『いだてん』に登場する、ひときわ熱い男たち。日本初のスポーツ同好会“天狗倶楽部”とは (5/5)
スポーツ振興に貢献した『いだてん』には登場しないメンバーたち
▲野球殿堂の押川、橋戸、河野が在籍していた当時の早稲田大学野球部(『野球歴史写真帖』国立国会図書館蔵)
『いだてん』の登場人物として名前は上がっていませんが、押川春浪の5歳年下の弟、押川清は日本初のプロ野球チーム「日本運動協会」を創設した人物で、野球殿堂入りをしています。ほかにも都市対抗野球のMVPである「橋戸賞」の名前の由来になっている橋戸信、日本で初めてアメリカ遠征をした時の早稲田大学野球部のエース・河野安通志、早稲田大学野球部黄金時代の監督として学生野球の発展に尽力した飛田忠順が野球殿堂入りを果たしています。
早稲田大学で押川清と同期の前田光世(コンデ・コマ)は嘉納治五郎のもとで柔道家となり、後にブラジルに渡り道場を持って多くの柔道家を育成、ブラジル人に世界最強の格闘技と呼ばれる実践柔道を伝授しました。それが現在のグレイシー柔術といわれています。
宮藤官九郎さんが脚本を執筆、演出も井上剛さん、大根仁さんなど、スタッフがクセのある実力者ぞろいの『いだてん』。人物描写や当時の様子にもかなりの脚色が加えられるはずですが、当時の天狗倶楽部について調べてみると、本当にこんなことが起こったの!? と疑ってしまうような出来事がたくさん出てきました。史実どおりにやってしまうと逆にウソくさく見える可能性も(笑)。天狗倶楽部の場面に関しては、「とはいえ、ドラマだし……」という先入観なしで楽しむことをおすすめします!
≪参考文献≫
『快絶壮遊[天狗倶楽部]明治バンカラ交遊録』教育出版
『嗚呼!!明治の日本野球』平凡社
『にっぽん野球の系譜学』青弓社
[番組情報]
『いだてん ~東京オリムピック噺ばなし~』
《放送予定》
〈全47回〉毎週日曜[総合]20時/[BSプレミアム]18時/[BS4K]9時
《作(脚本)》
宮藤官九郎
《音楽》
大友良英
《噺》
ビートたけし(古今亭志ん生)
《題字》
横尾忠則
《出演(キャスト)》
中村勘九郎(金栗四三)、阿部サダヲ(田畑政治)、綾瀬はるか(春野スヤ※金栗四三の妻)、生田斗真(三島弥彦※金栗四三の盟友)、杉咲花(シマ※三島家に仕える女中)、永山絢斗(野口源三郎)、勝地涼(美川秀信)、竹野内豊(大森兵蔵)、中村獅童(金栗実次)、シャーロット・ケイト・フォックス(大森安仁子)、古舘寛治(可児徳)、ピエール瀧(黒坂辛作)、杉本哲太(永井道明)、大竹しのぶ(池部幾江)、役所広司(嘉納治五郎)、森山未來(美濃部孝蔵※若き日の志ん生)、神木隆之介(五りん)、橋本愛(小梅)、峯田和伸(清さん)、川栄李奈(知恵)、松尾スズキ(橘家圓喬)、田口トモロヲ(金栗信彦)、宮崎美子(金栗シエ)、佐戸井けん太(春野先生)、髙橋洋(池部重行)、小澤征悦(三島弥太郎)、白石加代子(三島和歌子)、池波志乃(美濃部りん/おりん)、荒川良々(今松)、満島真之介(吉岡信敬)、近藤公園(中沢臨川)、武井壮(押川春浪)、山本美月(本庄)、平泉成(大隈重信)、井上肇(内田公使)、星野源(平沢和重)、松坂桃李(岩田幸彰)、松重豊(東龍太郎)、小泉今日子(美津子)、岩松了(岸清一)、永島敏行(武田千代三郎)、柄本時生(万朝)、大方斐紗子(金栗スマ)、ベンガル(田島錦治)、根岸季衣(田畑うら)ほか ※出演者は発表順に記載
《制作統括》
訓覇圭、清水拓哉
《演出》
井上剛、西村武五郎、一木正恵、大根仁
《公式サイト》
https://www.nhk.or.jp/idaten
[あらすじ]
●第1回「夜明け前」1/6(日)
1959年、五輪招致目前の東京。大渋滞の日本橋を通りかかった落語家の古今亭志ん生(ビートたけし)は寄席に向かっていた。その日、高座で志ん生が語り出したのは、50年前の日本のオリンピック初参加にまつわる噺。1909年、柔道の創始者、嘉納治五郎(役所広司)はストックホルム大会を目指して悪戦苦闘していた。スポーツという言葉すら知られていない時代。初めての派遣選手をどう選ぶか。日本オリンピック史の1ページ目を飾る物語。
●第2回「坊っちゃん」1/13(日)
この日、テレビ寄席で志ん生が語るのは、日本初のオリンピック選手となった金栗四三(中村勘九郎)の知られざる熊本での少年時代。学校まで往復12キロを走る「いだてん通学」で虚弱体質を克服した四三。軍人に憧れ海軍兵学校を受けるも不合格に。身体を鍛えても無駄と落ち込む四三だが、幼なじみのスヤ(綾瀬はるか)に励まされ、嘉納治五郎が校長を務める東京高等師範学校への進学を決意する。運命の出会いが近づいていた。
●第3回「冒険世界」1/20(日)
家族の期待を一身に背負って上京した四三だったが、東京高等師範学校での寮生活になじめない。夏休みの帰省では、スヤの見合いがあると聞かされる。傷心で東京に戻った四三は偶然、三島弥彦(生田斗真)ら天狗倶楽部による奇妙な運動会を目にする。マラソンとの運命の出会いだった。一方、浅草の不良少年、美濃部孝蔵(森山未來)も落語にのめり込もうとしていた。のちの大名人、古今亭志ん生の第一歩が踏み出される―。
●第4回「小便小僧」1/27(日)
高師のマラソン大会で3位となった四三。表彰式で憧れの嘉納治五郎に声をかけられてさらに発奮し、無茶な練習を敢行する。その頃の嘉納は、日本初のオリンピック予選開催を前に山積する難題に頭を抱えていた。頼みの綱の三島弥彦も当てにならない。志ん生は嘉納の苦労を弟子の五りん(神木隆之介)に語るうちに酒を飲んでしまう。ほろ酔いで高座に上がった志ん生が語る噺とは―。
<Text:丸山美紀(アート・サプライ)/Illustration:NEEE/Photo:Getty Images>