2019年10月18日

夫がドーハで見届けた、寺田明日香が10年ぶりに挑んだ世界陸上とは【現地レポート】 (2/2)

 一方で、その目標とは別に、さまざまなハードルを乗り越え、こうしてトラックに立っている妻を見ているだけで今までのことが思い出され、思わず涙がこみ上げてきました。

 そんな感傷に浸っているなか、前日に行われた女子400mハードルの表彰式が突如始まり、少し拍子抜け。国歌演奏&国旗掲揚時には選手たちも動きを止めなくてはいけないので、集中力を維持し、スタートの一瞬に力を発揮するのはなかなか難しかったのではないかと思います。

 表彰式後に選手の紹介が行なわれ、まだスタンドがざわつくなかで号砲が鳴りました。序盤は3番手あたりにつけていた妻ですが、後半失速し、4位と0秒06差の13秒20、5位でフィニッシュしました。4位までが自動的に準決勝に進み、全5組で5位以下の上位4番目までがタイムで拾われますが、妻はタイムでは5位以下では9番目でしたので、予選敗退となってしまいました(レース後の妻自身の感想は日本陸連のサイトをご覧ください)。

 準決勝まであと一歩という悔しい結果でしたが、妻にとってはほかの競技者の背中を見ながら走った今回のレースは、次なるステップの機会になったと思います。

私たち家族も一緒にハードルを越えていきたい

 娘には、「4番以内だったら褒めてあげてね!」と言っていましたが、自分の年齢と同じ「5」位だったこと、そして外国人の選手たちに先着したことがうれしかったようで、妻に会った第一声は「5位おめでとう」でした。この自然な言葉に、私はもちろん、妻も救われたのではないでしょうか。

 2年に一度しかない世界陸上。来年の東京オリンピックは自国開催ですので、海外でこうした大きな大会に出る妻の姿を娘に見せられるのは最初で最後になるかもしれません。ですので、今回こうして家族で観に来られたことは本当に良かったと思います。

 唯一後悔しているのは、レース後「頑張ったよ」としか、妻に言えなかったことです。競技場のコンコース、しかもカメラが回っている前でちゃんと気持ちを伝えることは、一般人の私にはなかなかできないことです(苦笑)。実際に妻からは「なにその上から目線!」とチクリ。妻の陸上競技に関しては尊敬の念しかないので素直な気持ちを伝えるのは本当に難しいなぁ、と思います。

 妻の連載や私のSNSを通して、たくさんの方々に妻のことを応援いただいています。マネージャーも兼ねている私は妻のことに関するツイートに一喜一憂している日々なのですが、日に日に妻のことを知らなかった方の反応も増え、とてもありがたく思っています。

 “Let’s hurdle for it”(ハードルを、越えていこう)、そんなスローガンで私たち家族も、支えてくださるみなさんと一緒に2020年まで突っ走っていきたいと思います。これからも応援、よろしくお願いします!

<Text & Photo:佐藤峻一/Edit:アート・サプライ>

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