インタビュー
2019年8月17日

大東駿介が語る、ゼロからイチを築いた五輪アスリートを演じる決意。「敗北の先に進むことって、すごいロマンだなと思うんです」│『いだてん』インタビュー (4/5)

『いだてん』にはスポーツに対する敬意を感じます

―― 平泳ぎで2連覇を達成した日本人は、いまだ鶴田さんと北島康介さんの2人だけです。過去のオリンピックの映像などは参考にしましたか。

見ました。平泳ぎも、現代とは泳ぎの形が違うんですよね。僕はそもそも平泳ぎができないところから始めたんですが、いまとはルールもまるで違います。大きな違いは、頭を沈めちゃいけなかったんですよね。あと蹴り方も違いますし、カエル泳ぎみたいな感じで。ルールもそうですが、いろんな選手が速さを求めて進化していきます。

そう言えば、バタフライも平泳ぎがルーツなんですよね。手と足が同じ動きをしなければいけない、という平泳ぎのルールに基づいて「じゃあ、これも平泳ぎやん」と発明されたのが、いまで言うバタフライだった。「おい、ちょっと待って待って」「それ、違いすぎひん?」みたいな(笑)。あ、いまのは僕の想像ですけどね(笑)。

オリンピックってそういう、人間の進化に近いところもあって。北島(康介)さんも本当に、平泳ぎの革命をいっぱい起こした人らしいですね。これだけ追求しても、まだまだ進化を続けている。それがアスリートたちが人生を賭けて向き合う、スポーツの祭典のおもしろいところなのかなと。『いだてん』のオープニングにも、昔のオリンピックの映像が出てくるので、何回も見てしまいます。それぞれに、いまとは違うタイプの熱量があって、ぐっと来ますね。本編でも昔の映像とかよく出てくるじゃないですか。

それにしても、いや人見絹枝さんの回は、ちょっとあれはもうー(笑)。(インタビュー当日の)今朝、実はまた見ちゃった(笑)。あれ神回ですよね。いや大根仁監督、とんでもないモンを撮ったなという。今回の『いだてん』って、やっぱおもしろいなと思いますね。ドラマ性も残しながら、スポーツのおもしろさも映像として魅せている。スポーツに対する敬意を感じますし、ドラマだけでは終わらせない。

豪快で粋な人、鹿児島弁が後押し

―― 印象に残っている鶴田さんのエピソードはありますか。

めちゃくちゃたくさんありますね。最初の大会で日本選手団は、食べるものに苦労したんですって。みんなお腹を壊したりしちゃう。でも鶴田さんだけは、何を食べても全然大丈夫で、どんどん身体が大きくなっていったという(笑)。それはちょっと自分に似ているなと思って。僕もわりとそういうタイプなので。そういうエピソードから、どんな人間だったか想像がふくらむじゃないですか。

プール使ったらあかん時間に泳いでて、警備の人に怒られたんやけど、これで黙っといてくれってタバコをワンカートンか渡したというのも。その感じって豪快で粋っていうか。

鶴田さんは鹿児島の人でした。でも宮藤(官九郎)さんや監督の意向で、鹿児島弁は少ない設定だったんです。ほぼ標準語の台本やったんですが、さっき言ったエピソードとかを聞いてから、僕の気持ちが変わった。方言の先生にお願いして、方言を増し増しで教えてもらって、撮影テストでは黙って、リハでいきなり鹿児島弁マックスで臨みました。そうしたら「それでいこう」って言ってもらえた。

鶴田さんの豪快さを鹿児島弁が後押ししてくれる気がしてて。結果、方言増し増しの鶴田さんを演じさせていただきました。「この人は方言を喋っていたから」じゃない。言葉って人が宿ると思うから、そこもちゃんとやりたかった。現場で、さすがにこれは伝わりづらいかなとかもありましたが、本当に絶妙なバランスで方言を選んでつくっていきました。先生に感謝です。

アドリブもありました。撮影テストをやってみた感触から、本番ギリギリになって先生に「こういうことを言いたいんですけど、最適な方言をください」ってお願いして用意してもらって。アドリブ用の方言もたくさん考えてもらって、その先生と一緒につくっていった感じがあります。はじめは視聴者の反応が怖かったんですが、Twitterを見たら「わりと方言うまいやん」って書き込みがあって、「よっしゃ!」と思いましたね(笑)。

とても希望的で愛のある現場だった

 また、最後にはクライマックスのシーンについても言及してくれました。ただし、ここからは第31回以降のネタバレを含んでいるので、ご注意ください!

※※【要注意】以下、第31回のネタバレエピソードを含みます※※

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