「疲れすぎると眠れない」は本当か?睡眠研究で判明した“意外な事実”とは
「疲れると眠れる」とよく言われる一方、「疲れすぎて眠れない」という声もあります。実際のところ、この関係はまだ科学的に明確になっていない大きな研究テーマです。
アリナミン製薬は、筑波大学の睡眠研究機関(IIIS)や睡眠計測サービスを提供するS’UIMIN社と連携し、2024年9月から3年間にわたる共同研究を開始しました。
テーマは「疲れと睡眠の関係」および「抗疲労成分の効果」。研究の第一段階では、運動の種類や強度が疲労と睡眠にどう影響するかを検証しました。
運動のやり方次第で変わる“疲れ方”と“眠り方”
●高強度の筋トレ(レジスタンス運動)*
→ 疲労感は強いが、睡眠の質は良好に
●高強度の有酸素運動(エアロバイクなど)**
→ 疲労感は強く、睡眠の質は低下する傾向
●中強度の運動
→ 疲労度も睡眠の質もほとんど変化なし
なお、「疲れすぎて眠れない」という事象について、運動による疲労に関して言えば、有酸素運動では確認されたものの、筋トレでは見られませんでした。
これにより、運動の“種類”や“強度”によって疲労と睡眠の関係は大きく変わることが、初めて明らかになったのです。
* 1 RM(1 回だけ挙げられる最大重量)の80%相当の負荷で、上半身2 種、下半身2 種、計4 種のマシンウエイトトレーニングを60 分間、実施** 最大心拍数の80%相当の負荷で、自転車エルゴメーターでの走行トレーニングを60 分間、実施
今後の展開は……
次のステップでは、抗疲労成分「フルスルチアミン」が睡眠の質に与える効果を検証。とくに「高強度の有酸素運動後」に服用した際の、疲労軽減や睡眠改善効果を臨床試験で調べる予定だそうです。研究は2025年10月から本格スタートし、2026年度に結果が公表される見込み。楽しみですね!
プロフィール
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)機構長、株式会社S’UIMIN 取締役 CSO 会長
柳沢 正史
1960 年東京生まれ。筑波大学大学院修了、医学博士。米国科学アカデミー正会員。大学院在学中であった 1988 年に血管制御因子エンドセリンを、 1998 年に睡眠・覚醒を制御するオレキシンを発見。31 歳で渡米し、24 年間にわたりテキサス大学とハワードヒューズ医学研究所で研究室を主宰。2012 年、文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)を設立。2017 年、株式会社S'UIMIN を起業し、2022 年より代表取締役。紫綬褒章(2016 年)、朝日賞、慶應医学賞(2018 年)、文化功労者(2019
年)、ブレークスルー賞(2023 年)、クラリベイト引用栄誉賞(2023 年)など多数受賞。
筑波大学 体育系教授、国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)主任研究者
大藏 倫博
兵庫県尼崎市生まれ。筑波大学大学院修了、博士(体育科学)。2003 年に米国ルイジアナ州立大学ペニントンバイオメディカルリサーチセンターの研究員を経て、2004 年筑波大学講師、2010 年同准教授、2020 年より体育系教授。2021 年より国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS) 主任研究者。専門は健康増進学、運動疫学、体力測定・評価、肥満・高齢者の健康支援、転倒予防など。スポーツ庁健康スポーツ課技術審査委員会委員、日本体育測定評価学会常任理事、日本健康支援学会理事、日本体力医学会評議員などを務める。
<Edit:編集部>









