ライフスタイル
2024年11月11日

「資金不足でスポーツを続けられない」を覆す!1000万円の活動費をかけてアスリートたちが【魂のプレゼン】 (2/2)

佐々木 琢磨 選手:デフ陸上競技(短距離)

1993 年生まれ、青森県出身。内耳性難聴発症。盛岡聴覚支援学校高等部3年時に、全国ろう学校陸上競技大会の100m、200m、400m リレーで三冠を達成。22 年にブラジルで開かれたデフリンピックの男子100m では金メダルを獲得。支援がなく、現在は仙台大学の職員として勤務しながら活動を行なっている。25 年11 月に行われるデフリンピックにて100m、200m、400m リレーで金メダルを獲得し3 冠王になることと、世界新記録を樹立することを目標としている。

事前コメント
デフ(聾)の存在を知ってもらえる大きな機会の場に参加させていただきありがとうございます。デフ選手にとって手話通訳者やスクリーン字幕などの情報保障があるかないかで、パフォーマンスに大きな影響が出ます。当日は手話が当たり前の世界が存在していることや、「耳が聞こえないとは何か?」「一般大会とデフ大会との違いとは?」など、デフの世界についてお話させていただければと思っています。

プレゼン内容
佐々木選手「来年、東京でデフリンピックが開催されます。100mで世界記録をつくり1位を取る、そのために一生懸命がんばっています。昨年、(健聴者の)青森県の大会で優勝して国体に出場しました。デフで初めての快挙です。私ががんばることによって子どもたちがそれを見て、私が夢(の対象)になる、そういう存在になりたいと思っています。」

吉田 弘道 選手:陸上競技(走り幅跳び)

1999 年生まれ、兵庫県出身。現在日本歴代3 位の記録保持者。2024 年パリオリンピックを目指し、ニュージーランドでの合宿に参加を希望していたが、遠征費が工面できずに断念。さらに怪我も重なりパリオリンピック出場を逃す。27 年の北京の世界陸上で表彰台、28 年のロサンゼルスオリンピックで金メダルを最終目標に、まずは来年の世界陸上での入賞を目指す。年明け1 月から欧州、3 月にオーストラリア、ニュージーランド遠征を控えている。

事前コメント
私はこのピッチコンテストを勝ち抜き、オリンピック・世界陸上でのメダル獲得を必ず実現させたいと思っております。昨年初めて世界の舞台に立ち、世界の壁の高さと分厚さに圧倒されました。しかし、越えられないものではないとも感じました。決勝の舞台で勝負する自分の姿を思い描きながら、当日は夢への執念と情熱を全てぶつけたいと思います。よろしくお願いいたします。

プレゼン内容
吉田選手「春先にすごく大きなケガをしてしまったり、予定していた海外遠征は資金が賄いきれず出場を断念してしまい、結果パリオリンピック日本代表になるチャンスを逃しました。今年は大きな挫折と我慢を経験しましたが、こういうシーズンを2年に1度経験してきているんです。次のシーズンは必ず良い結果を出してきました。来年、どんな記録や結果、未来が待っているかを考えるだけでワクワクします。(世界陸上前回大会の走幅跳優勝者との記録差)10cmを埋めるために200万円を使います。この10cm、皆様の力で埋めていただけないでしょうか?」

橘 龍平 選手:車いすテニス

2007 年生まれ、千葉県出身。生まれた時から二分脊椎の障がいがあったが、わずか12 歳で国内ジュニアランキング1位を獲得。今年開催された国内最大規模の大会「ユニクロ全日本ジュニアテニス選手権2024」では初代チャンピオンに輝いた。車いすテニスは国内大会の獲得ポイントが低く、世界ランクが上がりにくいという実情がある。また、この競技で稼げる選手はほぼおらず、継続が難しい状況。テニスを始めた頃から7年かけて入念に準備を行ってきた世界ジュニアマスターズへの出場を目指している。

事前コメント
先日、全日本ジュニアテニス選手権の車いすテニス部門で優勝しました。国内車いすテニスジュニアランキング1 位を7 年連続達成し、今年はITF 国際車いすテニスジュニアランキングで自己最高10 位まで辿り着きました。この1 年は海外で世界トップランカーと対戦し、手応えを感じています。来年は世界ランキングを向上させ、世界国別対抗戦にチームジャパンで優勝するという目標を達成したいです。応援よろしくお願いします。

プレゼン内容
橘選手「身体がおおきくなると靴を変えたりするのと同様に、車いすテニスも自分の成長に合わせて変えていかないといけません。自分個人のレベルだけでなく、日本の選手として日本のチームとして、日本は車いすテニスの強豪国だと世界に示すためにもがんばっていきたいと思います。」

東 莉央 選手:フェンシング(フルーレ)

1998年生まれ、和歌山県出身。2024年パリ五輪で銅メダルを獲得した東晟良を妹に持ち、現在は姉妹で共同カイテック(株)に所属している。2019年フランスW杯団体では妹とともに銅メダルを獲得。21年東京五輪に初出場し、女子フルーレ団体6位、個人24位。24年11月より海外での大会が始まり、年に約8回程度渡航が必要となるが、遠征費は全て実費負担している。28年のロサンゼルスオリンピックでのメダル獲得を目標として活動中。

事前コメント
登壇することが決まり、嬉しく思います。たくさんの人の前でお話しするのは緊張しますが、1人でも多くの方に応援したいと思っていただけるように精一杯自分の思いを伝えたいと思います。 スポンサーがなかなか見つからない中、このような機会をいただけて、より頑張ろうと思えました。 現在、怪我があるのでどの試合に出場するかはまだ未定ですが、4年後のロサンゼルスオリンピックを目指すにあたり、治療費を含めて遠征費が必要になるので、多くの方に自分のことを知っていただきたいと思っています。

プレゼン内容
東選手「4日後の診察で実戦復帰できるか決まります。約5ヶ月間、実戦練習から離れていました。痛みがなくなるかわからない不安はありますが、フェンシングができると思うと今からワクワクや楽しみやがいっぱい。治療を継続して、手首への不安を無くし、全力で戦えるようにしたいと思っています。国内戦優勝、ワールドカップでのメダル獲得、アジア選手権、世界選手権出場、そして最終的な目標はロサンゼルスオリンピックに出場し、メダルを獲得することです。」

 

ファン投票「応援のチカラ賞」は?

まずは、ファンからの投票で決まる「応援のチカラ賞」の受賞者を発表します。受賞者には、クラウドファンディングを通じて集まったGENKIDAMA(活動応援費)が送られます。

受賞者は「藤田 炎村」選手

受賞コメント
藤田選手「今回クラウドファンディングという形で皆様からたくさんサポートいただいて、応援されるというのは、皆様の一部をお預かりすることだと。僕が真剣にがんばることで、お預かりした元気や力、サポートを大きなものにしてお返しすることが僕の使命だと思っているので、いただいた金額を有意義に使わせていただき、しっかり結果でお返ししたいと思っています。」

副賞、大賞はどのアスリート? 受賞者の発表へ

続いて副賞受賞者の発表です。

副賞者は「藤田 炎村」選手

「応援のチカラ賞」に続いてのダブル受賞です。

いよいよ大賞受賞者の発表です。

大賞者は「吉田 弘道」選手

受賞コメント
吉田選手「去年、怪我でまったく試合に出ていなくて、負けた経験ばっかりだったので久しぶりに気持ちがいいなと思いました。今の自分にはオリンピックで金メダルを取る力はありません。ですが素質はあります。来年2025年、世界陸上が国立競技場であります。皆様にはお酒を持って、僕を"最高のアテ"にして、ビールを(のどに)流し込んでいただきたいなと思っています。」

審査員は4名のレジェンドアスリート。

審査を終えたレジェンドアスリートとして、潮田玲子さん、古田敦也さん、伊達公子さん、野村忠宏さんが登壇。ピッチコンテストを終えた、それぞれのコメントもお届けします。

潮田 玲子さん

「去年よりもさらにみなさんレベルアップしていると感じました。今日受賞された方もそうでない方も、きっとこの会場にいらっしゃるみなさんの誰かが応援してくれると思いますし、ご縁をいただけたと思うので、これからも夢に向かってがんばっていただけたらなと思います。」

古田 敦也さん

「スポーツを続けるということはお金がかかること。今日は企業の方がたくさんいらっしゃいますし、応援してくださる方もいると思います。こういう(自らの夢や挑戦への想い)ことを(今後も)発信して、それぞれの種目で活躍していただきたいなと期待しているところでございます。」

伊達 公子さん

「こういう機会(ピッチコンテスト)というのは、緊張するのは間違いないと感じるなかで、すばらしいプレゼンテーションだったと思います。受賞された方、受賞できなかった方もいますが、応募したことがすごく大きな意味を持っていたのと強く感じます。ご縁で集まったみなさんとは"AthTAGファミリー"としてずっと続いていく関係になると思いますし、スポーツの力を信じている人たちがこの場にいると思いますので、これからも自分の目指す道を進んでいってほしいです。」

野村 忠宏さん

「我々の時代は"勝負の世界"だけでしたが、時代が変わって選手のみなさんそれぞれがスポーツの価値や魅力を自分で発信していける、そして自分の価値を高めていく。これが大事な要素になってきているので、今日はひとつのいい経験になったかなと思っています。」

イベントを通じて見えたアスリートたちの未来への挑戦

競技を続けるために「資金不足」という壁に立ち向かうアスリートたちの「夢」と「覚悟」が伝えられる場となりました。育成環境の改善と支援が求められるなか、今コンテストで未来はどのように切り開かれていくのか、熱い視線が注がれています。

<Text & Photo:編集部>

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