インタビュー
2018年12月12日

もう一度、陸上で。寺田明日香が7人制ラグビーから陸上競技に転向し、東京2020を目指す理由[特別インタビュー] (3/3)

ラグビーからもらった力を陸上の輝きに変える

― 陸上競技に戻るロードマップはできていますか。

すでに、水面下で「明日香復帰プロジェクト」を始動させました。といってもスポンサー、コーチなどは、自分たちで交渉している状態です。12月に入ってようやく形が見え始めました。

ランニングコーチのほかにもストレングス&コンディショニングトレーナー、アナリスト、理学療法士、栄養士、メンタルコーチ、マネージャーらに入ってもらい、1つのチームを作り上げて挑もうと考えています。チームの素晴らしさは、ラグビーをやって感じたことでもあります。私自身もそうですが、コーチもトレーナーも気軽に何でも話せて、みんな一緒に成長することが理想です。

― チームで挑むということですね。目標は?

そのとき1人ではないことは心強いし、良いプレッシャーにもなると思います。陸上も7人制ラグビーと同じくトライアウトからのスタートとなります。2019年に本格始動する日本陸上競技連盟開催の「女子リレー新プロジェクト」に参加する予定です。

ですので、女子100mハードル、4×100mリレーでの東京オリンピックへの出場です。その前には、日本選手権、世界陸上など越えなければいけない壁が多くあります。100mハードルでは自己ベストは13秒05ですが、まずは公式タイムで日本選手権参加標準記録Aの「13秒8」を切ること。そして、その先には、日本人初の12秒台、そしてオリンピックの決勝に残れる「12秒6」が目標です。

― 来年からすぐに、2020年出場へ向けて選手選考が始まりますね。

たしかに、時間は多くありませんが、陸上競技引退後5年間丸々ブランクがあるわけではありません。ですが、5年前の引退直前のコンディションから比べれば、今は格段に体調も良くなり、多くの出会いにも恵まれ、環境が全く違います。出産や競技転向を経て培ってきたこと、ラグビーをしなくてはできなかった経験を生かしながらやっていけば、必ず結果はついてくると思っていますし、自信もあります。

― これまでMELOSのエッセイで語ってもらったママアスリートとしての生活も一変しますか。

娘には、「ママ、ラグビー辞めてかけっこの選手になっていい?」って聞いたんです。娘も7人制ラグビーを観戦してラグビーが好きになっていた時期だったので、ちょっと複雑な表情をして、「そしたら入院しない?」って言われました。うまい選手であればケガも避けられるスポーツではあるのですが、私自身の問題で娘も何かを感じていたんだな~と改めて考えさせられました。

そのとき私は、娘もそうだし子どもたちに1つのスポーツで頂点に行けなかったとしても、他の競技ならば行けるかもしれない。可能性の話になってしまいますが、その可能性は無限大だと伝えていきたいなと。「こうしなさい、ああしなさい」だけじゃない選択肢もあるんだよと言いたいですね。

― 娘さんも心配だったんですね。さみしかったのかな(笑)。

少しはありそうですね! でも今度は個人競技になることで自分で練習の長さや時間帯にも融通が利かせられるので、一緒にいる時間は増えるかもしれません。家のこともできる時間が増えると思いますよ。マネージャーの夫も、これまで以上にコミットしてもらえると思います(笑)。

― 最後にファンやMELOSの読者に伝えたいメッセージはありますか。

今の私があるのは、7人制ラグビーのおかげです。フィジカルもチームも得たものが大きすぎて感謝してもしきれないほどです。温かく迎え入れてくれて、丁寧に技術を教えてもらい、チームだけでなくファンの人たちとの絆も学びました。

まだ始まったばかりですが、今回も陸上の方々も温かく迎え入れてくれました。競技転向という稀なことをやっている私、ともすればわがままとも捉えられない状況で周りの人たちが迎え入れてくれることは、とても力になります。

みなさま、いろいろなことがありますが、これからもぜひ、寺田明日香を応援してください! 

[プロフィール]
寺田明日香(てらだ・あすか)
1990年1月14日生まれ。北海道札幌市出身。血液型はO型。ディズニーとカリカリ梅が好き。小学校4年生から陸上競技を始め、小学校5・6年時ともに全国小学生陸上100mで2位。高校1年から本格的にハードルを始め、2005~2007年にはインターハイ女子100mハードルで史上初の3連覇。3年時には100m、4×100mリレーと合わせて同じく史上初となる3冠を達成。2008年、社会人1年目で初出場の日本選手権女子100mハードルで優勝。以降3連覇を果たす。2009年世界陸上ベルリン大会出場、アジア選手権では銀メダルを獲得。同年記録した13秒05は同年の世界ジュニアランク1位だった。2010年にはアジア大会で5位に入賞するが、相次ぐケガ・病気で2013年に現役を引退。翌年から早稲田大学人間科学部に入学。その後、結婚・出産を経て女性アスリートの先駆者となるべく、「ママアスリート」として、2016年夏に「7人制ラグビー」に競技転向する形で現役復帰した。同年12月の日本ラグビー協会によるトライアウトに合格。2017年1月からは日本代表練習生として活動した。2018年12月にラグビー選手としての引退と陸上競技への復帰を表明。再び陸上競技選手として、2020年東京オリンピックを目指す。

◎所属企業:株式会社パソナグループ
◎主な記録:100mハードルU20日本記録保持者(13秒05=2009年世界ジュニアランキング1位)/100mハードル日本高校歴代2位(13秒39)/100m:11秒71

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<Text&Edit:アート・サプライ/Photo:Arisa Kasai、アート・サプライ(インタビューのみ)>

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