菅原文太様の影響が大きくて。あの人の表情の作り方は抜群で、高校時代に柔道をしながらも、菅原文太と高倉健の顔は研究していましたね。スケッチブックが2人の顔で埋め尽くされてました。

--なるほど! だからさまざまな表情が描けるんですね。

あとはやっぱりもともと人の表情が好きというのはありますよ。たとえば犯人が捕まったときの表情、ウソがバレたときの表情。プロレスを見ていても、レスラーが本気で怒った瞬間の目とか、そういうところに目がいってしまいますね。

--表情とともに『柔道部物語』でいうと、試合シーンのリアルでスピーディーな描写も素晴らしいのですが、描かれるときには特にどんなことを意識していたのでしょうか?

自分に柔道経験があるので、ウソは描けないんですよ。だから一生懸命描いてましたね(笑)。例えば投げたシーンだと、柔道の教則本を参考にして描くと、まったく勢いがないんですよ。それに勢いをつけるには、下に影を入れるんです。そうすると投げられて畳に打ち付けられて、弾んで……というコマに仕上がる。そういう細かいところに気を使っていましたね。あとはスピード感を出すためのコマ割りは自分なりに考えました。1コマ入れるか入れないかで、スピード感は大きく変わってきますからね。

▲スタジオの入り口に飾られていた、高校時代に獲得した黒帯

--スポーツでいちばん大事なスピード感とダイナミズムはそのままに、一瞬の駆け引きや仕掛け、心理などを的確に描写していく『柔道部物語』は、のちのスポーツ漫画の試合描写に大きな影響を与えていると再認識しました。

でもこれは俺のやり方だから、俺の描き方が正解とかじゃなくて、また新しい作家さんが新しい表現でスポーツを描いてくれるとうれしいよね。

--未だに高校などの部室には柔道部物語が置いてあると聞きます。多くの柔道家に影響を与えたこの作品で、小林先生が伝えたかったこととはどんなことだったのでしょうか?

俺はそういうことはあんまり意識しないで、読む人が判断してくれればいいやって思ってやってきました。ただ、描きたいことがあったとすれば、主人公が騙されて柔道部に入って明日から坊主にしてこいと。でもあそこで辞めない。「やったろうじゃないか」と理不尽を受け入れる、そこなんです。世の中って理不尽だらけじゃないですか? 当時もそうですが、今の子も情報が多いから、考えて躊躇したりやらなかったりってことが多いけど、「そこでやれよ、とにかくさ」って(笑)。何かをやらないとたいしておもしろいことも起きないですよ。だから多少の理不尽は受け入れてもいいんじゃないかなって思うんですよね。

⇒後編に続く!
「近所に金メダリストが引っ越して来たら……」。小林まこと先生が語る『JJM 女子柔道部物語』が生まれた奇跡(後編)【熱血!スポーツ漫画制作秘話 #1】

[撮影協力]
講談社 ヤングマガジン編集部・イブニング編集部
©小林まこと/講談社

[作品紹介]
『柔道部物語』(全11巻)
高校に入学したばかりで何も知らない三五十五(さんご・じゅうご)は、先輩たちの甘い言葉に乗せられて柔道部に入部。ところが、入部したとたん先輩たちの態度が豹変。シゴキはあるわ、坊主頭にさせられるわ、もちろん女の子との交流会なんて真っ赤なウソ。でも、一度やると決めた柔道だ。強くなってみせるぞ――!! 読み出したら止まらない!! 珠玉の本格柔道コメディ。

『JJM 女子柔道部物語』(1〜2巻。『イブニング』にて好評連載中)
『柔道部物語』から25年、小林まことが再び“本格柔道漫画”を描く! 原作はアトランタオリンピック女子柔道61kg級で、日本女子柔道界に初めての金メダルをもたらした恵本裕子!! 雪の旭川を舞台に、白帯の女子高生が世界の頂点を目指す!

・講談社コミックプラス
http://kc.kodansha.co.jp/

[プロフィール]
小林まこと(こばやし・まこと)
1958年生まれ。1978年、「週刊少年マガジン」から『格闘三兄弟』でデビュー。その後すぐに『1・2の三四郎』の連載を開始し、第5回講談社漫画賞少年部門を23歳で受賞。その後、「モーニング」に連載した『ホワッツマイケル』が社会現象となり大ヒット、第10回講談社漫画賞一般部門を受賞する。また、「ヤングマガジン」で連載した『柔道部物語』は全国の柔道部員のバイブルになった。その他『I am マッコイ』『1・2の三四郎2』『へば! ハローちゃん』『ちちょんまんち』『格闘探偵団』『青春少年マガジン1978~1983』『瞼の母』など、著作多数。2016年8月、「イブニング」17号より『JJM女子柔道部物語』連載開始

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<Text:関口裕一+アート・サプライ/Photo:有坂政晴(STUH)>

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